武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

107. 礼状と宿題

2013-04-30 | 独言(ひとりごと)

 その後皆様如何お過ごしですか。

 展覧会の会期中に満開だった桜もすっかり終わり、若葉萌える季節に移り、御堂筋のイチョウも可愛らしい小さな葉からみるみる大きく開く様をつぶさに観察することもできました。大阪に生れ育ったにも拘らずこれは初めての経験でした。(遺作展では学生の頃にはなかった「田辺駅」か「文の里駅」まで歩き、画廊最寄りの「淀屋橋駅」まで地下鉄で通いました<日本の交通費のなんと高額なことか!>が、NACKシニア展では毎日東住吉の実家から兄嫁のおんぼろママチャリを駆って大阪城公園を横切ったり、御堂筋を通ったり、又、通天閣の下をくぐったりして浪速の街を、サイクリングでの春を楽しみながら通いました。)

 そして4月24日宮崎を発ち羽田、パリを経由して25日にセトゥーバルの我が家に無事に戻って来ました。(4月25日はポルトガルの祝日)

 展覧会ではご多忙中、ご遠方にも拘わりませず、又、あいにくの雨という日もありましたが、そんな中、父「武本憲太郎遺作展」及び「第2回NACKシニア7人展」(於・マサゴ画廊)に御来場、御高覧賜りましてありがとうございました。又、マサゴ画廊スタッフの方々の心温まる行き届いたご配慮にも感謝申し上げたいと思います。

 お陰様で双方とも盛況裡に終えることができ、わけても、遺作展に於いては本当に催して良かったなと兄妹一同喜んでおります。

 準備期間から会期中まで、そして皆様との交流の中で、又、父の新たな発見をできた様な気もします。私たち兄妹にとっては心の中でいつまでも持ち続けられる宝物を得た様な気持ちにもなっています。本当にありがとうございました。

 今年はポルトガルも日本も同じ様な異常気象らしく昨日は空に黄砂がかかりどんより暑く海水浴にでも行きたい気持ちだったのが、(お隣はご家族で海水浴でした。)今日は一変して、冷たい風が吹き、慌ててオイルヒーターのスウィッチを入れた程冷え込みました。まもなく5月だというのに。日本でも雪が降ったり、2ヶ月も早く真夏日が訪れたり、まったくこのところの天候不順には予断を許しません。どうぞ皆様にはご自愛いただき、今後いっそう、ご健勝であられますことをお祈り申し上げます。
2013年4月27日 武本比登志 



宿題

 NACKシニア展の会期中、メンバーの吉田定一さんから「檀一雄が暮らしたサンタ・クルスのことを書け」と頼まれた。僕はその時、生返事をしたが、今になってそれが大きく頭にのしかかっている。

 吉田定一さんは画家でもあるが、児童文学の第一人者でもあり、現在「伽羅Kyara」という季刊誌を発行されている主宰者である。そしてそれの原稿だ。

 吉田定一さんは檀一雄とは生前に交流があったらしい。

 檀一雄は1970年から71年の約1年半をポルトガルの寒村、サンタ・クルスで暮らし、代表作「火宅の人」をその地で書き続けたと言われている。

 僕はサンタ・クルスには3~4度は行っていると思うがそこで泊ったことはない。いつも中継地である。

 檀一雄が住んでいた建物はそのままの姿で残っている。
 僕がはじめて訪れた頃には石碑はなかった。それが数年して僕も知り合いでもある辻司先生(元大阪芸大教授)などが発起人となって、石碑が建てられた。
 サンタ・クルスの一等地、海の見晴らせる広場に日本語で彫られた大きな石碑である。
 建てられてからも何度かサンタ・クルスには訪れている。
 檀一雄がこの地に住み始めた1970年は僕たちにとってもストックホルムに住み始めた年だ。
 僕は檀一雄の本はあまり読んではいない。「火宅の人」も読んでいない。読んだのは「リツ子・その死」と「美味放浪記」の2冊だけだと思うが随分と前に読んだ本だ。

 吉田定一さんから文章を頼まれた時にせめて「火宅の人」の文庫本だけでも仕入れて持ってくれば良かったと後悔している。
 でも読んだからと言ってそれが書ける訳がないことは判っている。画家の足跡を訪ねる旅ならなんとかなるかも知れないが、文学者はどうも勝手が違う。

 今、以前に読んだ「美味放浪記」をぱらぱらとめくってみた。宮崎の項で知っているお店の名前が複数見つかった。先ずは「三角茶屋」。ここでは帰国するたびに何度かうどんや蕎麦を食べる。僕はいつもゴボウ蕎麦かゴボウうどんだ。それと「五郎」である。最近はご無沙汰であるが以前には4回ほどここで食事をしたことがある。いつも誰か友人か知人と一緒だった。
 こんなことなら久しぶりにポルトガルに戻る前にでも一度行っておけば良かった。

 いずれにしても、檀一雄のサンタ・クルスを書く自信は全くない。今までもサンタ・クルスは1枚の絵にもなっていない。
 でもとりあえず近いうちにサンタ・クルスに出かけて1~2泊してみても悪くはない。VIT


今後の個展
武本比登志油彩作品展
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2013年12月11日(水)~17日(火)
最終日は午後4時閉場
高島屋大阪店6階美術画廊/B
〒542-0076大阪市中央区難波5-1-5
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2014年1月29日(水)~2月4日(火)
最終日は午後4時閉場
高島屋岡山店7階美術画廊
〒700-8520  岡山市北区本町6-40  ℡086-232-1111
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2014年2月12日(水)~18日(火)
最終日は午後4時閉場
高島屋米子店4階美術サロン
〒683-0812  米子市角盤町 1-30  ℡0859-22-1111

 

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コメント
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