【ウィキリークス】米軍グアム移転費を水増し、日本の負担軽減装う/朝日新聞(1) 

2011-05-04 09:05:35 | 社会
日米両政府が在沖縄米海兵隊のグアム移転について合意した2006年春のロードマップ(行程表)で、米政府が、関連費用の総額を水増しして日本側の負担割合を見かけ上減らし、日本政府も08年に追認していた。海兵隊の移転人数については、削減をアピールしやすいよう実態より多い数字を挙げていた。

 約25万点の米外交公電を入手した内部告発サイト「ウィキリークス」から、朝日新聞が日本関係の公電約7千点の提供を受け、分析する過程で判明した。

 海兵隊のグアム移転は、在日米軍再編の中で、沖縄・普天間飛行場の移設と一体となった形で進められる計画。普天間移設は地元の根強い反対で決着しておらず、再編計画全体の数字の粉飾が米公電に明記されていたことで、反発が強まることは必至だ。

 問題の公電は08年12月、在日米大使館から国務省あて。日米両政府は当時、06年5月に両国がまとめたロードマップに基づき、具体的な資金負担の進め方などを決める「グアム移転協定」の交渉をしていた。公電は暫定合意の妥結を報告、経緯を詳述している。

 公電によると、ロードマップ作成時に日米の負担額を決める際、米側が「実際は必要ではない」軍用道路の建設費10億ドルを再編費用に盛りこんだ。08年の交渉では米側が、軍用道路を盛りこんだのは総額を増やすことで日本側の負担比率を相対的に低く見せることが目的だったと説明し、日本政府もその点を了承した。

 92億ドルだった総額を10億ドル増やすことで、3分の2だった日本側の負担比率が60%を切るように操作していたことになる。06年当時は負担割合をめぐって日米間で激しい駆け引きが行われており、日本側が受け入れやすくするための措置だったとみられる。実際には軍用道路も含めて、グアム移転全体が進んでいない。

移転対象の海兵隊員8千人と家族9千人についても、公電は「日本での政治的効果を上げるため」実数を水増しした、と記した。

 沖縄の海兵隊は1万8千人が定数で、うち8千人が移転するというのが公式説明だった。だが公電によると、実際には沖縄の海兵隊は06年時点で「1万3千人水準」だった。これに対応する移転の実数が、8千人を下回るのは確実だ。

 これまでも、沖縄県などが実数は約1万2千人だけだと指摘。「ロードマップによる移転でこれだけ負担が減る」とされた人数は誇大と批判してきた。国会でも取り上げられてきたが、日本政府は確認を拒んできた。

 今回、沖縄県などが指摘していた実態に近い数が米外交公電に記されていたことがわかったことで、その疑念が裏付けられた形だ。
http://www.asahi.com/politics/update/0503/TKY201105030472.html

 

「日本政府としてコメントも確認もしない」 米公電報道
朝日新聞がウィキリークスから入手した米外交公電に基づく今回の報道全般について、外務省、防衛省などの複数の高官は「米外交文書とされる文書について、日本政府としてコメントも確認もしないという方針だ」としている。

不信の官僚、「米は過度に妥協するな」〈米公電分析〉
民主党政権は、普天間問題などの日米安保をどう扱おうとしているのか――。不慣れな新政権の迷走を目の当たりにした外務・防衛官僚らは、従来の外交政策の踏襲を望む立場から、不信を感じた。複数の官僚たちが、その思いを直接、米政府の要人らに伝えた。

 外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長(当時)は鳩山内閣発足直後の09年9月18日、訪日したキャンベル国務次官補に対し、政権首脳らは日米対等の関係を訴えるが「既に対等なのに何が念頭にあるのか分からない」「民主党は官僚を抑え、米国に挑戦する大胆な外交のイメージを打ち出す必要を感じたようだ」と分析。「愚か」と批判し「やがて彼らも学ぶだろう」とみていた。

 薮中次官も同日、キャンベル氏に対し「国内には日本が対等に扱われていない、という感覚があり、民主党はそれを政治的に利用した」と解説している。

 官僚らを特に懸念させたのは普天間問題だった。

 同年10月12日、国務、国防総省双方の当局者を率いて訪日したキャンベル次官補らが、長島防衛政務官らも交えた普天間問題での協議に臨んだ。

 その直後、長島氏のいない非公式な昼食の席で、高見沢将林・防衛政策局長が「米政府は、民主党政権に受け入れられるように再編パッケージに調整を加えていく過程で、あまり早期に柔軟さを見せるべきではない」と助言した、と公電は記している。

 中堅幹部の間では、そうした物言いはもっとあからさまだった。

 在日大使館の政務担当者が同年12月10日に、日本政府の国連代表部で政務担当を務める参事官ら3人の外務官僚と会った際の会話を記した同月16日付の公電がある。この記述によると、外務官僚らは「鳩山政権の普天間移設問題での対応と政治利用」への不満を述べ、「米政府は普天間移設問題では民主党政権に対して過度に妥協的であるべきではなく、合意済みのロードマップについて譲歩する意思があると誤解される危険を冒すべきでもない」と強調したという。
http://www.asahi.com/politics/update/0503/TKY201105030296.html

米警告「合意見直すなら忍耐限界」〈米公電分析〉
日本の政権交代があった09年秋から翌10年初頭にかけて、在日米国大使館から発信された外交公電からは、自公前政権の外交政策を次々と見直そうとする民主党政権に、米側が短期間に不信感を募らせていった様子が浮き彫りとなる。普天間問題に加え、東アジア共同体をめぐる鳩山首相らの発言が波紋を広げていた。

 民主党がしばしば自民党の政策を「米寄り」と批判してきたことから、米側は当初、民主党の対米姿勢を注視していた。自公連立政権の支持率が低迷し、安倍、福田、麻生と矢継ぎ早に自民党の首相が交代すると、政権交代を視野に入れて民主党幹部との接触を増やしていった。

 東京発の外交公電のうち、民主党について触れたものは06年の約200本から07年は約440本、09年は約670本と急増した。岡田克也氏とキャンベル国務次官補の会談について報告した09年7月21日の公電は、両者の会談は既に5度目、と記している。

 日本の総選挙前の09年8月7日に本国へ送った公電では、民主党主要議員の米国への姿勢を詳細にまとめ、「外交、安保政策の専門家の中には、一般的に米国と日米同盟に好意的な立場を示す有力者が多い」と記している。

 民主党側も、政権奪取が現実味を帯びるようになり、米側に次期政権のあり方を語り始め、反米色の払拭(ふっしょく)に気を配った。岡田氏は先に挙げた09年7月17日のキャンベル国務次官補との会談では普天間問題や地位協定の見直しなどの課題については「ひとたび政権につけば、米政権との対話を経た上でのみ取り組む」と保証してみせた。

総選挙で民主党が圧勝し、政権交代が現実となった09年9月4日、大使館を訪れた民主党の松野頼久衆院議員は「鳩山は日本にとっての米国の重要性をよく認識している。例えば、最近中国は訪米前の訪中を提案してきたが、鳩山は拒否した。鳩山は『最初に会う外国の指導者はオバマ大統領でなければならない』と話した」と米側に披露している。ただ、現実には同月下旬のニューヨークで、鳩山氏はオバマ大統領よりも先に、中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席と会談した。

 このころから、米側と民主党政権の短い「蜜月」期間の後、両者の間に急速に亀裂が入った。

 米側が特に問題視したのが、普天間問題と、鳩山首相提唱の「東アジア共同体」構想だ。後者については特に、米国が構成メンバーから除かれることが懸念された。岡田外相は同構想に「米国は含まれていない」と発言しており、米側は懸念していた。

 10月7日に発信した公電では、東アジア共同体について、「現実的ではないとのメディアの批判対象となっているにもかかわらず、鳩山はこの考えを周辺諸国の首脳らに投げ続けている」と批判した。

 11月のオバマ大統領訪日を成功裏に終わらせたい米側は、急速に危機感を募らせた。10月中旬に来日したキャンベル国務次官補は、鳩山首相の北京での「これまで日本は米国に依存し過ぎていた」との発言は「米政府の最上層を驚かせた」と警告。日本側に「もし米国政府が公に、日本より中国との関係を重視したいと表明したら、日本がどう思うか、想像してほしい」と強い調子で迫った。「そうした発言は日米関係に修復しがたい危機をもたらす」と加えた。

 キャンベル氏は前原国交相に対しても「民主政権が同盟の合意事項を多岐にわたり見直し続けるならば、米国の忍耐も限界に近づく」と警告していた。

 ただし、10年2月2日、薮中次官と面会したキャンベル氏は「日米と日中の関係が(一方が親密になればもう一方が疎遠になるような)ゼロ・サムだとは考えていない」と諭した。依然として不満は大きいが、日米関係の迷走が日本の政局に直結し始め、圧力をかけるだけでは生産的ではないとして路線を修正し始めた兆しがうかがえる。
http://www.asahi.com/politics/update/0503/TKY201105030291.html

首相「政府としてコメントすべきでない」〈米公電分析〉
菅直人首相は4日、内部告発サイトのウィキリークスから提供された米外交文書公電の内容を分析した朝日新聞の報道について「ウィキリークスは合法的な形で(入手したので)はない情報を発表している。政府としてはコメントすべきでないという姿勢だ」と述べた。訪問先の埼玉県加須市で記者団の質問に答えた。

 公電では、日米両政府が合意した在沖縄米海兵隊のグアム移転を巡る2006年春のロードマップで米政府が関連費用を水増ししていたことが判明した。

 自民党の石破茂政調会長は4日、「真偽のほどは把握していないのでコメントできない。日本側の負担を少なく見せるためとか、そういう作為的なことはしていないと思う」と、訪問先の宮城県石巻市で記者団の質問に答えた。石破氏は07年9月から08年8月まで防衛相を務めた。

 一方、沖縄県の仲井真弘多知事は4日、「日本国政府に聞いて下さい。あまり興味ないですね。どこまでまともなのか」と述べた。

 米軍普天間飛行場を名護市辺野古に県内移設するための環境影響評価の後に滑走路を日米合意案から沖合へずらす約束を、07年に当時の小池百合子防衛相が仲井真氏としたとされることについては「そんな話があったかもしれないが、覚えていない」と語った。
http://www.asahi.com/special/futenma/TKY201105040286.html



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米、「日米関係危機に」警告 鳩山首相へ懸念伝達/東京新聞2011年5月4日 22時41分

 【ワシントン共同】オバマ米政権が2009年9月に就任した鳩山由紀夫首相(当時、以下同)の対中国政策や、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題での迷走ぶりにいら立ち、日本側に警告や苦言を重ねて伝えていたことが4日明らかになった。内部告発サイト「ウィキリークス」経由で米公電を入手した米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。

 公電によると、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は同年10月、鳩山首相が北京での日中韓首脳会談で「米国に依存し過ぎていた」と述べたことを受け、長島昭久防衛政務官との会談で「日米関係に危機をもたらす」発言と警告。

 「米国政府が日本より中国に関心を向けたいと公言したら、日本はどう反応するか想像してほしい」と迫っていた。

 11月の日米首脳会談で鳩山氏は普天間移設問題の解決に向け「私を信頼してほしい」とオバマ氏に確約。だが12月の公電によると、ルース駐日米大使は前原誠司国土交通相に「鳩山氏が大統領に『信頼して』と言いながら最後までやり通さないとの問題もある」と指摘。前原氏は日米同盟関係悪化について「喜ぶ国は2カ国だけだ。中国と北朝鮮だ」と答えた。

 普天間移設問題について10月15日の公電によると、辺野古沖移設を定めた日米合意順守を求める米政府代表団に対し、日本側の1人が米領グアムに移設できないかと打診。米側は「劇的に向上している中国の軍事力」から日本を防衛するためには、沖縄県内に維持する必要があるとした。

 公電は、外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長が9月、キャンベル氏に対し、民主党が自信にあふれたイメージを打ち出す必要を感じ、そのために「官僚を統制し、米国に挑む大胆な外交政策を担っている」ということを示そうとしていると分析する一方、このような考え方を「愚か」とした上で「彼らも(いずれ)学ぶだろう」と述べたとの話も紹介した。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011050401000632.html


NYタイムズ入手の米公電要旨/共同 2011年5月4日 21時36分

 米紙ニューヨーク・タイムズが内部告発サイト「ウィキリークス」経由で入手したとして報じた米公電の要旨は次の通り。(肩書は当時)

 【災害対策などに関するシーファー駐日米大使の公電】=2008年3月18日付

 一、縦割り主義でリスクを避けたがる日本官僚組織が「備えが不十分な際の危機に対する脆弱性」を高めている。

 一、日本をまひさせる災害が発生すれば、世界経済に影響を与える。

 一、重要な社会基盤の防御や、災害が発生した場合の悪影響を最小限に抑える方法を日米2国間で協議することは有益かもしれない。

 【北朝鮮問題などに関するキャンベル・斎木会談】=09年9月21日付

 一、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長と会談した。

 一、斎木氏は、北朝鮮が日本人拉致被害者の一部を殺害したが、一部は生存していると考えていると述べた。横田めぐみさんは比較的若いことから、その安否が最大の問題であり、人々は横田さんのケースに最も心を寄せているとも述べた。

 一、斎木氏は、中国が東南アジアで優位に立つことは認められないと述べた。

 一、斎木氏は、民主党が米国との「対等な関係」を訴えていることについて、両国関係は既に対等であり、鳩山由紀夫首相や岡田克也外相が何を考えているのか分からないと明かした。

 一、民主党が力と自信にあふれたイメージを打ち出す必要を感じ、そのために、官僚を統制し、米国に挑む新しく大胆な外交政策を担っているということを示そうとしたと斎木氏は分析した。斎木氏はこのような考え方を「愚か」と呼び、「彼らも(いずれ)学ぶだろう」と述べた。

 【政権交代などに関するキャンベル・山岡会談】=同日付

 一、民主党の山岡賢次国対委員長はキャンベル次官補と会談した。

 一、日米密約に関しては透明性を重視する。鳩山首相や岡田外相は政治的な理由から非核三原則の法制化を望むかもしれないが、山岡氏と小沢一郎幹事長は核持ち込みが必要な場合もあると国民を説得することが重要と考える。

 一、小沢氏は中国で胡錦濤国家主席らに歓待されたが、米政府は同様の対応を取らなかった。

 一、小沢氏は民主党最大の実力者であり、次期参院選で勝利すればさらに影響力を強める。鳩山氏の次の首相となる可能性は高い。

 【在沖縄米軍基地問題に関するキャンベル・長島会談】=10月15日付

 一、キャンベル次官補らと長島昭久防衛政務官らが会談。

 一、長島氏によると、北沢俊美防衛相は現実主義者で現行の移設計画を支持している。

 一、キャンベル氏は、鳩山首相が北京で「米国に依存し過ぎていた」と述べたことを受け、日米関係に危機をもたらすと警告した上で、米国政府が日本より中国に関心を向けたいと公言したら、日本はどう反応するか想像してほしいと発言。

 一、(長島政務官らが席を立った後)高見沢将林防衛政策局長は、長島氏の現行計画に関する発言を額面通り受け取るべきではないと指摘。省内ではもっと強硬だと述べ、米側は再編計画見直しへの柔軟性を見せるべきではないと発言。

 一、防衛省側が在沖縄海兵隊のグアム完全移転や、沖縄県内の他の施設との補完により抑止力は維持可能ではないかとの仮説を提示すると、キャンベル氏は劇的に向上している中国の軍事力を指摘し、有事の際は嘉手納基地と那覇空港以外にもう一つの施設が沖縄に必要だと述べた。

 【同問題に関するズムワルト・山岡会談】=12月9日付

 一、ズムワルト駐日米首席公使が山岡氏と会談。

 一、山岡氏によると、沖縄県の仲井真弘多知事は普天間移設は現行計画をやり通さなければならず、それが政治的に生き残るための唯一の道だと分かっている。

 一、沖縄の人の意思を尊重していては何も起こらないだろう。沖縄県知事選前に政府が決定すれば、沖縄の政治問題は大したことはない。

 【日米関係などに関するルース・前原会談】=10日付

 一、ルース駐日米大使は前原誠司国土交通相に「鳩山氏がオバマ大統領に『信頼して』と言いながら最後までやり通さないとの問題もある」と指摘。

 一、前原氏は日米同盟関係悪化について「喜ぶ国は2カ国だけだ。中国と北朝鮮だ」と発言。

 【基地問題などに関するズムワルト・松野会談】=10年1月26日付

 一、ズムワルト氏が松野頼久官房副長官と会談。

 一、松野氏は、鳩山首相と日米作業グループは、普天間飛行場を沖縄県外に移設する案を「形式的」に検討しなければならないが、唯一の現実的な選択肢は普天間をキャンプ・シュワブか、その他の既存施設に移転させることだと述べた。

 一、松野氏によると、日本の安全保障政策は地方自治体によって決定されることはなく、(移設反対派が当選した)名護市長選の結果は鳩山首相の最終決断において重大な要素にならない。

 一、松野氏は、キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる現行計画は「死んだ」と強調。工事現場の周辺で抗議行動が起きる可能性が強いとした。

 一、松野氏は、名護市長に当選した稲嶺進氏が普天間移設の現行計画への反対を表明したとしても、同氏は修正案を受け入れるかもしれないとの見方を示した。

 【日米安全保障高級事務レベル協議】=10年2月4日付

 一、キャンベル次官補と外務省の梅本和義北米局長らが日米安全保障高級事務レベル協議を開催した。

 一、キャンベル氏は「北朝鮮情勢、増大する中国の軍事力などに直面し、日米同盟は史上最も重大な試練を迎えた。だが、この現実は見過ごされがちだ」と指摘。

 一、米国はグアム周辺とアジアでの自衛隊のプレゼンスと活動の強化を要請した。(共同)


 【ウィキリークス】米軍グアム移転費を水増し、日本の負担軽減装う/朝日新聞(2) に続く



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