法律の周辺

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少年事件の実名報道について

2006-09-07 22:21:27 | Weblog
asahi.com 高専生殺害の手配少年,週刊新潮が実名と顔写真掲載

 記事には,「少年法は実名や顔写真,住所など,容疑者である少年本人を推知できるような事実の報道を禁止する規定を置いている。」とある。
正確を期すれば,推知報道が禁じられているのは,「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」である(少年法第61条参照)。
少年法第61条は,少年の健全育成という公益目的並びに特別予防の実効性確保という刑事政策的配慮に根拠を置くと言われる。ただ,旧法と異なり現行法に罰則規定は存しない。

 因みに,少年事件の仮名報道に係る長良川リンチ殺人事件報道訴訟の最判H15.3.14は,報道とプライバシーにつき,次のように判示している。

 プライバシーの侵害については,その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するのであるから(最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁),本件記事が週刊誌に掲載された当時の被上告人の年齢や社会的地位,当該犯罪行為の内容,これらが公表されることによって被上告人のプライバシーに属する情報が伝達される範囲と被上告人が被る具体的被害の程度,本件記事の目的や意義,公表時の社会的状況 本件記事において当該情報を公表する必要性など,その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由に関する諸事情を個別具体的に審理し,これらを比較衡量して判断することが必要である。

判例検索システム 平成15年03月14日 損害賠償請求事件


日本国憲法の関連条文

第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

少年法の関連条文

(記事等の掲載の禁止)
第六十一条  家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

犯罪捜査規範の関連条文

(報道上の注意)
第二百九条  少年事件について,新聞その他の報道機関に発表する場合においても,当該少年の氏名又は住居を告げ,その他その者を推知することができるようなことはしてはならない。

少年警察活動要綱の関連条文

第十三条 少年の事案に関し,新聞その他の報道機関に発表を行うときは,警察本部長若しくは警察署長又はこれらの指定する者が当たるものとする。
2 少年の事案については,少年の氏名若しくはその在学する学校名又はこれらを推知させるような事項は,新聞その他の報道機関に発表しないものとする。被害を受けた少年について発表されることが本人の不利益になると認められる場合においても,同様とする。

United Nations Standard Minimum Rules for the Administration of Juvenile Justice

Protection of privacy

8.1 The juvenile's right to privacy shall be respected at all stages in order to avoid harm being caused to her or him by undue publicity or by the process of labelling.
8.2 In principle, no information that may lead to the identification of a juvenile offender shall be published.

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