法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

違法性のない新設工事について

2006-11-02 23:45:14 | Weblog
守れる?知恩院の景観 隣接地に短大新校舎 Sankei Web

 憲法第29条第1項は財産権を保障している。第2項には,「財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。」とあるが,日本は資本主義の国。規制目的で違いはあるにせよ,無制限の制約はあり得ない。
景観条例の多くも,「市長は,この条例の運用に当たっては,関係者の財産権その他の権利を尊重するとともに,公共事業その他の公益との調整に留意しなければならない。」といった規定を置き,財産権に配慮するのが通例である。

 京都市市街地景観整備条例も,上記のような規定こそないが,一定の行為の認定に付すことができる条件は必要な限度で,としている。
また,京都市風致地区条例も,一定の行為の許可に付すことができる条件が不当な義務を課すものであってはならない,としている。

 記事には,「「知恩院は世界遺産に登録される可能性もあり,周辺の環境整備が重要」との専門家の指摘もあり,10月中旬に着手予定だった建設工事は,開始のめどが立っていない。」とある。しかし,これでは,まるで,知恩院を世界遺産にするための保留のように聞こえる。上記2つの条例に照らした場合,この保留,認められるだろうか。ちょっと問題はありそうだ。
いずれにしても,件の短大総合企画室の室長は,「景観には最大限配慮しており,完成した校舎を見ていただければ理解いただけるはず。」と言っている。こちらは,これ以上の計画の修正など,頭にないようだ。一度は建築費増額を伴う市側の修正の要請にも応じているのだから,もっともな話しではある。
短大側は年内の着工を目指しているようだが,さて,どのような形で決着がつくのか・・・。


日本国憲法の関連条文

第二十九条  財産権は,これを侵してはならない。
2  財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
3  私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。

京都市市街地景観整備条例の関連条文

(目的)
第1条 この条例は,本市固有の趣のある市街地の景観が市民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,建築物その他の工作物の位置,規模,形態及び意匠の制限に関する事項その他市街地景観の整備に関し必要な事項を定めることにより,良好な都市環境の形成及び保全に資するとともに,当該景観を将来の世代に継承することを目的とする。

(本市の責務)
第4条 本市は,市街地景観の整備を図るために必要な施策を実施するとともに,市街地景観の整備に関する市民及び事業者の意識の啓発に努めなければならない。

(市民及び事業者の責務)
第5条 市民及び事業者は,市街地景観の整備に関する本市の施策に協力しなければならない。

(計画の認定)
第7条 美観地区内において次の表の左欄に掲げる区分に応じ同表の右欄に掲げる行為をしようとする者は,別に定めるところにより,あらかじめ,その計画が,次条第1項各号に掲げる基準に適合するものであることについて,申請書を提出して市長の認定を受けなければならない。当該認定を受けた建築物の計画を変更して新築等又は模様替え等をしようとする場合も,同様とする。
(表は省略)
2 市長は,市街地の良好な景観を維持するため必要があると認めるときは,その必要の限度において,法第63条第1項又は第66条第3項の規定による認定に条件を付することができる。
3 美観地区内における行為で法第63条第1項又は第66条第3項の規定による認定を要するものについては,第1項の規定は,適用しない。
4 景観法施行規則(以下「省令」という。)第19条第1項第6号に規定する条例で定める図書は,別に定める。

(認定の基準)
第8条 市長は,前条第1項の規定による認定の申請があった場合において,当該申請に係る建築物が次に掲げる基準に適合していると認めるときは,同項の規定による認定をしなければならない。
(1) 第1種地域,第2種地域又は第3種地域においては,高さが次の表の左欄に掲げる美観地区の種別に応じそれぞれ同表の右欄に掲げる高さ以下であること。ただし,公益上必要と認められるもの並びに形態及び意匠が特に優れていると認められるものについては,この限りでない。
(表は省略)
(2) 規模及び形態が,歴史的な建造物及び公共施設の外観並びに周辺の町並みの景観と調和し,かつ,均整の取れたものであること。
(3) 意匠がけばけばしい色彩,過度の装飾その他周辺の町並みの景観に違和感を与えるものでないこと。
(4) 建築設備が公共用空地から容易に見える位置に露出していないこと。
(5) 塔屋(階段室,昇降機塔その他これらに類する建築物の屋上部分をいう。)及び屋上に設ける建築設備は,適切な修景措置が施されており,かつ,位置,規模,形態及び意匠について建築物の本体と均整が取れていること。
2 前項各号に掲げる基準の適用に関し必要な技術的細目は,美観地区の種別及びそれぞれの地域の特性に応じ,別に定める。

(努力義務)
第10条 美観地区内において法第63条第1項又は第66条第3項の規定による認定を要しない建築物の新築等又は模様替え等をしようとする者は,当該行為に係る建築物を当該美観地区に関する都市計画において定められた法第61条第2項第1号に掲げる事項に適合させるよう努めなければならない。

京都市風致地区条例の関連条文

(趣旨)
第1条 この条例は,都市計画法第58条第1項の規定に基づき,本市の風致地区内における建築物の建築,宅地の造成,木竹の伐採その他の行為の規制に関し必要な事項を定めるものとする。

(許可の基準)
第5条 市長は,第2条第1項各号に掲げる行為で次に定める基準に適合しないものについては,同項の許可をしてはならない。
(1) 建築物等の新築
ア 仮設の建築物等
(ア) 当該建築物等の構造が容易に移転し,又は除却することができるものであること。
(イ) 当該建築物等の規模及び形態が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
イ 地下に設ける建築物等
(ア) 当該建築物等の位置及び規模が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ないものであること。
(イ) 当該建築物等に地上に露出する部分があるときは,当該部分の規模,形態及び意匠が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
ウ その他の建築物等
(ア) 建築物にあっては,当該建築物の高さが別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の高さの欄に掲げる高さを超えないこと。ただし,当該建築物の位置,規模,形態及び意匠が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と不調和でなく,かつ,敷地について風致の維持に有効な措置が行われることが確実と認められる場合においては,この限りでない。
(イ) 建築物にあっては,当該建築物の建築面積の敷地面積に対する割合が別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の建ぺい率の欄に掲げる割合を超えないこと。ただし,新築の行われる土地及びその周辺の状況により支障がないと認められる場合においては,この限りでない。
(ウ) 建築物にあっては,当該建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離が別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の建築物の後退距離の欄に掲げる距離以上であること。ただし,新築の行われる土地及びその周辺の状況により支障がないと認められる場合においては,この限りでない。
(エ) 建築物にあっては,別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の緑地の規模の欄に掲げる規模以上の緑地(木竹が保全され,又は適切な植栽が行われる土地で別に定める本数以上の木竹が存するものの区域をいう。以下同じ。)を設けるものであること。ただし,新築が行われる土地及びその周辺の土地の状況により支障がないと認められるとき,その他やむを得ない事情があると認められるときは,この限りでない。
(オ) 工作物にあっては,当該工作物の高さが別に定める高さを超えないこと。
(カ) 建築物にあっては当該建築物の位置,形態及び意匠が,工作物にあっては当該工作物の位置,規模,形態及び意匠が新築の行われる士地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
(2) 建築物等の改築
ア 地下に設ける建築物等
当該建築物等に地上に露出する部分があるときは,改築後の当該部分の規模,形態及び意匠が改築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
イ その他の建築物等
(ア) 建築物にあっては,改築後の建築物の高さが改築前の建築物の高さ(その高さが別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の高さの欄に掲げる高さ以下である場合には,当該高さ)を超えないこと。
(イ) 建築物にあっては,別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の緑地の規模の欄に掲げる規模以上の緑地を設けるものであること。第1号ウ(エ)ただし書の規定は,この場合について準用する。
(ウ) 工作物にあっては,改築後の工作物の高さが別に定める高さを超えないこと。
(エ) 建築物にあっては改築後の建築物の位置,形態及び意匠が,工作物にあっては改築後の工作物の規模,形態及び意匠が改築の行われる士地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
(3) 建築物等の増築
ア 仮設の建築物等
(ア) 当該増築部分の構造が容易に移転し,又は除却することができるものであること。
(イ) 増築後の建築物等の規模及び形態が増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
イ 地下に設ける建築物等
(ア) 増築後の建築物等の位置及び規模が増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ないものであること。
(イ) 当該建築物等に地上に露出する部分があるときは,増築後の当該部分の規模,形態及び意匠が増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
ウ その他の建築物等
(ア) 建築物にあっては,増築後の建築物の高さが別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の高さの欄に掲げる高さを超えないこと。第1号ウ(ア)ただし書の規定は,この場合について準用する。
(イ) 建築物にあっては,増築後の建築物の建築面積の敷地面積に対する割合が別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の建ぺい率の欄に掲げる割合を超えないこと。第1号ウ(イ)ただし書の規定は,この場合について準用する。
(ウ) 建築物にあっては,増築後の建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離が別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の建築物の後退距離の欄に掲げる距離以上であること。第1号ウ(ウ)ただし書の規定は,この場合について準用する。
(エ) 建築物にあっては,別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の緑地の規模の欄に掲げる規模以上の緑地を設けるものであること。第1号ウ(エ)ただし書の規定は,この場合について準用する。
(オ) 工作物にあっては,増築後の工作物の高さが別に定める高さを超えないこと。
(カ) 建築物にあっては増築後の建築物の位置,形態及び意匠が,工作物にあっては増築後の工作物の位置,規模,形態及び意匠が増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
(4) 建築物等の移転
ア 建築物にあっては,移転後の建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離が別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の建築物の後退距離の欄に掲げる距離以上であること。第1号ウ(ウ)ただし書の規定は,この場合について準用する。
イ 移転後の建築物等の位置が移転の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。
(5) 宅地の造成,土地の開墾その他の土地の形質の変更については,次に掲げる要件に該当し,かつ,風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ア 高さが5メートルを超えるのりを生じる切土又は盛土を伴わないこと。ただし,形質の変更が行われる土地及びその周辺の土地の状況により支障がないと認められるときは,この限りでない。
イ 形質の変更が行われる土地ののり面に植栽をする等風致の維持に必要な措置を行うものであること。
ウ 土地の形質の変更(建築物の新築,改築又は増築のために行う宅地の造成を除く。)にあっては,別表の種別の欄に掲げる風致地区の種別に応じ,同表の緑地の規模の欄に掲げる規模以上の緑地を設けるものであること。ただし,形質の変更が行われる土地及びその周辺の土地の状況により支障がないと認められるとき,その他やむを得ない事情があると認められるときは,この限りでない。
エ 土地の開墾その他の土地の形質の変更(宅地の造成を除く。)にあっては,次に掲げる要件に該当すること。
(ア) 地形を著しく変更するものでないこと。
(イ) 土地の形質の変更後の地貌ぼうが変更の行われる土地及びその周辺の土地における風致と著しく不調和とならず,かつ,変更の行われる土地の区域における木竹の生育に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
オ 区域の面積が1ヘクタール以上である森林で風致を維持するために特に重要であるとして,あらかじめ市長が指定したものの伐採を伴わないこと。
カ 第1種地域の区域及び第2種地域の森林である土地の区域における土地の形質の変更にあっては,当該変更の行われる土地の区域の面積が0.5ヘクタール以上であるときは,別に定めるところにより風致保全緑地(自然の木竹等が集団して生育している区域をいう。)を設けるものであること。
(6) 木竹の伐採については,次に掲げる要件のいずれかに該当し,かつ,伐採の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致を損なうおそれが少ないこと。
ア 第2条第1項第1号及び第2号に掲げる行為をするために必要な最少限度の木竹の伐採
イ 森林の択伐
ウ 伐採後の成林が確実であると認められる森林の皆伐(前号エの森林に係るものを除く。)で伐採区域の面積が1ヘクタール以下のもの
エ 森林である土地の区域外における木竹の伐採
(7) 土石の類の採取については,採取の方法が露天掘り(必要な埋め戻しを行い,かつ,植栽その他の措置を行うことにより風致の維持に支障を及ぼさないものを除く。)でなく,かつ,採取の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ないものであること。
(8) 水面の埋立て又は干拓については,水面の埋立て又は干拓後の地貌ぼうが埋立て又は干拓の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和とならないこと。
(9) 建築物等の色彩の変更については,変更後の色彩が変更の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和とならないこと。
(10) 物件の堆たい積については,堆たい積の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
2 第2条第1項の許可には,風致を維持するために必要な条件を付することができる。この場合において,この条件は,当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであってはならない。

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