読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

佐々淳行・渡部昇一対談『国家の実力』から

2011-07-28 09:05:40 | 読書
.「これが危機管理というものです」

 真の危機管理とは、どういうものか、佐々氏は内閣安全保障室長在任中に体験した大島三原山噴火の際の対応を例に語っている。

 昭和61(1986)年11月に大島の三原山が噴火し、溶岩が地元の町に迫った。全島民1万人、観光客3千人の生命が危機にさらされた。

 最初に、国土庁に19省庁を集めて災害対策会議が始まった。ところが、名称を「大島災害対策本部」とするか「三原山噴火対策本部」とするか、などと、どうでもいいようなことを議論している。

 これでは埒があかないと見た佐々氏は、即座に中曽根康弘総理に安全保障会議の設置を進言した。これは重大な危機の発生時に各省庁の動きを一元化して、取り組むための体制である。

 中曽根首相は「全責任を私が負うから、指揮しろ」と佐々氏に命じた。佐々氏はすぐに都知事の鈴木俊一氏に、海上自衛隊出動要請を促した。さらに島民を避難させるために、橋本龍太郎・運輸大臣の権限で、夏しか就航しないフェリーボートなども含め、約40隻を現地に向かわせた。

 国土庁の災害対策会議が終わった午後11時45分頃には、すでに島民に避難指示が出され、午前4時までには全島民1万人、観光客3千人が船に乗っていた。

 船団が東京の竹芝桟橋に向かっている間に、東京の公立学校やYMCAなどで宿泊所を確保し、毛布や握り飯の準備が進められていた。「これが危機管理というものです」と佐々氏は語る。