駅前不動産屋今日も回りは敵だらけ

株式会社 ハウスショップ 東京都町田市

罠・・・・23

2020年02月13日 | 不動産業界

翌日
山田と徳本は前回と同じ六本木のシャブシャブ屋で会いました。。
着くとすぐにビールだけ頼んで
本題に入りました。
山田はいきなり徳本に
あの物件65億で手を打てないか?
と聞きました。
徳本は
それが出来るのならお前に面倒をかけたりしないよ
俺がお前に頼んだのは
融資金を回収するためにお願いしたんであって
25億も泣く位なら頼まないよ
て少し不機嫌そうに言いました。
山田にとっては想定通りの返事でした。
さらに山田は続けました。
お前あの再開発の現状を知ってのか?
と尋ねると
2人の地権者と価格が折り合わずに時間がかかってるが
設計事務所は合意した他の地権者との契約が全て終れば
今反対してる人達に金額の色がつけられるので
大きな問題では無い
そう言って来ました。
山田は
少し笑って
お前甘いよ
って吐き捨てるように言いました。
徳本はどう言う意味だ?
って聞くと
あの反対してる地権者は
その土地を既に他に売却しようとしてるのを知ってるか?
と聞くと
そんな話しは聞いてないと答えました。
すると山田は更に
あの地権者は二人とも朝鮮人で
売却先は同じ在日の人間が経営してる不動産屋だ
黙って聞いてる徳本にさらに山田は続けました
問題はその不動産屋の資金の出所だ
関東の広域暴力団系が資金の出所になってる
もしあの土地が暴力団に渡れば
全体の価値も90億円どころか2束3文の土地になる
だから今65億円で資金が回収できるのであれば
絶対にそうするべきだ
そう徳本を説得しました。
その話しを聞いて徳本は
その話しは確かなのか?
と聞いて来たので
山田は間違い無い筋からの話しだ。
と答えました
徳本は
一応話しを聞いておく
とだけ言って明確な返事をしませんでした。
山田がこれだけの内情を知ってるのは
全て高橋からの情報でした。
地上げ仲間から得た話しで
信憑性は高い
そう言っていました。

山田から話しを聞いた徳本は
翌日からすぐに話しのウラを取りました
すると
現場事務所の人間からは
確かに最近地権者はコンタクトを拒否してる事と
頻繁に黒塗りの外車が停まってる
そんな話しをしました。
徳本の中に不安がよぎりました
90億円が焦げ付いたら・・
自分の出世はここで終る

そして
それから
必死で考えました
この苦境をどう逃れるか

やがて自分なりに絵が描けました。
具体的には
25億の損失は
融資金の保証をしてる親会社であるゼネコンに持って貰う
これが一番です
前期で1000億の利益を叩き出してますから
25億程度は数字合わせてではどうにでもなる
それが銀行の常識でした
そして
そのために
ゼネコンの社長に会ったり
社内の役員に根回しをしたり
そうして
最後は山田の申し出通り
65億円で売却する
この道筋を立てる事ができました。
そして
山田に電話してその事を伝えると
山田はすぐに契約の段取りに入る
そう言って電話を切りました。
契約の道筋は見えましたが
山田にはもう一つ大仕事が残っていました。
その仕上げをするために
高橋に電話を入れました
会いたいと・・
高橋はすぐに飛んで来ました。
高橋が会社に来ると
山田は
近くの喫茶店に誘い
そこで話しをしました。
65億で契約になる事を伝え
そして
一番言いにくい話しをしました。
ズバリ
今回仲介料以外に
5000万自分個人にウラで用立てて欲しい

この5000万が
ここ数年山田がいつも頭から離れなかった苦しみから解放させてくれる
そうなるはずでした。
山田を苦しめてるのは
明洞で指名してたチェミヒでした。
彼女は2年前に韓国に戻っていました。
戻った理由は
出産のためでです。
山田の子供を妊娠してしまったのです。
山田には成人した息子が二人いますが
その息子達より年下のチェミヒに妊娠させてしまったのです。
堕ろせ
そう言いたかったのですが
最後までそれが口に出せないまま
お腹が目立ってきたチェミヒは韓国で出産したのです。
そして
韓国に帰る時に
山田に言った事は
認知はしなくて良いけど
生活は守って欲しい
そのために30万円毎月生活費を送る
そんな約束を交わしていました。
山田は
自分の小遣いと
会社の経費を操作して
そのお金を捻出しましたが
それだけでは足りません
そしてその足りない分は
亡くなった山川店長
彼に頼んで調達していました。
山川の裏金は目をつむる
その事の見返り
暗黙の了解でした
ところが
その山川が急死したために
そのスキームが壊れ
山田が苦しんでた訳です。
送金が遅れがちになり
その都度チェミヒから連絡があり「
山田は心理に的に追い詰められていました。
そして
2ヶ月前
送金の遅れにキレたチェミヒが
言い放ったのです
もうアンタにお金を請求するのに疲れた
お金は送らなくていいから
会社と奥さんにバラす
そう言ってまくしたてたのです。
これでは地位も家庭も失いますので
山田はなんとかそれは勘弁して欲しいと懇願しましたが
チェミヒが最後に言った言葉は
じゃ3ヶ月だけ待つから
その間に5000万用意して
この5000万でもうアナタとは縁を切るから
今後は一切何も言わない

その日から
山田の頭は5000万で一杯になりました。
そんな時に徳本から舞い込んで来た話し
これが神風に思えて
何が何でもまとめよう
そう決心したのです。

山田から5000万の裏金を要求された高橋
少し意外な顔をしましたが
実はこんな話しは慣れています。
これまで
銀行の支店長やら政治家やら
そんな人達に裏金を渡して
彼は仕事の成果を上げて来たのです。
ですから
しばらく黙ったあと
杉山に伝えましょう
大丈夫です
と即答しました。
山田の気持が一気に軽くなった瞬間です。
それから契約日は10日後と決まりました
決済は40日後で
資金はノンバンクから出る事になりました。
全ては順調
あとは契約を待つだけ
ただ10日後は長いな
と思ってた山田店長でしたが
その日を待つしかありませんでした。

不動産屋は
契約の予定が決まっても
契約日まで心は落ち着きません
この仕事はキャンセルをたくさん経験する仕事でもあります
その都度失望と怒り
これに悩まされるのが不動産の営業です。
10日後の契約が決まった山田も
その間は電話に怯えながら過ごす事になります。
そして
その電話が来たのが
契約の3日前でした。
高橋からです
契約をあと2週間延ばして欲しい
そう言ってきました。
その言葉に動揺した山田は
理由を聞きました
すると
高橋は
融資の条件がノンバンクより良い銀行が見つかったので
そこ切り替えるため
そう言ってきました。
その銀行名を聞くと
聞いた事の無い信用金庫でした。
信用金庫で65億円?
不安がよぎりましたが
ここま来れば
その話しを信じる以外にありません。
そして
徳本に電話して
契約が少し延びる
この事を伝えると
徳本も理由を聞いてきましたので
高橋から聞いた話しをそのまま伝えました。
徳本も仕方が無いと言って
待つしか無い
そう答えて電話を切りました

徳本から山田に電話がかかって来たのは
それから1週間後です。
新聞を見たか?

まだ新聞に目を通して無かった山田は
どうした?
と聞くと
今回の融資をする事になってる信用金庫の記事が出てる
って話しでした
慌ててカバンから新聞を取り出すと
1面に大きく記事が出ていました
その信用金庫に乱脈融資疑惑で
強制捜査が入ったと

山田常務は慌て山中都市開発の高橋に電話をかけましたが
もう事務所の電話は鳴りますが誰も取りませんでした。
次に杉山に電話をかけましたが
こっちも同じで連絡は付きません
山田の希望が潰えた瞬間でした。
後の報道で知ったのですが
この乱脈融資事件は杉山も深く関わってたのです。

その後この駅前の再開発事業は完全に頓挫して不良債権となり
バブルの終焉の先触れとなりました。
徳本の銀行はその後公的資金の注入で生き残りますが
徳本自身は何度も不正融資の疑惑で警察から事情を聞かれ
そして最後は銀行を離れる事になります。
その後はしばらく経営コンサルタントの仕事しましたが
銀行時代の仲間や部下がどんどん銀行を去り
最後は人脈が枯れ果て融資の仲介のパイプが細くなり
融資の口利きが目的で徳本に仕事を依頼してた顧客が全て去り
その後は貯めた預金で
なんとか生活をつなぐ事になります。

山田常務はその後会社の業績が大きく落ちたために
役員を解任されます
その後チェミヒの事が社内で知れ渡り
こちらも会社を辞める事になります。
そして
雑居ビルの一室で不動産業を始めましたが
これまた徳本と同じで
それまで築いて来た人脈を当てにしての開業でしたが
今まで自分の力で地位を築いて来た
そう思っていましたが
看板を失って初めて
自分の無力さを知る事になります。
5年も持たずに
静かに不動産業界を去りました。
お互い東大を出て
夢を持って入った銀行
しかし終って見れば
その夢は幻と化し
最後は孫には過去を語りたくない
そんな人生で終る訳です。

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