GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「ダークナイト」

2008年08月14日 | Weblog
北島康介君が100m平泳ぎで世界新記録で金メダルを取った午後、映画館で驚くべきストーリーに遭遇しました。

 バットマン映画「ダークナイト」です。今年見た映画の中では最高の出来映えです。当然、バットマンシリーズの中ではピカイチです。

映画の内容を一言で云えば、
「バットマンと警察が守る大都市での、人間の良心を問われるパニックムービー」です。

 特にジョーカーのように人の良心を弄び、揺さぶる登場人物の設定は過去に思い当たりません。(せいぜい、MI:3のホフマンくらいか)そんな難しい役柄をヒース・レジャーは見事に演じ切りました。アカデミー助演男優賞をあげたいくらいの名演・怪演です。

 そんな鬼気迫る彼を見ていて思わず、映画「ブラックレイン」の松田優作を思い出しました。あの映画の優作のふてぶてしく、周囲の神経を逆なでする演技は他の役者(マイケル・ダグラス、アンディー・ガルシア、高倉健、若山富三郎)を圧倒しており、この「ダークナイト」出演する芸達者の4人、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、エリック・ロバーツの影が薄く感じるほど、ヒース・レジャーは素晴らしかった。(映画のクランクアップの直後、二人とも亡くなったことが偶然とは思えないなにかを感じるほどです)

 もっとも素晴らしいのはやはりC・ノーランの脚本だと思います。人の心を弄ぶジョーカーによって登場人物すべてがそれぞれの人間としての良心を試されるのです。個人も集団も緊迫した中で問われるのです。

 かつて「スター・ウォーズ」でダークサイドに落ちた<ダースベイダー>の長い物語がありました。それは愛する人を守るためという切ない理由が長い時を経て明かされました。

「スパイダーマン3」「キングダム 見えざる敵」では<アメリカ国民は復讐の連鎖を解き放たねばならない>という熱いメッセージが主題でした。この「ダークナイト」では、スーパーヒーローではない人間味たっぷりのバットマンが、第一線の刑事が、有能な地方検事が、フェリーに乗った一般の人々や囚人達が、有能な研究者が、主人を愛する老執事が、バットマンを愛する女性が、それぞれの立場で自らの良心と立ち向かい決断し行動していきます。ここには深い人間の本質的なドラマが描かれています。この展開が素晴らしいのです。

「ダークナイト」を見ながら「オール・ザ・キングスメン」の製作者の一人マイク・メダヴォイの話も思いだしました。『我々は皆、腐敗する可能性があるし、愛することも憎むことも裏切ることもできる。それらは太古の昔から人間の原動力となってきたものだ。善人でもなければ悪人でもない、その間のどこかにいる不完全な人々を描いている。ウォーレンの小説は、人間の本質を描いている。』

映画「オール・ザ・キングスメン」にこんなセリフがありました。

「人生を決める瞬間は数回しかない。もしかしたらただ一度かも…」

 映画「ダークナイト」の様々な登場人物のとった選択は、それぞれの人生を決めるその瞬間だったかもしれません。クリストファー・ノーラン製作・監督・脚本(ノーランの兄も脚本に参加)の渾身の映画を見ながら、自らの良心と向き合って欲しいと思います。
秀作映画の楽しみは心の中での、こんな疑似体験かもしれません。


 私は執事アルフレッドが演じたマイケル・ケインのとった行動が心に沁みました。さて皆様はいかがでしょうか?

こんなに良くできた映画(特に脚本)は滅多に見られませんよ。
皆様も映画館に足を運んで、あの心のパニックを体感してみて下さい。

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