法律の周辺

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公園内の表現活動に係る許可制について

2006-11-20 20:03:27 | Weblog
井の頭公園で路上表現が許可制に…芸術審査に不安の声 YOMIURI ONLINE

 記事には,「本来,公園内で許可なく物品を販売したり,集会や展示のために敷地を占有したりする行為は都市公園法などで禁じられている。」とある。
しかし,都市公園法第6条第1項が公園管理者の許可を受けなければならないとしているのは,「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするとき」。
ゴザを敷いての製作したアクセサリー,絵画,写真等の販売をこの規定を根拠に取り締まる,いや,許可の対象にするというのはちょっと無理があるのでは。年間1万円前後という登録料はさほど高くない,という話しではないような気がする。どうだろうか。

 この記事で思い出すのは,吉祥寺駅構内ビラ配布事件最判の伊藤正巳補足意見。戸松・初宿著『憲法判例』にある同意見の抜粋を引用させていただく。

 「一般公衆が自由に出入りすることのできる場所においてビラを配布することによって自己の主張や意見を他人に伝達することは,表現の自由の行使のための手段の一つとして決して軽視することのできない意味をもっている。特に,社会における少数者のもつ意見は,マス・メディアなどを通じてそれが受け手に広く知られるのを期待することは必ずしも容易ではなく,それを他人に伝える最も簡便で有効な手段の一つが,ビラ配布であるといってよい。いかに情報伝達の方法が発達しても,ビラ配布という手段のもつ意義は否定しえないのである。この手段を規制することが,ある意見にとって社会に伝達される機会を実質上奪う結果になることも少なくない。」「ビラ配布という手段は重要な機能をもっているが,他方において,一般公衆が自由に出入りすることのできる場所であっても,他人の所有又は管理する区域内でそれを行うときには,その者の利益に基づく制約を受けざるをえないし,またそれ以外の利益(例えば,一般公衆が妨害なくその場所を通行できることや,紙くずなどによってその場所が汚されることを防止すること)との調整も考慮しなければならない。ビラ配布が言論出版という純粋の表現形態でなく,一定の行動を伴うものであるだけに,他の利益との較量の必要性は高いといえる。したがって,所論のように,本件のような規制は,社会に対する明白かつ現在の危険がなければ許されないとすることは相当でないと考えられる。」「ビラ配布の規制については,その行為が主張や意見の有効な伝達手段であることからくる表現の自由の保障においてそれがもつ価値と,それを規制することによって確保できる他の利益とを具体的状況のもとで較量して,その許容性を判断すべきであり,形式的に刑罰法規に該当する行為というだけで,その規制を是認することは適当ではないと思われる。そして,この較量にあたっては,配布の場所の状況,規制の方法や態様,配布の態様,その意見の有効な伝達のための他の手段の存否など多くの事情が考慮されることとなろう。」「ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に,その表現の場を確保することが重要な意味をもっている。特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現のための物理的な場所が必要となってくる。この場所が提供されないときには,多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。一般公衆が自由に出入りできる場所は,それぞれその本来の利用目的を備えているが,それは同時に,表現のための場として役立つことが少なくない。道路,公園,広場などは,その例である。これをパブリック・フォーラム」と呼ぶことができよう。このパブリック・フォーラムが表現の場所として用いられるときには,所有権や,本来の利用目的のための管理権に基づく制約を受けざるをえないとしても,その機能にかんがみ,表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要があると考えられる。」「もとより,道路のような公共用物と,一般公衆が自由に出入りすることのできる場所とはいえ,私的な所有権,管理権に服するところとは,性質に差異があり,同一に論ずることはできない。しかし,後者にあっても,パブリック・フォーラムたる性質を帯有するときには,表現の自由の保障を無視することができないのであり,その場合には,それぞれの具体的状況に応じて,表現の自由と所有権,管理権とをどのように調整するかを判断すべきこととなり,前述の較量の結果,表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。本件に関連する『鉄道地』(鉄道営業法35条)についていえば,それは,法廷意見のいうように,鉄道の営業主体が所有又は管理する用地・地域のうち,駅のフォームやホール,線路のような直接鉄道運送業務に使用されるもの及び駅前広場のようなこれと密接不可分の利用関係にあるものを指すと解される。しかし,これらのうち,例えば駅前広場のごときは,その具体的状況によってはパブリック・フォーラムたる性質を強くもつことがありうるのであり,このような場合に,そこでのビラ配布を同条違反として処罰することは,憲法に反する疑いが強い。このような場合には,公共用物に類似した考え方に立って処罰できるかどうかを判断しなければならない。」「本件においては,……被告人らの所為が行われたのは,駅舎の一部であり,パブリック・フォーラムたる性質は必ずしも強くなく,むしろ鉄道利用者など一般公衆の通行が支障なく行われるために駅長のもつ管理権が広く認められるべき場所であるといわざるをえず,その場所が単に『鉄道地』にあたるというだけで処罰が是認されているわけではない。したがって,前述のような考慮を払ったとしても,原判断は正当というほかはない。」

判例検索システム 昭和59年12月18日 鉄道営業法違反、建造物侵入


日本国憲法の関連条文

第十一条  国民は,すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によつて,これを保持しなければならない。又,国民は,これを濫用してはならないのであつて,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

都市公園法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて,都市公園の健全な発達を図り,もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「都市公園」とは,次に掲げる公園又は緑地で,その設置者である地方公共団体又は国が当該公園又は緑地に設ける公園施設を含むものとする。
一  都市計画施設(都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第四条第六項 に規定する都市計画施設をいう。次号において同じ。)である公園又は緑地で地方公共団体が設置するもの及び地方公共団体が同条第二項 に規定する都市計画区域内において設置する公園又は緑地
二  次に掲げる公園又は緑地で国が設置するもの
イ 一の都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する都市計画施設である公園又は緑地(ロに該当するものを除く。)
ロ 国家的な記念事業として,又は我が国固有の優れた文化的資産の保存及び活用を図るため閣議の決定を経て設置する都市計画施設である公園又は緑地
2  この法律において「公園施設」とは,都市公園の効用を全うするため当該都市公園に設けられる次の各号に掲げる施設をいう。
一  園路及び広場
二  植栽,花壇,噴水その他の修景施設で政令で定めるもの
三  休憩所,ベンチその他の休養施設で政令で定めるもの
四  ぶらんこ,すべり台,砂場その他の遊戯施設で政令で定めるもの
五  野球場,陸上競技場,水泳プールその他の運動施設で政令で定めるもの
六  植物園,動物園,野外劇場その他の教養施設で政令で定めるもの
七  売店,駐車場,便所その他の便益施設で政令で定めるもの
八  門,さく,管理事務所その他の管理施設で政令で定めるもの
九  前各号に掲げるもののほか,都市公園の効用を全うする施設で政令で定めるもの
3  次の各号に掲げるものは,第一項の規定にかかわらず,都市公園に含まれないものとする。
一  自然公園法 (昭和三十二年法律第百六十一号)の規定により決定された国立公園又は国定公園に関する公園計画に基いて設けられる施設(以下「国立公園又は国定公園の施設」という。)たる公園又は緑地
二  自然公園法 の規定により国立公園又は国定公園の区域内に指定される集団施設地区たる公園又は緑地

(公園管理者以外の者の公園施設の設置等)
第五条  第二条の三の規定により都市公園を管理する者(以下「公園管理者」という。)以外の者は,都市公園に公園施設を設け,又は公園施設を管理しようとするときは,条例(国の設置に係る都市公園にあつては,国土交通省令)で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない。許可を受けた事項を変更しようとするときも,同様とする。
2  公園管理者は,公園管理者以外の者が設ける公園施設が次の各号のいずれかに該当する場合に限り,前項の許可をすることができる。
一  当該公園管理者が自ら設け,又は管理することが不適当又は困難であると認められるもの
二  当該公園管理者以外の者が設け,又は管理することが当該都市公園の機能の増進に資すると認められるもの
3  公園管理者以外の者が公園施設を設け,又は管理する期間は,十年をこえることができない。これを更新するときの期間についても,同様とする。

(都市公園の占用の許可)
第六条  都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは,公園管理者の許可を受けなければならない。
2  前項の許可を受けようとする者は,占用の目的,占用の期間,占用の場所,工作物その他の物件又は施設の構造その他条例(国の設置に係る都市公園にあつては,国土交通省令)で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出しなければならない。
3  第一項の許可を受けた者は,許可を受けた事項を変更しようとするときは,当該事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない。ただし,その変更が,条例(国の設置に係る都市公園にあつては,政令)で定める軽易なものであるときは,この限りでない。
4  第一項の規定による都市公園の占用の期間は,十年をこえない範囲内において政令で定める期間をこえることができない。これを更新するときの期間についても,同様とする。

(許可の条件)
第八条  公園管理者は,第五条第一項又は第六条第一項若しくは第三項の許可に都市公園の管理のため必要な範囲内で条件を付することができる。

(原状回復)
第十条  第五条第一項又は第六条第一項若しくは第三項の許可を受けた者は,公園施設を設け,若しくは管理する期間若しくは都市公園の占用の期間が満了したとき,又は公園施設の設置若しくは管理若しくは都市公園の占用を廃止したときは,ただちに都市公園を原状に回復しなければならない。ただし,原状に回復することが不適当な場合においては,この限りでない。
2  公園管理者は,第五条第一項又は第六条第一項若しくは第三項の許可を受けた者に対して,前項の規定による原状の回復又は原状に回復することが不適当な場合の措置について必要な指示をすることができる。

第三十八条  次の各号のいずれかに該当する者は,六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第五条第一項(第三十三条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して公園施設(予定公園施設を含む。)を設け,又は管理した者
二  第六条第一項又は第三項(第三十三条第四項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定に違反して都市公園(公園予定区域を含む。)を占用した者

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