法律の周辺

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うっかりしてDV夫に妻の住所を教えてしまった自治体について

2008-05-13 20:02:52 | Weblog
毎日jp 岐阜市ミス:DV夫に住所教える 転居費など98万円補償

 住民基本台帳法第12条は住民票の写し等の交付請求に係る規定。その第3項には「前二項の請求は,請求事由その他総務省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。ただし,総務省令で定める場合には,この限りでない。」とあり,第5項には「市町村長は,第一項又は第二項の請求が不当な目的によることが明らかなときは,これを拒むことができる。」とある。これらの規定は戸籍の附票の写しの交付請求にも準用されている(住民基本台帳法第20条第2項)。
夫が妻の戸籍の附票の写しを交付請求する場合,通常は請求事由を記載する必要はないが,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律 (平成十三年法律第三十一号)第一条第二項 に規定する被害者のうち更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものに係る請求である場合等市町村長が法第十二条第五項の規定に基づき請求を拒むかどうか判断するために特に必要があると認める場合」は請求事由を明らかにしなければならない(「住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令」第5条参照)。審査の結果,当該交付請求が「不当な目的によることが明らか」と判断されれば,市町村長はこれを拒否できる。
記事には「うっかりミス」とあるが,当事者にとっては重大事。とにもかくにも,大事に至らなくて良かった。
因みに,DV法第9条には「配偶者暴力相談支援センター,都道府県警察,福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は,被害者の保護を行うに当たっては,その適切な保護が行われるよう,相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。」とある。

総務省 ドメスティック・バイオレンス,ストーカー行為等の被害者保護のための住民基本台帳事務における支援措置の実施


国家賠償法の関連条文

第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体が,これを賠償する責に任ずる。
2  前項の場合において,公務員に故意又は重大な過失があつたときは,国又は公共団体は,その公務員に対して求償権を有する。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の関連条文

 我が国においては,日本国憲法 に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
 ところが,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また,配偶者からの暴力の被害者は,多くの場合女性であり,経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは,個人の尊厳を害し,男女平等の実現の妨げとなっている。
 このような状況を改善し,人権の擁護と男女平等の実現を図るためには,配偶者からの暴力を防止し,被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは,女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
 ここに,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,この法律を制定する。

(定義) 
第一条  この法律において「配偶者からの暴力」とは,配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい,配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に,その者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2  この法律において「被害者」とは,配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3  この法律にいう「配偶者」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み,「離婚」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が,事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。

(国及び地方公共団体の責務)
第二条  国及び地方公共団体は,配偶者からの暴力を防止するとともに,被害者の自立を支援することを含め,その適切な保護を図る責務を有する。

(被害者の保護のための関係機関の連携協力)
第九条  配偶者暴力相談支援センター,都道府県警察,福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は,被害者の保護を行うに当たっては,その適切な保護が行われるよう,相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。

(苦情の適切かつ迅速な処理)
第九条の二  前条の関係機関は,被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは,適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。

住民基本台帳法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,市町村(特別区を含む。以下同じ。)において,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もつて住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。

(国及び都道府県の責務)
第二条  国及び都道府県は,市町村の住民の住所又は世帯若しくは世帯主の変更及びこれらに伴う住民の権利又は義務の異動その他の住民としての地位の変更に関する市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)その他の市町村の執行機関に対する届出その他の行為(次条第三項及び第二十一条において「住民としての地位の変更に関する届出」と総称する。)がすべて一の行為により行われ,かつ,住民に関する事務の処理がすべて住民基本台帳に基づいて行われるように,法制上その他必要な措置を講じなければならない。

(市町村長等の責務)
第三条  市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2  市町村長その他の市町村の執行機関は,住民基本台帳に基づいて住民に関する事務を管理し,又は執行するとともに,住民からの届出その他の行為に関する事務の処理の合理化に努めなければならない。
3  住民は,常に,住民としての地位の変更に関する届出を正確に行なうように努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。
4  何人も,第十一条第一項に規定する住民基本台帳の一部の写しの閲覧又は住民票の写し,住民票に記載をした事項に関する証明書,戸籍の附票の写しその他のこの法律の規定により交付される書類の交付により知り得た事項を使用するに当たつて,個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない。

(住民票の写し等の交付)
第十二条  住民基本台帳に記録されている者は,その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に対し,自己又は自己と同一の世帯に属する者に係る住民票の写し(第六条第三項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製している市町村にあつては,当該住民票に記録されている事項を記載した書類。以下同じ。)又は住民票に記載をした事項に関する証明書(以下「住民票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
2  何人でも,市町村長に対し,自己又は自己と同一の世帯に属する者以外の者であつて当該市町村が備える住民基本台帳に記録されているものに係る住民票の写しで第七条第十三号に掲げる事項の記載を省略したもの又は住民票記載事項証明書で同条第一号から第十二号まで及び第十四号に掲げる事項に関するものの交付を請求することができる。
3  前二項の請求は,請求事由その他総務省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。ただし,総務省令で定める場合には,この限りでない。
4  市町村長は,特別の請求がない限り,第一項の住民票の写しの交付の請求があつたときは第七条第四号,第五号及び第九号から第十四号までに掲げる事項の全部又は一部の記載を省略した写しを,第二項の住民票の写しの交付の請求があつたときは同条第四号,第五号,第九号から第十二号まで及び第十四号に掲げる事項の全部又は一部の記載を省略した写しを交付することができる。
5  市町村長は,第一項又は第二項の請求が不当な目的によることが明らかなときは,これを拒むことができる。
6  第一項又は第二項の請求をしようとする者は,郵便その他の総務省令で定める方法により,これらの規定に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書の送付を求めることができる。

(戸籍の附票の記載事項)
第十七条  戸籍の附票には,次に掲げる事項について記載(前条第二項の規定により磁気ディスクをもつて調製する戸籍の附票にあつては,記録。以下同じ。)をする。
一  戸籍の表示
二  氏名
三  住所
四  住所を定めた年月日

(戸籍の附票の記載等)
第十八条  戸籍の附票の記載,消除又は記載の修正は,職権で行うものとする。

(戸籍の附票の写しの交付)
第二十条  何人でも,市町村長に対し,当該市町村が備える戸籍の附票の写し(第十六条第二項の規定により磁気ディスクをもつて戸籍の附票を調製している市町村にあつては,当該戸籍の附票に記録されている事項を記載した書類。第五十二条において同じ。)の交付を請求することができる。
2  第十二条第三項,第五項及び第六項の規定は,前項の請求について準用する。この場合において,同条第三項中「総務省令」とあるのは「総務省令・法務省令」と,同条第六項中「これらの規定に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書」とあるのは「第二十条第一項の戸籍の附票の写し」と読み替えるものとする。

「住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令」の関連条文

(住民票の写し等の交付の請求につき明らかにしなければならない事項)
第四条  法第十二条第三項 に規定する総務省令で定める事項は,次に掲げる事項とする。
一  住民票の写し(法第六条第三項 の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製している市町村(特別区を含む。)にあつては,当該住民票に記録されている事項を記載した書類)又は法第十二条第一項 に規定する住民票記載事項証明書の交付を請求する者の氏名及び住所
二  請求に係る住民の氏名及び住所

(請求事由等を明らかにすることを要しない場合)
第五条  法第十二条第三項 に規定する総務省令で定める場合は,次に掲げる場合(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律 (平成十三年法律第三十一号)第一条第二項 に規定する被害者のうち更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものに係る請求である場合等市町村長が法第十二条第五項 の規定に基づき請求を拒むかどうか判断するために特に必要があると認める場合を除く。)とする。
一  住民票に記載されている者(法第六条第三項 の規定により磁気ディスクをもつて調製する住民票にあつては,記録されている者)又はその者と同一の世帯に属する者が前条各号に掲げる事項を明らかにして請求する場合
二  国又は地方公共団体の職員がその職名,職務上の請求である旨及び前条各号に掲げる事項を明らかにして請求する場合
三  弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士又は行政書士がその資格,職務上の請求である旨及び前条各号に掲げる事項を明らかにして請求する場合
四  市町村長が相当と認める場合

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