大分市二又町の甲斐猛則さん(49)は毎朝、仕事前に自宅周辺の約15キロを歩きながら、ごみを拾っている。2012年4月から、雨の日以外の毎日、国道沿いの歩道や河川敷などで黙々と続ける。昨年末には通算距離が地球約半周分の2万キロに達した。「ごみは減るどころか増える一方だが、人との出会いを楽しみながら続けていきたい」と話している。

 健康のために続けていたランニングで土手を走っていた際、ポイ捨てされたごみが気になった。毎日、ポリ袋を手に走りながら、目についたごみを拾い始めた。数カ月後、「どうせやるなら本気で、世界で一番と言われるくらい拾おう」とランニングをやめ、本格的にごみ拾いを始めた。
 1週間のうち6日は南大分、稙田地域の大分川と七瀬川の土手や国道を拾い歩く。1日は自宅から西寒多神社まで歩き、そこから本宮山に登って奥宮(9合目)を清掃。ごみを拾いながら下山する。盆、正月も休まない。
 始めた頃は不審者と勘違いされ、住民から声を掛けられることもあったが、今では途中で出会う高齢者らとも顔なじみになり、「無理せんでな」「頑張って」と声を掛けてもらったり、反対側の土手から手を振ってもらえるという。ルート沿いの歴史を調べるなど、飽きないための楽しみ方も見つけるよう心掛ける。
 市内の高校を卒業後、米国の大学へ進学。現地でマーケティング会社を起業し、約20年間暮らした。現在はフリーでマーケティングコンサルタントの仕事をしている。捨てられている空き缶の商品に偏りがあるなど、ごみ拾いから流行や経済の動きも感じ取れるという。「継続には忍耐も必要だが、ごみを拾うという行為以上に得ること、学ぶことも多く、日々自省、自戒しています。結果として町がきれいになり、人の意識も変わればいいなと思っています」と話していた。