【独自】ドライバーの認知能力低下、車が検知へ…「車間短い」「信号に遅れる」AIで分析
ホンダは、車の走行状態や運転者のわずかな傾向を人工知能(AI)で分析し、運転者の体調の異変を見つける技術開発に乗り出す。社会問題となっている高齢ドライバーの事故を減らし、認知症や緑内障の早期発見につなげる期待もある。2030年頃の実用化を目指す。
ホンダは、国の量子科学技術研究開発機構と共同で、磁気共鳴画像(MRI)やセンサーを使って、運転者の脳や目の動きを分析している。事故につながるミスの原因を探るためで、運転者の視線をカメラで検知し、横断する歩行者の見落としを警告する技術を開発中だ。
こうした技術を応用し、車が左右にふらついたり、車間距離が短くなったりする傾向が出た場合に、認知機能や空間を把握する能力が低下していることを知らせる機能を開発する。センサーやカメラにAIを組み合わせ、運転支援だけでなく、体調や病気の疑いの分析に踏み込む。
信号への反応が遅れるようになった場合は、視野が狭くなっている恐れを伝える。緑内障に多く見られる症状だが、進行が遅く、自覚は難しい。今回の開発は、運転者に事故のリスクを通知する。運転者は症状を自覚する前に、体の異変に気づくきっかけになる。
運転免許の保有者は4人に1人が65歳以上となり、高齢ドライバーが起こす事故を減らすことが課題になっている。技術の開発により、能力の低下に気づけば、運転を控え、免許を返納する動きにもつながりそうだ。
自動車各社は、日頃の運転データを蓄積、分析し、安全運転に生かす技術の開発でしのぎを削っている。
トヨタ自動車は、運転者の視線や顔の向き、まぶたの開き具合をカメラでとらえ、AIが異常を検知するシステムを一部の車種に搭載した。走行中の脇見や眠そうな表情を感知すると、警告音を鳴らしたり、シートベルトを振動させたりして注意を促す。
マツダもカメラとセンサーで、居眠りや急病を検知し、車を減速・停止させる機能を開発し、22年以降に新型車への搭載を目指している。
ホンダの新技術は、もっと早い段階から異変に気づくことを狙う。ホンダの担当者は「車には様々なデータが蓄積されている。リスクを察知し、安全技術に生かしたい」と話している。