武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

209. なるほどナッツ黄金比率 Entendo, a proporção áurea da noz

2023-10-01 | 独言(ひとりごと)

 朝食をとり一仕事を終えたところでコーヒータイムとなる。

 コーヒータイムにはたっぷりのナッツが付く。

セトゥーバル半島先端エスピシェル岬に自生するピスタチオの野生種

 アーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、カシューナッツ、それにピーナッツ。たまにはピスタチオがあったり、ヒマワリの種があったり、柿の種があったりする。いや柿の種はナッツではない。おかきだ。それに必ず一片の料理用チョコレートを付ける。チョコレートはカカオナッツが原料だがナッツとは言はない。

 コーヒーはポルトガル式のデミタスではなく日本式にドリップで大きなコーヒーカップにたっぷりと入れ、海などを眺めながらゆっくりと味わう。砂糖もミルクも入れないでブラックだ。ブラックなので、お酒ではないが少しのあてがあれば幸せな気分になる。

 今年の初め宮崎に一時帰国した時に神戸からストックホルム時代の古い友人が遊びに来てくれた。自宅に立ち寄ってくれた時にコーヒーでも出そうと思って『ドン・キホーテ』でナッツでも用意しておこうと思って買い物に行った。すぐ通路の目立つところにミックスナッツがあったのでそれを買った。でも友人夫妻は僕たちの金婚式祝いにケーキを買ってきてくれたので、ナッツは開封せずじまいになってしまった。それをそのままポルトガルまで持参した。そして食卓にその袋がある。買う時は気が付かなかったのだがコピーが凝っている。

 『お酒に合うナッツの要望が多かったので ナッツを愛しすぎた担当者が 自慢の『黄金比率ナッツ』をベースに 複数の胡椒をミックスし味付け 濃厚なのに手が止まらなくなる自信作 ド 情熱価格 黒胡椒ミックスナッツエクストラEX』という長たらしいコピーだがいつもついつい全文を読んでしまう。

 僕はナッツ類の中ではカシューナッツがいい。

 カシューナッツと言えば昔、南米を旅行中にイギリス人で友人になった彼がエクアドールあたりだったか?盛んに「カシューナッツ、カシューナッツ」と騒いでいたのを思い出す。その辺りがカシューナッツの産地だったのだろう。原産地なのかもしれない。やはりいつも食べている食品を原産地の物との違いを味わいたのだろう。僕たちもエクアドールのカシューナッツを食べてみたがいつものと何ら変わりはなかった様に思う。

 アーモンドの原産地はトルコあたりと聞くが昔から南ヨーロッパにもあった。

 ゴッホがアルルで描いた『巴旦杏』は名画のひとつだが、弟テオの子供、それも名親のゴッホの名前ヴァンサンと名付けられた赤ん坊の寝室にその『巴旦杏』の絵はずっと飾られていたと言う。

 巴旦杏はアーモンドのことである。アーモンドは住んでいるセトゥーバルの郊外の沿道などでも毎年1月には花を楽しませてくれる。まるで桜の花にそっくりで春の到来を告げる花でもある。露店市では殻付きのアーモンドなども売られている。

 ポルトガルではアーモンドをそのままではなく粉にしてクッキーを焼いたりもする。贅沢なクッキーだ。

 ピスタチオの原種は我がセトゥーバル半島の先端エスピシェル岬に沢山自生している。食べるには少し小さすぎるが、それでも松の実くらいにはなるのだろう。野鳥の餌だ。

 クルミもトルコあたりが原産と聞くがヨーロッパには古くから栽培がされているし、野生種もあるようにも思う。メイエ村のイクオさん宅の庭にはクルミの巨木があった。庭で取れた小さなクルミをワインの充てに出して下さったが味は濃厚で旨かった。

 クルミも露店市では殻のまま売られている。クルミを殻から開けるにもアーモンドを殻から開けるにもくるみ割りが必要だ。

露店市で売られているアーモンドとクルミ

 我が家でもくるみ割りの道具は幾つかがある。

 くるみ割りと言えば、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』がすぐに頭をよぎる。昔、僕が未だ子供の頃、父はいち早くステレオを買った。同時に何枚かのクラシックレコードを揃えたのだがベートーベンの『運命』と共にチャイコフスキーの『くるみ割り人形』と『白鳥の湖』もあった。

 クルミはロシアにもあったのだろうか?とも思ったがチャイコフスキーの『くるみ割り人形』の原作はドイツの童話『くるみ割り人形とネズミの王様』だそうである。

 ナッツで一番ポピューラーなのはやはりピーナッツであろう。ピーナッツは木の実ではなく土の中に出来るとのことであるが僕はこの歳になっても栽培されている姿を未だ見たことがない。露店市やスーパーで売られている、殻に入ったピーナッツ或いは殻から出されたピーナッツしか知らない。

 昔、宮崎でお店をしていた時にはコーヒーに殻付きのピーナッツをつけていた。ウエイトレスからは「掃除が大変」と言われていた。やはりあちこちと散らかるのだ。

 映画『エリン・ブロコビッチ』でジュリア・ロバーツが署名を集め回っている先のバーに立ち寄った時、そこで飲んでいた何となく胡散臭いお客が重要な証言を話し始めた。もう夜で早く帰宅して子供たちに夕食を与えないといけない時間だし、本人もお腹が空いてくるし、でも重要な証言を聞き逃すわけにはいかない。夕食代わりに殻付きのピーナッツをむさぼり食べながら証言をメモするジュリア・ロバーツのその殻を割る指先は印象深い。これだけでもアカデミー賞級である。

 ナッツとは言えないのかもしれないが乾燥したグリーンピースがある。

 子供の頃、家族で海水浴によく行った。明治生まれで村上水軍の血を引く父は海水パンツの内ポケットに、その硬いグリーンピースを数粒忍ばせていた。父に言わせると「遭難した時の非常食になる」そうである。海水で適度にふやけて柔らかくなり、塩気が付いて旨くなる。万が一遭難しても非常食があれば落ち着いて行動できる。と言っていたが海水浴から上がってそのふやけた青豆で一杯やるのが楽しみの一つだったのだろう。武本比登志

 

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