武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

038. ローマ遺跡都市メリダ MÉRIDA

2018-11-02 | 旅日記

 ポルトガルからスペインの国境を越えて30分も走るとメリダに着く。
 メリダはイベリア半島では最大規模のローマ遺跡が残っている町だ。

 

01.ローマ劇場[Teatro Romano]

 それにここの博物館が素晴らしい。
 ローマ遺跡から発掘された彫刻、モザイク、フレスコ画、陶器、ガラス器、コイン、アクセサリーなど、展示物の豊富さもさることながら、演出にセンスを感じる。
 建物本体はモダンな造りだが、決してそのローマ遺跡の環境を壊さないでとてもマッチしむしろ展示物を充分に生かしている。

 

02.メリダ博物館内部[Museo de Arte Romano]

 以前に一度来たところだが、もう一度この博物館が観たくて、カセレス、サラマンカへの旅の途中立ち寄ったのだ。

 ついこの間と思っていたら、記録をみると1994年となっているから11年も前になる。
 一度観たものでもまた新鮮な気分で観る事ができた。

 

03.ローマ皇帝の家族の大理石彫像/2世紀

 膨大な展示物は保存状態も良く、改めてローマ帝国の強大さが偲ばれる。
 大理石の彫像を観ていると、ついそこで出会った様な少年の像があったりして、2000年も前でも現代と変わらないのではと錯覚してしまう。
 でもその間には長大な時が流れ、歴史が作られたのだ。
 政治にしろ経済にしろ現代社会とは全く違う形態なのだろうが、果たしてそうなのであろうか?
 この彫像や建造物を見る限りではあまり文化程度は進んでいないのでは、歴史とは何なのか?などと考えてしまう。
 いや、人類全体の歴史からすればローマ時代などはほんの先の時代なのかも知れない。

 

04.大理石彫像頭部/2世紀(博物館の展示品)

 胸に名札をつけた監視人が観覧者の数と同じくらいいて、隅々に2~3人ずつたむろしてヒソヒソとお喋りに夢中だ。
 時たま観覧者がカメラのストロボなどを発光させると注意をするくらいの仕事をしている。
 スペインもポルトガルと同じく公務員天国なのだろう。
 博物館の開館時間は9:30~13:45、17:00~19:15となっている。つまり13時45分から17時までシエスタ(昼寝時間)を取る。たっぷりとシエスタを取った後だから元気が有り余っているのかも知れない。

 

05.円形劇場への通路[Anfiteatro Romano]

 博物館の地下は遺跡がそのままの姿で残されていて、フレスコ画やローマ柱などのある地下遺跡を見学できるようになっている。

 

06.美しいさまざまな色石で作られたモザイク模様(博物館の展示品)

 ローマ街道跡を渡りアーチ造りの地下道を通り抜けるとローマ劇場[Teatro Romano]、と円形劇場[Anfiteatro]に出る。
 ローマ劇場では最近になって時々演劇が催されている。現代の照明を駆使しての演劇だから素晴らしいものだろう。一度観てみたいものだ。
 最近は、エジプトのピラミッドの前でのオペラとか、奈良の東大寺でのロックコンサートとか、古いものとの組み合わせが流行っているようだ。
 円形劇場は古代には闘士とライオンなどの猛獣との戦いが行われたところだ。それを今に蘇らせるのは無理な話だが…。現代の闘牛はその名残だろうか?闘牛でも最近は動物虐待などと批判が出始めて久しい。

 

07.ローマ劇場背面[Teatro Romano]

 以前にここに来たのは1994年の1月5日。日本ではまだ正月気分の抜けない松の内だが、スペインでもクリスマス週間の最後の時期であった。

 寒い時で見学者は殆ど見かけなかったが、今回は9月の観光シーズン中だから、以前に比べると観光客が多い。

 真夏よりは過ごしやすいシーズンだが、街のデジタル温度計は37度を指していた。
 観光客はランニング1枚に水のペットボトルが手放せない。やはり大西洋に面したセトゥーバルなどに比べるとメリダは内陸部だから昼と夜の気温差が大きい。

 

08.ディアナの神殿[Templo de Diana]

 ブティックや商店、カフェなどが建ち並ぶ町の中心市街地にもディアナの神殿跡[Templo de Diana]や柱廊のあるローマ広場[Portico del Foro]、ローマの町門跡[Arco de Trajano]など見所が随所にあり、散歩をしていても楽しい町である。

 メリダの中心にあるスペイン広場には薄暗くなりかけた頃から夜遅くまで、家族連れや若者などがぞくぞくと集り、子供たちは自転車に乗ったり、ローラースケートをしたり、乳母車を押した若夫婦が赤ん坊を老人たちに紹介したり、カフェに座ってビールを飲みながらお喋りを楽しんだりといつまでも人々は絶えない。
 僕たちも町の中心に宿をとったので、町の人たちに混じって夜遅くまでテラスでビールを飲みながら人の往来を楽しんだ。

 

09.スペイン広場[Plaza de Espana]

 2日目は朝から地下遺跡がある古い教会に行く予定だが、開場が10時からなので、その前に水道橋に行く事にした。
 以前にはこれは見逃したところだ。ロ-マ劇場の反対側、ホテルから歩いて10分ほどの所にその水道橋はあった。

 

10.水道橋跡[Acueducto Los Milagros]

 そこは水道橋を中心とした大きな公園になっていて、朝の散歩を楽しんでいる人や、通勤で横切る人、それに芝刈りが行われていて、芝の匂いが気持ちよい。
 水道橋のてっぺんにはコウノトリの巣がいくつもあったが、コウノトリの姿はなく、メルローくらいの大きさの鳥が群れて一風変った声で鳴いていた。メルローとはまた違う鳥なのだろう。芝が刈られた後には十数羽の白鷺も朝食の最中であった。
 水道橋の真下まで行ってみると、やはりその巨大さに今さらながら圧倒されてしまう。
 ポルトガルにも水道橋はあちこちにあって今も使われているところもある。
 ただ水を引くために古代の人はよくこれだけの建造物を造ったものだと感心させられる。
 いや地上の見えているところだけではなく、地下の下水道設備など本当に良く出来ている。

 

11.地下遺跡のあるサンタ・エウラリア教会[Basilica Santa Eulalia]

 地下遺跡が見学できるサンタ・エウラリア教会の地上階ではミサが行われていて、その人々のお祈りが不気味に響き渡る薄暗い地下には、巨大な柱の基礎と墓地、そしてフレスコ画があり照明が当てられていた。
 長居は無用、早々にそれらを見学した後、再び繁華街を横断して、イスラムの城跡、アルカサバ[Alcazaba Arabe]にも行った。
 ここには大量のモザイクが無雑作に雨ざらし、陽ざらしに立てかけ積み重ねてあって、観光資源として実に勿体ないと以前にも思っていたのだが、11年経った今もそのままであった。

 

12.オリーヴの根元に立てかけ積み重ねられたローマモザイク

 庭園に植栽されているオリーヴの木に緑や紫に色づいた立派な実が鈴なりになっていた。そろそろセトゥーバルのメルカド(市場)にも、アゼイト・ノーヴォ(浅漬けオリーヴ)が出回る時期だ。

 

13.実ったオリーヴの木と発掘大理石柱

 アルカサバの城壁に登るとローマ橋が見える。
 ローマ橋の下を流れるグワヤキル川にはびっしりとホテイアオイが繁茂し薄紫の涼しげな花をいっぱいつけていた。

 

14.ローマ橋とグワヤキル川に繁茂した花咲くホテイアオイ

 昼間の温度計は37度を指していてもやはり9月下旬、夕方には秋を感じさせる爽やかな風が遺跡都市メリダにもそよいでいた。
VIT

 

15.豹狩りのモザイク(博物館の展示品)

 

16.戦士のモザイク(博物館の展示品)

(写真撮影・MUZVIT)

 

(この文は2005年10月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)

 

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