読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

Arigato for Nothing, Keynes-san

2012-05-24 20:28:20 | 新聞
wsj日本版から
西側諸国ではエコノミストやコメンテーターがケインズ理論に基づく
景気刺激策をもっと行うべきだと長年にわたって主張してきたが、
ここで再度、この試みが数十年間行われてきた国を検証してみるのも悪くないだろう。

 日本が先週発表した今年1~3月期のGDP(国内総生産)速報値は、
政府による財政支出が寄与し、驚くほど堅調な成長を示した。ところが22日、
格付け大手フィッチ・レーティングスが日本国債を格下げしたことで、
この明るいニュースが曇ってしまった。

 日出ずる国の経済は第1四半期で前期比1%の成長を示した。
年率換算で4.1%だ。この力強い数字は震災後の復興事業に対する財政支出のおかげだ。
またエコカー補助金の復活も個人消費の大きな伸びを支えた。

 ではなぜ誰も喜んでいないのだろうか。
誰もがこの高い成長率が続かないことを知っているからだ。
第1四半期の輸出は他と比べて明るさを見せていたものの、
欧米諸国や中国の需要は不透明だ。消費者信頼感指数が4月に下落したのは、
夏の電力不足と海外市場の低迷に対する懸念が原因であることは明白だ。

 日本では、経済成長が文字通り「財政支出か、もしくは破たんか」の
問題になったようだ。そして政府はこの両方が現実になり得ることに気づき始めている。
政府の資金は結局どこからか調達しなければならないからだ。つまり納税者だ。
政府は何十兆円もの資金をこの20年で公共事業に投じてきた。
このため公的債務はGDP比200%以上に達している。

 かつて世界第2位だった経済大国は、ケインズ理論に基づく公共投資が民間主導型の
成長を実現させる一助になるとの主張への反証の役割を果たしている。
日本は長い間、できたばかりの道路をまたすぐに掘り返すといったことを繰り返してきたが、
第1四半期の数字が示すように、この国はまだ民間部門主導による成長が実現していない。

 公営企業の民営化に再度取り組むとか、野田佳彦首相が打ち出している
自由貿易政策を進めるといった経済の活性化案を欠いた状態では、
それをどう実現させていくのか見極めることは難しい。

 日本の有権者はいずれ、このような偽りの期待を持ち続けることはできないと
決断するだろう。一方、日本以外の専門家や政策決定者らは、効果のなかった
ケインズ理論とともに歩んできた日本について、知的な誠実さをもって
あらためて考えてみる必要がある。


11.日本女子留学事始

2012-05-24 09:26:51 | 歴史
 いかに祖国のために生きていけばよいのか、と思い悩む捨松に結婚話が持ち込まれた。
一度、別の男性から求婚されたときは、「お国のお陰で外国で修業できたのですから、
まずその御恩をかえさねば結婚など出来ません」と断っていた。

 しかし、どうにも就職する道が見つからない状況で、捨松は結婚する事で別の道を
見つけられるのではないか、と考えるようになった。

 結婚を申し込んできたのは、時の陸軍参議大山巌(いわお)42歳であった。
24歳の捨松とは18も年が違い、前年に妻を亡くしたばかりで、7歳を頭に3人の娘がいる。

 大山巌は西郷隆盛の従兄にあたり、若い頃から近代兵器の開発に関心を持っていた。
奇しくも、捨松が明治4(1871)年11月12日に米国に旅発った次の日に、
大山は欧州留学の途についている。

 ヨーロッパで留学生活を送った大山は、自分の娘達にもぜひしっかりした教育を
受けさせたいと願っていた。また時の政府高官として外国人とのつきあいも多く、
社交の場に出しても立派に振る舞える夫人を必要としていた。

 そこに紹介されたのが捨松だった。英語はもちろん、フランス語、ドイツ語にも堪能で、
日本で唯一の大学出の肩書きを持つ女性である。
考えれば考えるほど、捨松は自分の伴侶にふさわしい女性だと思えてきた。

 捨松の方は話が持ち込まれた時、相手の人となりを納得の行くまで知った上で返事をしたいと申し出て
、当時としては珍しくたびたび、今風に言えば大山とデートをした。そして結婚を決心した。