読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

藤原正彦著「天才の栄光と挫折」から

2008-06-17 11:02:09 | Weblog

「国家の品格」でベストセラーを出した藤原正彦氏は昔、パリに旅した。ルーブル美術館近くの三ツ星のホテルに宿泊する事になったがその三ツ星には余り期待はしていなかったそうだ。と言うのは以前、ジョージ・オーエルの「パリ・ロンドン放浪記」を読み、その内容が記憶に有ったからだと言う。ジョージ・オーエルは1920年代パリの高級ホテルで一時期皿洗いをしていた。その時の経験がこの本に書かれてあった。彼はこの中でホテルの陰の部分が如何に不潔か、従業員が如何に下品かを書いている。例えば台所の床に落ちたトーストをそのまま出したり、顔の汗を料理の中に落としたり、食事時の忙しいときの従業員同士の怒鳴りあう会話がとても活字に出来ないようなものであるとかを詳述しているのである。藤原氏が何時パリを訪れたかはこの「天才の栄光と挫折」と言う著作の中には書かれておらず、ただ三月中旬とあるだけだが彼はその時もこの三ツ星のホテルでオーエルと同様の経験をしたのである。最近日本の老舗料亭「吉兆」がこの種の問題で話題になったときこの藤原氏の話を思い出した。