武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

106. 端布画布(はぎれキャンバス)

2012-12-31 | 独言(ひとりごと)

 油彩を描くためのキャンバスはいつもひと巻を丸ごと買う。

 ひと巻きは2メートル10センチ幅で長さは10メートル。それを出来るだけ無駄が出ない様に考えながら測って切る。大きさ(号数)の組み合わせによっては無駄が少しは出たりもするから、それを最小限に抑えるべくいろいろ考えて頭を捻る。

 それでも最終的にはどうしようもない端布(はぎれ)が多少は出てくる。最も小さい0号も取れない端布。0号と言へど張りしろなどが必要だから結構な寸法、幅21センチがいる。それより狭い15センチ程度から2センチ程度の帯状の端布がかなり出てくる。それはどうしょうもない。



 どうしようもなくアトリエの隅っこでぼろ布と一緒にたむろしている。ぼろ布は油彩を描く上での必需品だ。おつゆ掛け(油彩専門用語)の伏せに使ったり、筆を拭いたり、ペインティングナイフを拭いたり、絵を拭いたり、手を拭いたり。それは使えなくなったメリヤスのシャツ、タオル、シーツなどが再利用されるわけで僕の場合大量に使う。

 キャンバスの端布では手は拭けない。せいぜい描きかけのキャンバスパネルの下敷きくらいにしか使いようがない。と今までは思っていた。



 以前知り合いになった人がシンガポールに住み、数年前から『パメラン・ポスカド展』という公募展を主催している。約12センチX20センチの主催者規格のビニール袋に入るものなら何でもOKという面白い企画である。

 だいたいポストカードサイズのものを入れる様に考えられている。但し腐るものや他人に不快を与えるものは不可。という出品要項があるものの、何でも良い。

平面用のビニール袋なので立体は無理なのかもしれないが、要項からいけば立体もOKだ。規格のビニール袋に入ればの話だが…。

 ネットで出品作品を観てみるとなかなか個性的でユニークな面白いものが多い。一人10点までで、500人が定員で締め切られるそうで、いつも出品者は定員いっぱいの500人が参加し大盛況の様だ。
http://www.facebook.com/media/set/?set=a.448796558505317.121882.407769585941348&type=1
 第1回から僕にも誘いがあったが、あいにく帰国と重なったり、準備に要する時間が足りなかったりで、今まで出品は出来なかった。

 そうして第4回目の2012年に初めて参加出来る事になった。僕は油彩画家なのでやはり油彩を出したい。油彩の出品は案外と少ないそうだ。



 油彩は乾きなどを考えると時間がかかる。ある程度は前もって出来上がって乾いていないと出品は出来ない。2012年に出品するにあたって、随分前から準備をしていた。
 木枠に張らないで、キャンバスに油彩を描く訳である。サイズはビニール袋に入る大きさとして11,8センチX17センチとした。それでビニール袋に丁度一杯である。
 油彩はベニヤ板などにも描くことは出来るが、僕の場合、ここで端布画布が有効に使えることになった。

 アトリエにたむろしていた端布画布の出番となったのだ。描いてみると、木枠に張られていないから描きづらいことは描きづらい。以前に比べて手や服を油絵の具で汚すことが多くなった。
 でもこれが案外と面白い。100号などの大きい絵を描く合間にそんな端布画布に描く。端布画布に描く合間に100号を描く。これが気分転換にもなり、僕にとっては面白い。



 そしてその端っこが真っ直ぐではなく、描き重ねていくうちに油彩により麻布の微妙な歪みが生じてきたりしてそれがまた気に入っている。
 今年2013年もパメラン・ポスカド展には出すつもりで今描いている。
 パメラン・ポスカド展はビニール袋に入れてぶら下げての展示だが、それに出品だけではなく、それなりの額縁に入れて、僕の個展に混ぜても良いだろうし、それだけで個展をしても面白いかも知れない。



 僕は以前からポルトガルに住んでの思いを文章にしてきた。そのタイトルを『端布画布(はぎれキャンバス)』としている。

 絵を描く合間のたわごと、何の役にも立たないもの、と言う意味を込めている。そしてその役に立たない事柄がもう一つ増えた、ということになるのかも知れないが、端布画布(本当のキャンバスのはぎれ)同様、或いはその内、役に立つ日がやって来るのかも知れない。VIT

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コメント (2)
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