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角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

香納諒一 「贄の夜会」

2011-10-21 15:01:56 | ミステリー
宮部みゆきの「模倣犯」ほどではないですが、結構長めの小説です。
が、その面白さといったら、他の追随を許さない極上のサスペンスというか、第一級のミステリーです。

最初の項を読み出したら、もう止まりません!かえって、ページが分厚いことに感謝したくなる面白さです。
何がいいって、無駄な描写は一切なく、ストーリーはスピーディーに進みます。



小生、香納先生の小説はほぼ全て読んでいますが、この先生は、短編が得意でまたそれが、どれも面白い。

短編集「刹那の街角」「タンポポの雪が降ってた 」「ガリレオの小部屋」などはたまりません。
で、長編では「幻の女」という傑作がありますが、それを上回る最高傑作だと断言できます。

 ①まず、ミステリーの定石である「フーダニット(犯人はだれか)」ものが物語の基本になっているのですが、これは主役である、警視庁捜査一課強行班の大河内茂雄が犯人を追い、別居中の妻とキャリアである義兄がからんで警察小説としても楽しめます。

 ②そして犯人に妻を殺された、悲しい殺し屋、目取とその相棒の古谷の2丁拳銃の活躍とその哀愁漂う会話(セリフ)はチョウ・ユンファも真っ青なカッコ良さでハードボイルド小説としても楽しめます。

 ③さらには少年のころ猟奇殺人(あの、大阪のサカキバラ事件のような)を犯した弁護士、中条謙一のサイコサスペンスが加わります。

この、三つ巴の線がラストのは見事に絡み合い、あっという犯人とアクションを経て、ジーンと泣かせるラストを迎えます。

この、秋の週末にまとまった時間がとれる人に一気に読んでもらいたい小説です。



宮部みゆき 「模倣犯」 やっと読みました

2011-10-18 12:02:22 | ミステリー
今更という感じですが、やっと読みました。正直言うと、この作家先生は苦手なイメージあったので、今まで読んだこと無かったんですよね。で、知り合いから薦められて挑戦してみたんですけど・・・・長い!。読み応えがあって面白いけど、ともかく長いです。下記の写真の通り分厚いハードカバー(上・下巻3,511枚)、文庫本だと5冊になるそうです。小生、同じ本を長時間読んだのは、池波正太郎先生の「真田太平記全巻」を読んで以来のことです。
この小説は単にミステリーというだけでなく、さまざまな登場人物の群像物語です。その一人一人が実に丁寧に描かれているんですけど、それを重厚なドラマととらえるか、クド過ぎるととらえるかで評価は分かれると思います。

自分はちょっとクドイ気がします。正直。例えばですが

・カズがヒロミを犯人だと疑いだして都民生活相談センターに電話するあたりの描写。わざわざ1節を割いて、相談センターの記録として描かれているんですけど、なんかよくわからない描写です。後半で犯人達のボイスチェンジャーの音紋解析に活かされる伏線としてかと思ったんですけど何もない。

・物語後半、雑誌の対談記事(俳優:高橋健二、声優:川野レイ子)が突然描写される。それもかなり長い上に、物語への必然性が全くない。

・脇役まで細かく描かれるのですが、一例をあげると、途中犯人達の毒牙にかかる真面目サラリーマン木村(ホントにチョイ役)の描き方も、何十年前に結婚した奥さんとの初デートの様子も(合コンから二人きりになるまで)、その後の生き方も、会社での働きっぷり、家庭での様子、これでもか、これでもか、これでもかという位細かく描かれるわけです。

そして、この事件を捜査する捜査本部ですが、後方支援の武上刑事たちの目線で描かれますが、前線の刑事たちはこれだと無能すぎやしないでしょうか。

例えば、事件の犯人の濡れ衣を自殺に見せかけて、カズに着せるため、真犯人のピースはカズに麻酔薬を注射して眠らせるのですが、ヒロミはこう言っています。

(物語より)「栗林浩美は、カズの首筋の注射針が刺さったところが鬱血し、十円玉ぐらいの痣になっていることに気がついた。「自殺」したカズの死体を調べる検死官は、きっとこの痣に気づくだろう。自分で自分のこんな場所に注射を打つなんて無理だ、これは第三者の手で打たれたものだと判断するだろう。
 逃げられない。ピースの計画は、カズの言うとおりだ。ちょっと離れたところから見てみると穴だらけだ。(中略)今まで捕まらなかったのは、単に時間が足りなかったから。警察がピースの穴だらけの計画からだらだら流れ出た証拠を集めて分析するのに、もう少し時間が必要だったから、ただそれだけのこと。」

ところが、検死官が気が付かなかったのか、それとも、検死官の報告書を前線の刑事が読まなかったのか、この決定的な証拠を捜査本部は見落とし、あろうことか、“穴だらけの計画”にまんまとのり、ほぼカズを犯人と断定してしますのです。ってそんなこと普通ありますか。

さらに、その後、犯人たちが連絡をとりあっている携帯電話という、もう動かぬ物的証拠も出てくる(子供が拾っていた)、さらにさらに、ピースが真犯人であること知っている(犯人の声を聞いていた)小樽の女性など登場するのですが、何故か警察は逮捕せず、カズの妹を自殺させてしまう失態を犯すのです。

で、なんとほとんど完璧な犯人像に近づいたのは、“建築屋”というあだ名の元警察官と、独自の取材で犯人と確信したルポライターの前畑滋子の二人の民間人です。彼女なんかテレビの生中継中に犯人に自白させるのですから、取調室のベテランよりスゴイです(笑)。

ところで、長い長いと書いたものの、最後の方で、HBSテレビの向坂アナウンサーがなんか、真犯人に気付いたような描写があるのですが、なぜ、気付いたかを知りたかったです。が、これは無い物ねだりですが。
 
さんざん書きましたが、本当に面白いのは事実です。登場人物で特に際立っているのは、豆腐屋の有馬義男と塚田真一のエピソード。個人的に好きなのはガミさんこと警視庁捜査一課第四係武上刑事。
そして、いい味出しているのは、シャーロック・ホームズも真っ青な“建築屋”かな。