読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

続「キーン氏に聞く」

2011-07-03 10:03:54 | Weblog
教授は、日本という「女性」と結婚したようなものだと発言されている。その女性のどこにいちばんひかれたのか?
キーン氏 
日本にいると、いちばん落ち着く。米国が嫌いなわけではないが、ニューヨークに帰ってくるとショックを受ける。物を買っても、ありがとうとも言われない。今日も医者に診察してもらったが、「ワイシャツを脱げ」といった調子だ(笑)。それに比べて、日本のお医者さんの丁寧なことといったら。人間と動物のいちばんの違いは「礼儀」である。わたし自身、自然に日本の礼儀を守るようになった。
もちろん、知らないこともあったが、いったん覚えると、それを実践してきた。
 31歳のころ、日本に留学し、下宿したのが、京都にある国宝級の家の離れだった。いろりや茶室もあり、なんともいえない眺めだった。縁側に立つと、人家が一軒もなく、見えるのは、お寺だけ。だが、ひと月ほどたつと、母屋に米国帰りの京大の助教授が入ってきた。それを聞き、大変がっかりした。きっと英語の練習をさせられると思ったからだ。彼の部屋の前を通るときは、横を向いて視線を合わせないようにした。(この話は以前、キーン氏が本に書いていたのを読んだ記憶がある)
 ところが、ある夜、夕食を共にすることになり、以来、親友になった。のちに文部大臣となった永井道雄氏(故人)である。素晴らしい人だった。彼に出会ってから、現代の日本も知らねばだめだと思い、選挙演説を聴きに行ったりした。当時、『夕鶴』(戯曲)が大人気だった木下順二とも知り合った。人の紹介で三島由紀夫とも親しくなり、作品の一部を訳したこともある。素晴らしい日本人の友人を持って、本当に幸せだった。