窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

タ・プローム

2008年07月06日 | 史跡めぐり
12世紀末、クメール王国のジャヤーヴァルマン7世によって建てられた仏教寺院です。クメール王国はヒンドゥー教、仏教、それから土着の信仰が混交して存在していたようですが、この寺は後にヒンドゥー教寺院として改修されたため、仏像等の彫刻が削り取られてしまっています。タ・プロームとは「梵天の古老」(タ=おじいさん、プローム=梵天)という意味だそうです。



ガジュマルによる浸食が激しく、ほとんど瓦礫の山です。個人的な印象ですが200年も前に建てられた先程の「バンテアイ・スレイ」に比べて崩壊の仕方がひどく、また彫刻の技術も低いのではないかという感は否めませんでした。ガイドにその辺を尋ねてみましたが、はっきりとは答えてくれませんでした。恐らく仏教徒である現在のカンボジア人としては認めたくなかったのかもしれません。



 そういえばここでは蝉が鳴いていました。東南アジアの国で蝉の鳴き声を聞いたのは初めてのことです。

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バンテアイ・スレイ

2008年07月05日 | 史跡めぐり
5月10日、1日かけてアンコール遺跡群を観光して回りました。これら遺跡群は非常に広大・多岐に渡るのでとても全てを見て回ることはできませんでした。



さて、最初に訪れたのは「バンテアイ・スレイ」という10世紀に建てられたヒンドゥー教の寺院。「女の砦」(バンテアイ=砦、スレイ=女)という意味だそうです。硬い赤色の石に精巧で美しい彫刻が全面にわたり施されているのが特徴で、中でも「東洋のモナ・リザ」と賞される女神デヴァターの像が有名です。



 このデヴァター像、1923年にアンドレ・マルローというフランス人が盗み出し、当局に逮捕されるという事件がありました。マルローはその後この事件を基にした小説『王道』を著し、それによってデヴァター像が「東洋のモナ・リザ」としてヨーロッパに知れ渡ることになったそうです。

それにしても盗人が自分の体験を小説にしてそれで有名になるというのは...。

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アプサラ-カンボジア伝統舞踊

2008年07月04日 | 海外での出来事
5月9日~5月13日、初めてカンボジアに行ってきました。10日の夜プノン・ペンからこれまた初めてのプロペラ機に乗ってシェリム・アップに移動。世界遺産アンコール・ワットを抱える観光都市シェリム・アップではレストランでカンボジアの伝統舞踊であるアプサラ・ダンスを見ることができました。



 アプサラ・ダンスのアプサラというのはヒンドゥー教の天地創造の神話「乳海攪拌」の結果誕生した天女の名前で、カンボジア史上最大の勢力を誇ったクメール王国の宮廷舞踊です。ゆったりとした動き、遺跡のレリーフに描かれている天女そのままに指を反らせた手つき、腰を落として足を高く上げる動きなど、学生時代に空手をやっていたのでつい武術的な視点で見てしまうのですが、インドネシアのガムランとも違う楽曲にあわせて舞う姿は非常に感動的でした。



 アプサラ・ダンスは1970年代のポル・ポト政権下に於ける内戦時に弾圧され一時滅亡の危機に瀕しましたが、1980年以降生き残った舞踊家たちの手により復活、保存育成が進められたことにより、現在ではこのように観光地で気軽に見ることができます。アプサラ・ダンスを含むカンボジアの伝統舞踊は2003年ユネスコの世界無形文化遺産に指定されているそうです。

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繊維リサイクルの歴史 【017】再生資源価格の高騰と繊維リサイクル

2008年07月03日 | 繊維リサイクルの歴史
 故繊維に限らず90年代から00年代の苦境は再生資源業界に共通した出来事でした。しかし長く続いた再生資源業界存亡の危機にようやく底を打つ大きな変化が2000年代半ば頃から見られるようになります。まず21世紀になり2008年の北京オリンピックを目指し高度成長を続ける中国の旺盛な需要に支えられ、屑鉄や古紙などの再生資源が急速に値上がりを始めました。一時この動きに便乗し古紙や金属類の持ち去り、盗難が相次いで発生しマスコミでも大きく取り上げられました。しかし同じ再生資源業でも故繊維はこれら価格高騰の流れには乗れませんでした。それは既にご紹介の通り中国市場では故繊維類の輸入が禁じられていること、それに何より繊維は他の資源物と異なり元の素材には戻らないという特殊事情がありました。要するに繊維リサイクルは中国需要による価格高騰の恩恵を受けることができなかったわけです。

 ところがその故繊維業界にもささやかながら変化が訪れます。それは10年来続いたデフレーションの終焉です。90年代からの10年というもの、安く抑えた人民元、人件費を武器に経済成長の足掛かりをつくった中国から廉価な商品が大量に流入し、日本は低価格競争の時代が続いてきました。しかし2000年代半ば頃より中国政府は人民元の切り上げ、労務面や環境面の法規整備、規制強化、輸出促進のための増値税を撤廃あるいは減率するなど、それまでの方針を転換し始め必ずしも中国製品が安いとは言えない状況になってきました。さらに世界の余剰資金が原油先物投機に大量に流れ込み、1998年4月には1バレル13ドル程度だった原油価格が10年後の2008年4月には100ドルを突破するなど空前の高値を記録するようになりました。
 
 こうした流れを受け、これまで長い間石油原料から作った安価な不織布のウエスやフェルトに押され続けていた故繊維を原料とした伝統的なリサイクルウエス、フェルトに再び注目が集まるようになりました。さらに海外の中古衣料市場では、これもまた空前のユーロ高やアジア通貨高を受け、20年間世界一のコスト高で価格競争力を失っていた日本製品が優位に立ったとは言わないまでも、元からの品質の良さを認められ次第に受入れられるようになってきました。こうして故繊維業は2000年代の終わり頃になって、価格高騰の恩恵を受けることはできないまでも量的にはリサイクル需要を拡大することができるようになりました。このことは少なくとも故繊維業界のリサイクル率を再び上げることに貢献することになったのです。
 
 さらに国内においては地球温暖化対策としてCO2削減が国際公約となり、環境対策やリサイクルに対する意識がありとあらゆる業種に広がりを見せるようになりました。こうした動きが動脈産業と静脈産業がそれぞれ補完しあう、文字通り健康的な循環器(動脈+静脈)産業を形成していくための契機となるか、今後に期待されます。

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ウエスものがたり【最終回】リユースの力、エコソフィーの力

2008年07月02日 | ウエスものがたり


上の表をご覧ください。これは経済産業省が2003年に行なった『繊維製品のLCA調査報告書』よりウエスを新しい綿布をつかって生産した場合とぼろ(古布)をリユースして生産した場合のエネルギー消費量をCO2量に変換した比較です。木綿というと天然素材=環境に良い、というイメージをお持ちの方も多いのではないかと思いますが、木綿というのは実はその生産過程で膨大なエネルギーを必要とするのです。しかしウエスを作るために新たに木綿という資源を投入する代わりに、すでに衣料としての役割を終えたぼろをリユースした場合、両者のライフサイクルにおけるCO2発生量を比較すると、累積でぼろを利用したウエスのCO2発生量は前者の場合のわずか1/100にすぎません。
 
 どうしてこのような驚くべき違いが発生するのでしょう。それはぼろウエスが既に存在している、しかも一旦洋服や布としての役割を終え廃棄された物を原料として使用しているため、綿布を生産するために投入した膨大な資源やエネルギーの追加投入を抑えることができるからです。しかしぼろウエスの原料である服や布も生産の過程で資源やエネルギーを消費するではないか、それを考慮に入れていない比較は詭弁ではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。果たしてそうでしょうか。

 例えば、布(または衣服)を一単位作るのに必要なエネルギーを10、ウエスを作るのに必要なエネルギーを10としましょう。ウエスを新しく木綿を栽培して生産する場合、ウエス1単位を作るために必要なエネルギーは20になります。一方、衣服を再利用してウエスを作る場合、同じ20のエネルギーで衣服とウエス2単位を作ることができます。実際にはぼろウエスを作る場合もエネルギー消費はありますが、この例の場合その量は無視できるほど極小と見なして差し支えないでしょう。したがって既に存在している資源を有効活用すれば同じエネルギー投入で社会厚生2単位を実現でき、逆に言えば投入エネルギーをそれだけ節約することができるというわけなのです。

 よく同じECOでもECONOMYとECOLOGYは二律背反で両立しない、と言われます。しかし先ほどの例で見たように、社会厚生を維持しつつ環境負荷を減らすという「両立」は「リユース」によって実現可能であることにお気づきでしょうか?環境負荷を減らすだけならそもそもエネルギー消費をしない、ごみを出さないというのが最も有効であるのは言を俟たないのですが、経済活動の結果、資源やエネルギー消費が必然的に発生するのであればこれらを可能な限り有効に使うことで経済活動と環境負荷低減のバランスをとるのが最も有効な手段なのです。それでは両者のバランスをとる「支点」となるものは何か、それはわたしたち一人ひとりの「知恵」(SOPHIA)です。このような視点がこれからの時代に必要なのだと思います。

 したがってナカノ株式会社ではこのようにECONOMYとECOLOGYをSOPHIAによって結びつける概念を”ECOSOPHY”(エコソフィー)と呼び、企業活動の根本概念として位置づけています。ぼろウエスの果たす役割はエコソフィーによって機能的優良性を超え拡大していくのだ、また拡大させていかなければならないとわたしたちは考えているのです。

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繊維リサイクルの歴史 【016】需要面の問題

2008年07月02日 | 繊維リサイクルの歴史
 次に需要面の問題についてまとめてみます。故繊維の用途は主に、中古衣料・ウエス・反毛の三つに分けられるということはすでにお話しました。故繊維の出口となるこれら三つの市場はそれぞれどのような問題に直面していたのでしょうか。

1.中古衣料

90年代から00年代にかけて中古衣料は輸出数量だけでみると1.5倍の成長を示しました。ところが輸出金額は半値以下に下がってしまいました。その主な要因は次のようなものでした。

1)主な仕向地が東南アジアに限られた

地域上の特徴(アフリカの決済メカニズムの不安定、中南米の輸入規制、ロシア・東欧の体型相違等)および物流上の立地から日本の主な輸出先は東南アジアに限定されていました。東南アジア市場は当然日本より南方に位置するため、毛織物等の冬物衣料はほとんど売物になりません。しかし日本人の意識としては冬物の方が購入した時の価格が高いのでリサイクルする価値があるのではないかという感覚もあってか、急速な勢いで冬物衣料の発生が増え行き場を失った冬物衣料が故繊維業者を圧迫することになったのです。

また衣類は生活必需品であると共にわが国のような先進国にあっては奢侈品、すなわちファッションであるという点も見逃せません。つまり日本では衣類に対し実用としての価値よりもブランドとしての価値に値段がつけられています。しかし中古衣料を必要としている多くの国の人々にとって、衣類はあくまで生命を守る必需品なのでありファッションを楽しむところまでいたっていません。その結果、供給側と需要側に価値の不一致が生じます。わたしたちはともすると自分たちに価値のあるものは海外の人々にも喜ばれるものと思ってしまいがちですが、必ずしもそうとは言えないのです。実際東南アジアで必要とされながら、わが国ではどちらかというと敬遠されがちな物の一例を挙げてみますと、

-ハンカチ
-女性物肌着
-バスタオル、スポーツタオルなど
-野球帽

などがあります。意外な結果に驚かれた方もいらっしゃるかと思います。ご覧のようにわたしたちの感覚ではどちらかというと「汚い」もの、使用済みとして出すには抵抗のあるものがアジアでは実用的価値のあるものとして重宝されているのです。その結果、彼らが必要としているものほど日本ではどうも出すのが恥ずかしいということで集まりにくいという結果になっています。繊維リサイクルの効率を高めるため、また海外の国々とのより良い共存共栄関係を築くためにも、わたしたち自身のパラダイム転換が必要になります。

2)中国の輸入規制

アジア市場は中国という世界第一位の人口を抱える圧倒的に大きな市場を内含しています。一見すると日本は中国の近隣に位置しまこと中古衣料にとって有利なように思われますが、この最も購買力のあると思われる中国が中古衣料に対し公正な理由のない輸入規制を敷いており、これは現在も続いています。この点が紙やプラスチックなど他の再生資源とは全く事情の違う故繊維特有の問題です。

3)カントリーリスクが大きい

中古衣料市場のほとんどは途上国であるため取引に不安定な要素が多いのも否めない事実です。衣類はかさばるわりに市場価格が下がりつづけているため、相手国や世界の経済変動の影響をまともに受けてしまいます。90年代後半はご存知の通りわが国においては史上空前の円高、東南・東アジアにおいては通貨危機があり、日本の輸出競争力が下がる一方で市場も経済破綻により縮小するという事態に陥ったのでした。

4)国際的な競争が激化

アジア通貨危機によりかつては日本の中古衣料の輸入国であった韓国や台湾が為替の上で優位に立ったことで、この頃から輸出国に転じ日本の競争相手となるようになりました。日本は人件費のみならず為替の上でも輸出競争力で劣勢に立たされることになったのです。

2.ウエス

すでにお話しましたように明治以来永らく故繊維業界の主力商品であったウエスの需要は、我が国の製造業の海外移転などにより80年代以降一貫して縮小の一途を辿りました。資源の再使用という点から見ればいかにも理に適った商品と思えるウエスなのですが、日本の工業の構造的変化、80年代以降機械工業の不振、ファクトリーオートメーション化、工場の海外移転など日本の工業そのものが構造的に変化し、国内におけるウエス需要の絶対量そのものが減少したのです。

1)代替品の登場

また90年代になるとISO14000シリーズなど環境問題への対応を名分とし大手メーカーがレンタルウエスや紙ウエスといった形でウエスの市場に参入してくるようになりました。長引く不況の中、大資本が中小・零細企業によって構成されたニッチ市場にも進出するようになったのです。 因みにISO14001、すなわち環境マネジメントシステム導入に際し工場ゼロエミッションの目標化ということでレンタルウエスなどの需要が伸びたことは、実際には使用後のウエス処分をアウトソーシングしているに過ぎなかったのですが、ウエス製造業者にとって大口ユーザーを失い、事業採算ベースにのらない事態に繋がったのです。

2)輸入原料の流入と国産原料の不能物化

85年のプラザ合意以降の円高とこれまで輸出先であったヨーロッパが環境意識の高まりにつれ自国回収を急速に進めたことで逆に輸出国に転じたことで、安価な輸入ウエス原料が流入するようになり、その結果国内におけるウエス原料の価格が低下することになりました。それにより従来ウエスとして活かされていた原料が供給過剰となり、結果としてその処理コスト負担が故繊維業者の上に重くのしかかることになったのです。

3.反毛

反毛は再使用の用をなさない繊維屑などを原料に戻し再商品化する、いわば「リサイクル」の代表格です。しかしこれらも90年代以降は量・価格共半分に下落してしまいました。その要因を見ていきます。

1)フェルト用途でのプラスチック系素材への代替

自動車業界を中心とする客先の品質要求アップにつれ、反毛原料主体のフェルトは次第に使用されなくなりました。自動車の遮音性、耐熱性という側面から見れば毛や綿の故繊維を使ったほうが機能的に優れていたのですが、デフレ経済下でコスト上の理由から新品のポリエステルなどに変化していきました。

2)作業用手袋分野における輸入の増加

故繊維を再生してつくる特殊紡績糸の最大用途である作業用手袋(軍手)は国内消費の約60%以上が海外の安価な輸入製品となり、反毛を原料とする国産品はそのシェアを失っていきました。

3)選別業者における反毛用途向け事業の採算割れ

反毛の生産地から遠い中国・四国以西はもとより、関東・関西地区の選別業者も反毛原料の価格低下により物流費さえまかないきれず、反毛用途向けが事業として成り立たなくなりました。その結果、各地で回収はしたものの不能物として処理せざるをえない反毛原料用途の故繊維が増加し、それらの処理負担が故繊維業者を圧迫することとなったのです。

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ウエスものがたり【第九回】ぼろウエスの今日的意義

2008年07月01日 | ウエスものがたり
第二回でお話ししましたが、ここでもう一度ウエスを作るのに何故ぼろ、つまり使い古した布を使うのかについておさらいしましょう。木綿は何度も洗濯を重ねると脂分が抜け、繊維の表面も程よく荒れて水や油を良く吸い取るようになります、つまり良く使われた木綿ほど優れたウエスになったから、ぼろが使われたのです。したがってウエスにぼろを使うのはリサイクルがこれほど社会的な問題としてクローズアップされるはるか以前から、その機能的理由によってごく当然のことだったのでした。



 それに加えてぼろウエスの今日的意義として、大量に排出されるようになった古着を活用するための有効な手段の一つということがいえるでしょう。さらに地球温暖化防止のためCO2削減目標が国際条約となった今日、ウエスのように一度廃棄された古着を再利用するというリユースはCO2発生を抑制する極めて有効な手段として見直されるべきものとなっています。

 ウエスは自動車のように排気ガスを出すわけではありません。それなのに何故ぼろから作られたウエスを使うことが廃棄された古着の削減につながるだけでなくCO2発生抑制につながるのでしょうか。それはぼろウエスを使うことによって、新しい綿布や繰り返しクリーニングして使うレンタルのウエスを使った場合に発生するであろうCO2を未然に抑止できるという「機会損失の抑止」という考え方にもとづいています。さらに今日、製品の環境負荷を測定するのにはその対象となる製品が使用されたり廃棄されたりした場合だけでなく、その製品を作るために投入した資源やエネルギーなど製品の生い立ちから廃棄まで(これを製品のライフサイクルといいます)全ての過程における負荷を考慮に入れることが主流となっています。これをライフサイクルアセスメント(LCA)といいます。このLCAの手法によると、その製品が存在することによって発生するトータルの環境負荷を比較することができるのです。例えば、太陽電池パネルが環境に良い側面をもった製品であることは間違いないのですが、太陽電池パネルが環境にどれほど良いのかを測定するにはその製品がもつ性能だけでなく製造するために投入した資源やエネルギーも考慮に入れなければ不十分であろうというのがLCAの考え方です。

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繊維リサイクルの歴史 【015】発生および回収段階での問題

2008年07月01日 | 繊維リサイクルの歴史
当時故繊維業界が直面した問題は、大きく二つに分けられます。一つは故繊維の供給が急増した問題。もう一つは供給の増加と同時に出口としての需要が減少したという問題です。通常の製造業における仕入と違い、故繊維業界では需要動向と無関係に供給が発生しますから、需要と供給が全く相反した動きを示したことにより、故繊維業界は突如として窮地に立たされることになったのです。

 では初めに供給面において具体的にどのような問題が発生したのかを見ていきましょう。

1.行政回収ルートの増加

 各種リサイクル法規が整備される流れの中、容器包装・古紙に次ぐ収集品目として、自治体が衣類を分別収集の対象とするケースが2001年頃このころから急激に増加するようになりました。ところが行政回収ルートの場合、市場メカニズムが機能しないため需要と関係なく供給が増加し需給バランスが崩れてしまいました。また分別収集の場合排出時の分別意識が低くなりがちで、回収物に不能物・汚れ物などの混入が多くなるなどの問題が発生しました。空き缶やビンと違い衣料は洗えば済むという物ではなく、濡れても汚れても使い物にならなくなってしまう性質があります。この点は「資源ごみ」という名が示すとおり、衣類を「ごみ」として扱う前提に今日でも改善すべき課題があるのですが、同じ再生資源の中でも特に繊維は上記のような独特の難しさを抱えており、より良い行政回収の仕組みを作っていくためにはこうした点について事前に慎重に検討していく必要があります。

2."リサイクル"を謳う一方的な回収の増加

 長引く不況やデフレの影響もあってか、このころから販売促進効果を狙った衣類の「下取りセール」などが目立つようになってきました。小売店による衣類の下取りそのものは悪いことではありませんが、回収した衣類がきちんとリサイクルされるか否かの根拠なく安易に販促や企業イメージ向上だけを狙った回収も決して少なくありませんでした。

第14回でお話しましたとおり、リサイクルシステムの構築とはこれまで「外部不経済」とされてきた廃棄の問題を経済システムの中に「内部化」する動きのことであり、そのためには内部化するコストをいかに配分するか、わかりやすく言えば各経済主体がリサイクル費用を応分に負担することどうすれば合意できるかが大きな問題となります。解決の一端としては、リサイクルを要請する側と引き受ける側双方が責任ある経済主体であり、回収した衣類を確実にリサイクルすることを保証できるサプライとリサイクルをつないだチェーンを構築する必要があるのです。

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