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万葉語り16

2014-02-18 | 万葉語り
万葉集は巻一、それぞれの歌に天皇の時代を表わす題詞を持つ歌がある。

題詞が示すものをまた具体的な呼称に注書きにし、歌に左注とする場合もある。

その題詞が示す内容についての検証は、歌集による出典のこと、歴史書による考証である。

その題詞によると、天皇を現在時の天皇にあわせて、太上天皇、大行天皇という記載が見える。

これはそれまでの時代に対して、この時代を意味する表わし方になるので、特徴となる。

すなわち、藤原の宮の三代の天皇にかかわり、いまの時代は奈良の宮に遷る前の天皇になる。

舒明朝に始まり、その系譜にあるものと、持統を上皇とする、いまの天皇の時代になる。

この時代を内容とする歌集は歌人に額田王を始め、柿本人麻呂、そして皇子などの有名な歌がある。

第7番歌、第8番歌に見える歌は、次のようである。

 あきののの みくさかりふき やどれりし うぢのみやこの かりいほしおもほゆ

 にぎたづに ふなのりせむと つきまてば しほもかなひぬ いまはこぎいでな

この額田王の二首には、左注に類聚歌林を引く。

その左注に、この歌は天皇の御製なり、として、御言持ち歌人の額田王を示している。

また、第9番歌は額田王が作る歌として題詞に見える一首であるが、上句に定訓がない、難訓を持つ。

 莫囂圓隣之 大相七兄爪謁氣 吾瀬子之 射立為兼 五可新何本

 しづまりし うらなみみさけ 吾(あ)が背子が偉(い)建(た)せりけむ厳橿(いつかし)が本(もと)

試訓は、角川日本古典文庫による。



歌の引用は国歌大観番号、角川日本古典文庫を用いる。
    この書の注釈と解説による。

    伊藤博校注 万葉集 上下巻 角川書店


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