読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

5・日本女子留学事始

2012-05-12 09:23:20 | 歴史
1875(明治8)年9月、16歳になっていた捨松は、近くの男女共学の
公立高校ヒルハウス・ハイスクールに入学した。

 ニューヘイブンには上流階級の女性たちだけで集まる「アワー・ソサエティ(私達の会)」
という会があって、貧しい人々へのボランティア活動をしていた。
捨松はアリスのゲストとして、会合に出入りし、会員達と一緒に赤ん坊のおむつを縫ったり、
供服を作ったりした。

 この活動を通じて、捨松はボランティア精神を学び、女性に与えられた能力を
発揮することによって社会に貢献することができ、またそうする義務がある、
という事を身をもって学んだ。

 後に捨松は、陸軍大臣大山巌夫人となってから、ここで学んだボランティア精神を
発揮して、日本最初の慈善バザーを開いている。

 捨松が高校に入学した年の夏、次兄・健次郎がエール大学での留学を終えて、
日本に帰国することとなった。健次郎は、妹が祖国への愛国心を持たないアメリカかぶれの
娘になる事を恐れて、週に一度は捨松を呼び寄せて、日本語の勉強を見てやったり、
人として歩むべき道を説いて聞かせたりしていた。

 健次郎は帰国後もたびたび捨松に手紙を送り、国際政治に関することなどを説いた。
兄の教えで、捨松の心中には祖国を思う気持ちが芽生えていった。