武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

033. オーヴェール・シュル・オワーズ AUVER SUR OISE

2018-10-27 | 旅日記

 ポルトガルに住んでいても、年に何回かはパリに行く。
 いつも用事だけを済ませてとんぼ返りなのだが、一日、時間が出来たらパリ郊外のオーヴェールに行ってみたいと前々から思っていた。
 そしてそれが今回実現した。

 行ってみると案外簡単に行ける。
 しかもインフォメーションでは日本語の地図まで用意してあるのには驚いた。
 よほど日本人観光客が多いのだろう。

 オーヴェールは僕にとって、佐伯祐三の<村役場>や<オーヴェール・シュル・オワーズ風景>などが印象的で、その場所を見たいと思って行ってみたのだが、それよりもゴッホが最晩年を過ごした村ということで観光地になっているのだ。

01.「オーヴェール・シュル・オワーズ風景」1924年/佐伯祐三

 サンレミの精神病院から弟テオの紹介でガシェ医師の住むオーヴェールに移り住んだゴッホは、ピストル自殺するまでの70日間になんと70点の油絵と30枚のデッサン等をものにしている。
 その中には<オーヴェールの教会><医師ガシェの肖像><荒れ模様の空にカラスの群れ飛ぶ麦畑>など力強い代表作も数多く含まれている。

02.「ガシェ医師の肖像」1890年/ゴッホ

03.「オーヴェールの教会」1890年/ゴッホ

 佐伯祐三が描いた<村役場>やゴッホが下宿していたラヴウ亭、そしてヴラマンクが描いた<オーヴェール駅>に面したメインストリートこそ今は車がひっきりなしに通っているが、一歩中に入るとゴッホが住んでいた当時そのままに静かなフランスの田舎の村のたたずまいがある。
 医師ガシェの家をもう少し先まで歩くとセザンヌの<首吊りの家>の場所に出る。

04.「首吊りの家」1873年/セザンヌ/オルセー美術館蔵

 ゴッホがイーゼルを立てたと思われるところにゴッホの作品の印刷物が掲示されていて、草木などはかなり繁ってはいるけれども、作品とそっくりそのままの風景がまだまだ残っているのが嬉しい。

 せっかくだから、ゴッホのお墓参り、と思って教会の坂道を登り始めた頃、それまで何とか保っていた空からぽつりぽつりと冷たい雨が降りだし、やがてまっ黒い雲と横なぐりの雨になってしまった。

05.「雨のオーヴェール」1890年/ゴッホ

 それでも刈り取られた後の麦畑には小ガラスが群れ飛び、ゴッホとテオの墓に着いた時にはもうぬれ鼠で、なにかゴッホのお墓参りに最もふさわしい様な気もして感激してしまった。

VIT

(1992年10月31日発行の不定期紙「ポルトガルのえんとつNO.38」に書いた文を、2005年8月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に転載したものですが、2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)

 

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