武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

116. 水洗トイレの水タンク Autoclismo

2014-06-28 | 独言(ひとりごと)

 先月は僕の兄と妹がポルトガルまでやって来た。初めてのことだ。

 2週間の日程である。パック旅行ではなく自由旅行であるけれども、折角ポルトガルまで来るのだから一応見るべきところは押えておきたい。と思ってスケジュールをたてた。

 

セトゥーバル郊外の野原に咲く野生のラベンダー。香りをお届けできないのが残念です。

 

 そして僕には思惑があった。

 我が家のトイレのタンクはもう随分以前から、水漏れがして調子が悪い。風呂の水道蛇口も古くて具合が悪く、出来れば取り替えたい。

 でも実は、僕は水道工事と電気工事がからっきし駄目で、自信がない。直すつもりが、逆に壊してしまいかねない。収拾がつかなくなる恐れもある。水道工事をやろうものなら、たちまちそこらあたり洪水になりかねないし、電気工事なら感電死がおちだ。

 かといって、業者に頼むのも躊躇してしまう。

 以前、郵便受けにチラシが入っていて、その人に電気工事を頼んだことがある。フランシスコという名前だった。サッカーが好きでヴィットリア・セトゥーバルの熱心なサポーターで、チラシにもヴィットリアと名乗っていた程だ。最初は結構思惑通りにやってくれて、いい人が見つかったと喜んでいた。ところが何度か頼む内、値段をボル様になったし、仕事も雑になってきていたのでそれ以来頼まなくなった。そんなことがあってからは業者を探すのも億劫になっている。

 その点、兄なら安心だ。兄は僕とは正反対の性格で、水道、電気工事が得意分野である。それでこの際、旅行の合間を縫って、取替え工事をしてもらおうという思惑である。でも旅行スケジュールを組んでみるとどこにもそんなゆとりは生まれそうにない。

 

 関空からフランクフルト経由でリスボンに到着は真夜中である。到着して次の日は疲れているだろうからと、先ずはメルカド見学とアラビダ山ドライブだけというゆったりとした計画をたてていた。その次の日はちょうど日曜日だったので、パルメラの城に立ち寄ってからピニャル・ノヴォの露店市に行くことにした。それもゆったりである。3日目以降は見るものを見なければならないので結構ハードスケジュールになる筈であった。

 

 最初の日、メルカドで買物を少ししたので、アラビダ山に行く前に家に立ち寄り、買物を冷蔵庫に入れることになった。その時に例のトイレと風呂を兄に見てもらった。「まあ、やったことはないけれど何とかなるやろ」という感じであった。

 

 アラビダ山ドライブの後、セトゥーバルのサン・フィリッペ城も見学したところで、兄のデジカメのメモリーがなくなったとのことで、量販電気店に行き新しいメモリーを買うことにした。そしてその帰り、ついでに日曜大工量販店にも立ち寄り、トイレのタンクと水道蛇口を見てみようということになった。

 トイレのタンクは何とちょうど「広告の品!」か何かで通路に山積みされていて、ものすごく安かった。こんな特殊な物を果たして広告の品とするものだろうか?と疑問に思うが、神様が僕の味方をしてくれたとしか思いようがない。

 

 日本ではこんなものは永久使用物で、自分で取り替えることなどはあまり考えないのだと思う。便座でもそうだ。日本では僕は取り替えたことはないが、ポルトガルではもう既に2度ばかり取り替えた。スーパーにも便座が売られているし、売り場にはデザインがいろいろ揃っていて、カーテンの色柄を選ぶように自分の好みで便座を取り替えたりもする。

 山積みされたトイレタンクの中から、とりあえず一つを買って帰って取り替えてもらうことになった。実はトイレが二箇所あって、どちらも同じ様に具合が悪いのだ。これが巧くいけば2箇所とも取り替えてもらえればありがたい。

 

 トイレタンクに取り掛かる前に先ず簡単なところからと、手洗いの蛇口のパッキンを取り替えることになった。たかがパッキンだが、それが難航した。蛇口がこびり付いて外れないのだ。まるで溶接でもしてあるのではと思った程だ。これはどうなることかと先行きが心配になったが、難航の末、何とか蛇口も外れて巧くいった。

 そして肝心のトイレタンクである。兄は初めての経験らしく、箱書きを眺めていたが、すぐに判ったらしく、すらすらとやりはじめた。日本語ではなく、ポルトガル語の箱書きであるが、幸いに図が描かれていたので判ったらしい。「しかし案外安いもんやな~」と感心もしていた。しかも5年の保障期間付きである。

 長めに取ってあるパイプをサイズに合わせて切り落とし、はめ込む作業で、これは難なく出来てしまった。僕なら切り落とすなどとは思いつかない。その時点でお手上げだ。

 

 風呂の蛇口も日本とは規格も異なるし勝手が違うのではと思ったが、案外とすんなりと出来てしまった。MUZと妹でお茶漬けの支度をしている間に全て出来てしまっていた。案ずるより生むが易しである。

 

 そして次の日、計画通りパルメラの城とピニャル・ノヴォの露店市に行って、その帰り、再び日曜大工量販店に立ち寄り、昨日と同じトイレのタンクをもう一つ買った。山積みは昨日と同じ形で通路に山積みで、昨日のその後に売れている様子はなかった。昨日だけのタイムサービスでなくて良かった。

 これの取り付けは左右が反対であるが、昨日の経験もあるし、楽勝である。

 

 それから1ヶ月になるが、毎日、トイレに入っては真っ白でぴかぴかのトイレタンクを眺めては感心し、風呂の湯船に浸かって真新しい蛇口を眺めては悦に入っている。

 そうして我が家の水周りは今のところ順調に推移している。

 かに見えたが、実は先日から冷蔵庫の水漏れが発生している。が、今のところはしらんぷりを決めている。

 床がタイル張りだから、1日に2度ほどふき取ればそれで済む。

 長く住んでいるとなにやかやとガタが来る。

 

 パリに住む知人が以前言っていたが「ヨーロッパの電化製品は10年も持てば良い方ですよ。」

 冷蔵庫を買い替えて10年はとっくに過ぎている。でも食料は良く冷えているし、未だ買い替えようとは思わない。

 

 トイレタンクがあれほど安価なものならばたびたびは取り替えても良いのかも知れない。

 でも今後、保障期間の5年が過ぎてトイレタンクに老朽化が来て同じ様な故障が起きたとしても、果たして自分で取替えが出来るだろうか。今から心細い。

 自分の身体のガタだけはなるべく最小に、出来れば来ないように願いたい。VIT

 

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