法律の周辺

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明るい「先順位者の請求による後順位担保権の抹消制度」について

2008-05-22 19:53:37 | Weblog
抵当権抹消,全員の合意不要に…自民PTが制度創設案 YOMIURI ONLINE

 これも「国策としての不動産執行改革」(上原他『民事執行・保全法』P218)のひとつといったところか。

さて,「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」が成立したのは,平成15年の第156回臨時国会において。この改正法案が成る前の「担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案」の「第1 主として担保法制に関する事項」「4 抵当権」の中に次ぎのようなくだりがあった。

(6) その他
 抵当権の実効性の向上等の観点から,民法の抵当権の規定に関するその他の見直しをするかどうかについては,なお検討する。
(注)例えば,抵当権の簡易な実行を図るための制度として,次のようなものを設けるべきであるとの意見がある。
a  抵当権者は,一定の出捐をして抵当不動産の所有者に対して不動産の所有権を自己又はその指定する者に移転させること及び他の抵当権者に対して抵当権を消滅させることを裁判所に請求することができる。
b  他の抵当権者,抵当不動産の所有者その他の利害関係人は,aの金額に不服があるときは,自らそれより高い金額を提示するか,又は競売の申立てをすることができる。
c  所有権移転の効果及び抵当権消滅の効果が生じた場合において,その登記は裁判所の嘱託により行う。


民事局参事官室の捕捉説明には,上記注書きに関し,担保・執行法制部会においては,概略,①抵当不動産の所有者や後順位者抵当権者に対する手続保障と抵当権実行手続の簡易化との相反性,②開かれた制度を指向している現行の競売制度と上記のような利害関係人だけが関与する閉ざされた手続との関係,③現況調査を予定しない簡易な手続が執行妨害に対処できるか,といった点につき意見が述べられたとある。
記事の議員立法,担保・執行法制部会の疑義等に答えたものとなるか注目したい。
因みに,日弁連は,件の要項中間試案に対する意見書において,簡易実行制度には処分価格の客観性担保のための評価手続を設ける必要があるとし,合理的な制度創設は困難ではないか,と述べている。

法務省 担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案


民事執行法の関連条文

(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)
第六十三条  執行裁判所は,次の各号のいずれかに該当すると認めるときは,その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし,第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは,その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において,不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
二  優先債権がある場合において,不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
2  差押債権者が,前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に,優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額,優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて,次の各号に掲げる区分に応じ,それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは,執行裁判所は,差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし,差押債権者が,その期間内に,前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき,又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において,不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは,この限りでない。
一 差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
  申出額に達する買受けの申出がないときは,自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
二 差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
  買受けの申出の額が申出額に達しないときは,申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
3  前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において,買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは,執行裁判所は,差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
4  第二項の保証の提供は,執行裁判所に対し,最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。

(不動産執行の規定の準用)
第百八十八条  第四十四条の規定は不動産担保権の実行について,前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について,同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。


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