作家池波正太郎がが、ある日、芝居見物に行った。芝居の幕間の25分になると観客は、いっせいに食堂へと向う。彼もその中に加わって食事をしていると同じその食堂で食事をしている女たちの話が聞こえて来る。旦那を残して芝居見物に来た女達が言う。
「旦那様の食事どうなさったの?」相手の女が言う。「冷蔵庫を漁って適当にやっているでしょうよ」「まあスゴイ」「じゃあ、お宅は?」「亭主と子供に千円ずつ、今晩の食費をやったらもう大よろこび、男ってたわいがないのねぇ」「そうよ、亭主なんてフンゾウキよ」「何、そのフンゾウキって?」そばで聴いていた彼にも判らなかったそうである。しばらく彼女達の話を聴き続けるとその意味が判ったフンゾウきは「糞造機」だそうだ。これを聞いて池波は魂消たと、本に書いている。