武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

192. 冬の眠れない夜に Em uma noite sem dormir no inverno

2022-01-01 | 独言(ひとりごと)

 明けましておめでとうございます。

2022年1月1日、7:55 ベランダから撮影の初日の出とセトゥーバル港

 足がイライラして眠れない。明らかに運動不足だ。

 コーヒーは朝の9時に一杯飲むだけ。お茶も朝一番に1杯だけ。どちらも極濃いのを飲むが朝だから夜の就寝時までの影響はない。カフェインのせいではない。カフェインで眠れない時とは明らかに症状は違う。

 コロナ禍で何処へも出掛けない。家に居て隠遁生活がもう2年も続いている。家に居てはなかなか身体が動かせない。明らかに運動不足だ。出来るだけこまめに動くようには心掛けてはいるが、家の中だからせいぜい動いてもたかが知れている。

 昼間窓際で本を読みだしては「あっ、けん玉をしよう」などと思う。けん玉は案外と運動になる。南極の越冬隊員がブリザードで屋外活動が出来ない時など昭和基地で運動不足解消のため、けん玉をするそうである。でも僕は中皿100回、小皿100回程度で飽きてしまう。もう少し巧くなって止め剣が連続で出来る様にでもなれば今よりは続くのかもしれない。

 絵を描くことは僕にとっては仕事だ。毎日必ず絵筆を持つ。絵を描くことも運動になる。中川一政先生は「絵を描くことは相撲のぶつかり稽古と同じだ」と言われたくらいだ。中川一政先生は大相撲の横綱審議委員をしておられたくらいだから、間違いがない。

 その通りで冷蔵庫の中の様な北向きの凍え切ったアトリエでも絵を描き始めると、身体がぽかぽかと温かくなってくる。でも絵もそれ程長時間は描けない。描くのは毎日ほんの少しだけ。描きかけの絵を眺めている時間の方が長い。

 ついついパソコンの前に座ってしまったり、陽当たりの良い窓辺で読書と言うことになり座る時間が多くなる。3度の食事ももちろん座って食べる。

 夕食後、夕方のニュース情報番組が終わったら映画のチャンネルに切り替える。映画を観ながらベッドの上でストレッチ体操などをしてみる。足のふくらはぎが伸びて気持ちが良い。1本を観終わったところで21:00頃となり風呂に入る。

 風呂から上がるとベッドの中に入って2本目の映画を観る。その映画が面白い映画なら良いのだが、面白くない、観なくてもよかったと思う映画の方が多い。

 映画には日本語の字幕スーパーはない。ポルトガル語の字幕スーパーだ。アメリカやイギリスの映画なら英語のまま、フランス映画ならフランス語のままで、それにポルトガル語の字幕スーパーが入る。どうしても細かいところまでは判らない。翌日には検索をして内容を確かめる、が観ている時には訳が判らないことが多い。

 風呂から上がって身体がぽかぽか温かいので睡魔が襲ってくる。時々は寝てしまう。そのまま朝まで眠れてしまえば良いのだがそうはいかない。映画の終わりと同時に目が覚める。23:00頃だ。

 そうなると今度は眠れない。眠くて仕方がないのに眠れない。足がイライラして眠れない。

 夏なら寒くはないのでパソコンを開いたりしていろいろとできる。眠らなくても一向に構わない。パソコンで何かをし始めるとその内眠くなってベッドに入るとすぐに寝てしまう。

 でも冬の夜は寒い。眠くて仕方がないのに眠れないのは辛い。ベッドに横になっていても足がイライラしてそこら中を歩き回りたい気持ちだ。老人ホームなどで夜中の徘徊が問題になるが、あの気持ちが判る。

 寒い部屋を歩き回って風邪を引いても大変だ。

 以前には帰国時に鹿児島の温泉宿にたびたび出かけた。大浴場前のホールにマッサージ機があったりする。肩や腰のマッサージだけではなくふくらはぎのマッサージをしてくれる機械もあった。あれは気持ちが良い。それに足裏マッサージ機。そんなものが自宅にあればなと思う。でも何れもモーターで作動する。夜中ではモーターの低周波音が気になるかも知れない。第1、ポルトガルではそんな日本のマッサージ機など売られていない。

 MUZは寝られない時にはウイスキーかブランデーを1杯引っかけるそうである。夢心地の中でMUZが瓶をカチャカチャ選定している音が聞こえる。でも僕には強いアルコールは駄目でますます寝られなくなってしまう。

 ある映画の中でアンソニー・ホプキンスが寝る前にホットミルクを飲んでいる場面があった。ガウンを羽織ってベッドの周りを歩きながらマグカップに入ったホットミルクを飲んでいる。コニャックが似合いそうな俳優だが何故かホットミルクだ。

 寝る前にホットミルクなど消化に良くはないのでは、と思うが一度試してみようと思った。

 赤ん坊は母親のおっぱいにぶら下がったまま寝てしまっていたりする。或いは哺乳瓶を手に持ち、シリコンゴムの乳首をくわえたまま寝てしまっている。

 ブラッド・ピットのベンジャミン・バトンが、老人で生まれて赤ん坊で死んでゆく話ではないが、赤ん坊で生まれてその人生を全うし赤ん坊でその一生を終える。何か理想の様な気がしないでもない。

 絵も同じで赤ん坊まではいかなくても、小さい子供の様な無心な気持ちで絵を描きたいと思う。

 そしてこれはいけるかもしれないと僕は直感した。

 僕はマグカップのホットミルクに大匙一杯のココアを入れる。真夜中に冬の星座を眺めながらマグカップ1杯の熱いココアを飲む。これが案外といける。

 試しに最初にやってみたのがもう1年も前になるだろうか?

 たっぷりのココアを飲み干して、もう一度歯を磨き、ベッドに入る。

 これが不思議に今のところ功を奏して、いつの間にか眠ってしまっている。

 僕にとっては90%程の効果だ。

 これが効いているのか、効いていないのか、関係があるのか、関係がないのか、実は判らないのだが、それ以来、足イラで眠れない夜、週に1~2度はマグカップにたっぷりの熱いココアを真夜中に飲むことが習慣になってしまっている。

 

 2021年の夏の終わりころにはもうそろそろ終息かな、と思わせましたが、12月頃から感染者が急増し、規制が再び強化されつつあります。ワクチン接種も2回目3回目を済ませている筈なのに、検疫所に長い行列です。このコロナ禍、いつまで続くのでしょう。

 カナリアの火山噴火は先日、終息宣言が出されました。今年は早い段階でコロナも終息してほしいものです。

 皆様にとって、そして私たちにとっても2022年が良い年になりますように。武本比登志

 

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