五反田発リスボン行き急行列車

五反田駅からリスボン行き急行列車に乗ることを夢想する前期高齢者の徒然

2016・10・22

2016-10-23 09:40:27 | 日記
五反田に帰って届いていた週刊文春を広げて、毎週まず一番最初にページを開くのは評論家小林信彦の「本音を申せば」だ。私と十歳違うか違わないかの年齢なのに世の中に対する物の見方が的確で、いつも我が意を得たりだ。でも、今週は今まで以上に驚いた。小林さんの今週のエッセイは次の様に始まる「『文学界』十一月号で荒木一郎のインタビューをおこなかっている。歌手デビュー五十周年記念で……」以下、「日本春歌考」を初めとする荒木一郎の日本映画との関わりが一頁にも渡って語られ、最後はには「文学界」の「荒木一郎わが人生」を読んだ方がいいと結ばれる。「歌手五十周年か……」と私は呟く。そうか、あれからもう五十年も立つんだ。私はまだ十八歳か十九歳ということになる。将来のこと、男女問題、父親との関係、その他自分の身に降りかかって来るありとあらゆる問題で、自傷行為も含めて自分の身体と精神を目茶苦茶に痛めつけていた時代だ。そんな時にふとラジオから聞こえてきた囁くような唄に聞きほれた。荒木一郎の「空に星があるように」だった。どうしてその唄に惹かれたのか分からない。歌詞を読んでみたらそれまでの自分の思想信条とは全く受け入れない内容なのに、体の中にグッーとしみこんできた。以後、荒木一郎を求める日々が始まった。二作目の「今夜は踊ろう」三作目の「いとしのマックス」は勿論、LPも買い求め、続いて公開され大島渚監督の「日本春歌考」を見た私は、その時代を挑発するような、世の中を斜に見るような彼の表情に魅了され、その映画を何度見たことか?更には他に彼が出演していた東映のチンピラ映画「893愚連隊」(監督・中島貞夫)「血桜三兄弟」(同)を都内の名画座を巡って見る様になり、いつの間にかこんな映画を作りたいと脚本家を志望するようになったのだから、そして辛うじて脚本家になったのだから、今日まで時々思い出すことはあったけど、すっかり彼の存在を忘れていた自分に恥じる共に、この小林さんのエッセイで50年前の原点が猛烈な勢いで甦ってきたのだった。いや、そればかりじゃない。今週の週刊文春はちょっと変で、フランス文学者の鹿島茂さんの「私の読者日記」と云う書評欄の見出しも「荒木一郎、バートランド・ラッセル」となっていて、彼もまた荒木一郎へのインタビュー本「まわり舞台の上で 荒木一郎」(野村正昭他)を紹介している。哲学者ランドラッセルを描いた「ロジ・コミックス ラッセルとめぐる論理哲学入門」は二頁の内たった二段で、残りは全部荒木一郎で、本の紹介というより鹿島氏の荒木一郎礼賛で埋めつくされた二頁弱。そういえば鹿島氏は私より三歳か四歳下の筈で、まさに荒木一郎世代だった。そんな二つの文章を読んだ後だと、買い物のついでに寄った書店で、「まわり舞台の上で 荒木一郎」は置いてなかったけど、文学界はあったので買い求めたのは当然の成り行きである。そういえば今、渋谷のシネマヴェーラで「荒木一郎の世界」と銘打った特集上映が行われている筈。あ、芝居の稽古もあるし、もういけないか?そんなこんなで、この日記を荒木一郎で埋めつくしてしまったけど、「喪服の女」上演まで後十日だ。今日明日で漸くラストのシークエンスの立ち稽古。出演者の菊地祥子さんの劇団仲間の女優Sさんが差し入れを持ってきてくれる。感謝。予約の方も5日昼夜を除いてホボ完売。感謝。妹も会場使用のことで色々と便宜を図ってくれる。感謝。こうした皆さんの愛情に支えられて、後十日、「喪服の女」は何処まで進化するのか?←図々しいね★テアトロジャージャン第八回公演「喪服の女」(作演出・桃井章)日時・11月2日(水)開演19時半、3日(木祭日)開演13時[完売]&18時、4日(金)13時[完売]&19時半[完売]、5日(土)13時&18時、6日(日)13時[完売]・料金3000円・出演 水沢有美、大塚みどり、菊地祥子、岸本敏伸 ・予約問い合わせ090ー9964ー2231★第九回公演「M家の人々Ⅲ・歌う女」(作演出・桃井章 )日時2017年3月17日(金)~3月20日(月・祭日) 出演・水沢有美他 詳細未定★テアトロジャージャンのホームページが開設されました。過去の作品や今後の上演予定作品の情報が掲載。jerjan-hiroo4f.jimdo.comへアクセスして下さい。

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