語彙の論について かつて古典対照語い表というのがあって、1971年、笠間書院発行、その後に版を重ねて、第3版が1992年9月にあり、語彙を考えるに重宝する語彙表であった。その改訂増補版、日本古典対照分類語彙表が出版された。収録された作品が、版元のサイトによれば、収められた古典作品でどの単語が何回ずつ使われているかを表にし、漢語、和語を峻別したものであったが、それに加え、すべての単語に、国立国語研究所編、分類語彙表、増補改訂版、2004年刊、の分類番号を追記したという。
それによって、個々の単語がもつ性格も即座に識別できるようにしたそうだ。改訂増補版は2014年7月に刊行ということで、B5判、1150頁の1冊を心待ちにしている。 . . . 本文を読む
語彙論について 少し記憶をたどることになるが、語彙論を論と知る前に、語彙を扱って、語のとらえ方、語彙の考え方を知った。語の意味の変遷を探求することがきっかけであった。そのときの学習は恩師の著作にあって、心身語彙の史的研究、宮地敦子、昭和54年11月、明治書院、があり、そこに並べた語彙の一つ一つの探索に思い出がある。語彙論の、語彙史にかかわる分野は1979年を数年年さかのぼる10年、そのころに始まっている。語彙史研究会については、第1回国の研究会を1979年に始めている。国語研究の分野で、音韻、文法に続く、語彙研究は当時の新分野として位置付けられていたように思う。ちょうどまたそのころであるが、語彙論につても知ることになる。語彙は語の資料、その総体を対象とするということを学ぶ。
語彙についての考え方を知り、語彙論があることを学んで、国語学大辞典の項目を読み、かつて恩師が、語彙に体系があることについて、どう思うか、という、問われたことのその意味を知るようになる。語彙に構造があると言うのも同様の謂いである。語彙研究は学習用の語彙の分析に実験されて留学生が学ぶ日本語語彙についての語彙論を展開するようになって、その嚆矢となる、日本語教科書に収める学習のための語彙に、留学生教育のための基本語彙表、吉田弥寿夫、樺島忠夫、大阪外国語大学留学生別科「目本語・日本本文化2、があった。 . . . 本文を読む
語彙論について 語彙論は言語研究の新たな地平を開いてきた。日本では1950年代以降である。国語学の音韻、語彙、文法に対して、あえて三分野を対応させると、言語学では音声科学、文法、意味論となる。日本語教育では音声音韻、文法文体、語彙意味と分けた。必ずしも、国語、日本語研究、日本語教育研究がその研究範囲を取ってこの分野に収束しているものではないが、日本語語彙論は定着してきた。
語彙論の関連分野に、意味論、語句論、語源論を、ウイキペディアは上げている。語彙を扱う言語学の部門としながら、近接する分野は辞書学であるとだけ、説明をそれ以上、載せない。したがって、意味論のうち、対義語、類義語といった語義の関連を対象とする分野は語彙意味論と呼ばれる、といったように、その記述についてはこれからのもののようである . . . 本文を読む
語彙について 語彙論を行い、よくとらえるためには、いくつかの語彙についての用語がある。専門の術語であるが、さきに説明する国語学大辞典の語彙の項目にある用語をあげてみると、単位語、見出し語、語彙、語彙表、語彙項目、そして計量的術語に、使用率、延べ語数、異なり語数などをあげている。さらに、語彙の数、語彙量、使用語彙また表現語彙、理解語彙、基本語彙、基礎語彙、共通語彙がある。いずれも、重要な概念であるから、用法とともに理解をしなければならない。たとえば語彙表にはくわしく、五十音順語彙表、使用順率語彙表、分類語彙表があり、語彙の実際を知ることができる。また語彙項目には、語彙素を設定することもあり、それはまた、形態素、語、単語結合を扱う場合がある。 . . . 本文を読む
語について文法単位として扱う単語は品詞に分類される。文法論で品詞論と構文論に分けると、言語現象を語の単位に分割する。国語の文法は伝統的に語を品詞で捉えようとしてきた。単語が語であるとするのは語と意味の関係をとらえて、文おなかでどのように機能するかという考え方による。その語とは構文論で語と語とがどういう関係にあるかによって品詞が決まる。もちろん語の音声形式である形態と語が表わす意味内容によってその単語の種類分けができるが、語は言語現象である文のなかでどのようにふるまうかがその語性を決める。国語の文法はそれを語の形式と意味、活用の有無と意義、そして文法機能とを基準としてきた。その基本に、語についての形態、意義、職能がある。一方で、形態論はどうなるか、語の形態はその形式を変化するもの、変化しないものとにわけて、その最小形式に意味を求めて、形態素とした。語と形態のとらえ方にさらに形態を形態素に分析する。形態論は意味の最小形式をさらに語以下のレベルにも考えて、自由形式と結合形式にとらえる。形態論はそれまでの伝統文法で品詞に捉えていた語をさらに分解したことになるので、品詞論と形態論を交えて語を形態素とすることはできない考え方となる。 . . . 本文を読む
語について、文法の分析に語より下位の単位を説明するものがある。文法論を形態論と統語論にわけて2大別とする。形態と統語に分けるのは言語に意味をとらえて、語には意味があると前提にした議論である。語に意味があるのか、ないのかを議論するのは、近代言語学があらたにした言語記号の考え方である。言語記号は音の形式をまとまりとしてとらえた。
したがって語が既に語としてあるという考え方と、語は音形式のまとまりとして現わすシンボル、その象徴であるとする見方は、象徴記号として言語を考えるので、その内容を音象徴について議論するようになった。語が音の形式に捉えなおされて、その内容となるべく語についての意味を議論した。言語記号がそれまでにただに語としていたものを考え直したことになる。 . . . 本文を読む
語彙について、vocabulary を標出語に続けて掲げ、次のように述べる。時代、人、作品など使用の範囲を限って、そこに使われる、異なる語を考えるとき、その語の集合を語彙という、国語学大辞典、昭和55年、344ページより。語彙研究はこの説明を以て新たな地平を示した。それは語彙論の項目に表されるので、それについて見ると、次のようにのべている。
語彙論 音韻論、文法論と並べられる言語体系研究の1部門。上記、大辞典、昭和55年、352ページより。この解説は国語学の三大分野の語彙論として、続けて説明されている。言語のひとつの単位である語を、ある基準又は成立条件によって集合としてとらえたもの、すなわち語彙について、体系的に記述的に説明する。この説明によって、集合としての語の集まりを単位とすることが鮮明となる。 . . . 本文を読む
語と語彙について、語をひとつずつ見る捉え方と、また、語を集合としてあるいは語を体系として見る捉え方とを説明する。語論と、語彙論とするとよいが、そのそれぞれには用語の意味内容の範囲、取り決めがあって、それに従うのがよい。語の論と語論、語彙の論と語彙論として、まずは見ていこうとする。語の論はそのつど、単語を取り上げるようなことである。語彙の論は語彙論を明らかにする。
語彙論が行われてその方法には計量言語による成果がある。語彙論の研究手法として語の計数と統計処理による議論が行われる。述べてきた国語研究所の大規模調査による成果に代表される。いま、その調査法の基本的な解説に求めて語彙論を捉えてみることにする。この方法についての説明で、語彙論における術語の定義から始める . . . 本文を読む
語の論は語論となるか。その用語がとくにあるわけではない。しかし、辞書に項目として掲載し、文法研究の分野また部門として扱う説明がある。語論があり、文論があり、文章論があるということになる。辞書項目を見ていくと、文論と文章論は重なる説明がある。そうすると、語論はまた何かを問うことになるが、シンタクスに対するもの、形態文法を意味する。
語の論を語論、語彙論、そして意味論で扱うそれぞれの範囲をおおうものとしてとらえるのがよさそうである。文法論に、語、文、文章とするのは文法単位の部門に分けることであり、そこに語より下位レベルのようにして形態を加え、さらには語と文にあって句をもって見る。それを形態論の分野に語を据えて句論まで広義にして、文法論の部門とすることになる。 . . . 本文を読む
語と語彙の違いは、単語と言語の違いになる。この場合の言語は個別語のことである。日本という単語、日本語という言語というようなことである。語としての日本を、これはニホンと読みますか、ニッポンと読みますか、となれば語の論で発音を議論する。あなたは日本語をいくつ知っていますか、となれば、それは日本語を数量で扱おうとする。
それでは、あなたの語彙はいくつですか、と聞かれれば、どのように答えるだろうか。語彙は語の集まりで、個別言語として、日本語は1である。もし、英語の語彙を知っていれば、それも1であるから、答えには語彙を2、知っているということになるだろう。したがって、日本語の語彙は1で、さらに日本語の単語の数はとなると、果たしてどれくらいの数量があるだろう。
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