読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

「奇縁まんだら」瀬戸内寂聴著から

2008-06-18 10:49:37 | Weblog

岡本かの子が歌人から小説家を目指したとき自分より遥かに年下の川端康成の小説に感動し、康成を小説の師と仰いだそうだ。かの子の夫、一平は、高価な物品を康成に惜しみなく送り、かの子を彼に委ねたと言う。「芸術家は上等の料理を食べ、いい衣装を身に着け、立派な家に住まなければ豊かな作品は作れない。」と一平は言ったそうだ。康成は一平の好意に影響を受け生涯それを忘れず、岡本太郎を良く面倒を見た。芸術家は良いものを食べ、良い服を着、良い家に住まないと駄目なのかと思った。この寂聴の本の中にやはり三島由紀夫が「肉を食わなければ骨太の作品は書けない」と言う事を言っているところがある。樋口一葉は極貧の中で小説を書いていたが一葉の近くに住んでいた漱石もそう言えば裕福だったし、鴎外もそうだった。藤村も裕福な家に生まれている。生活に充分な経済上の余裕が有っての芸術か、と感じたが啄木の場合は自業自得とは言え、やはり貧しかった。