図書館から借りたサン・テグジュペリの「人間の大地」
郵便機の飛行士だったサン・テグジュペリの体験や思索が込められた著作です。
星の王子様を思わせる、「簡単な言葉なのに深い」文章が体験記のなかに織り込まれています。
冒頭からして深い。
沁みるというか、響くというか。
書物一般に感じることですが、前書きとか物語の冒頭の文章って、家の玄関のように本の顔だと思いませんか?
引き込まれるような描写が多く、心を掴まれますよね。
「人間の大地」の冒頭です。
~大地は僕ら人間について万巻の書よりも多くを教えてくれる。なぜなら大地は僕らに抗うからだ。人間は障害に挑むときにこそ自分自身を発見するものなのだ。ただし、障害にぶつかるには道具が要る。鋤や鍬が要る。農夫は土を耕しながら、自然の神秘を少しづつ暴いていく。そうやって手にする真実は、普遍的な真実だ。それと同じように、定期航空路線の道具、つまり飛行機も、古くから存在するありとあらゆる問題に人間を直面させる。~
農林業や漁業をはじめ人間に抗う自然を相手にしている人が感じる実感は、真実などという大げさなものでなくても、その人がつかみ取った発見・確信だと思う。
万巻の書からは得られない体験から得られるものの重み、尊さ。
そういう意味で言うなら、抗うものや障害、思い通りにはいかないものに向き合う時、それはその人にとっての「大地」であり「自然」なんだと思う。
子育ても介護も人間社会のいろいろや病気や老いも、それに向き合う時、それは自分自身を発見するための「大地」となる・・・。
(なんだかかっこいいこと言ってしまい、私、ドヤ顔になっています)
そして、もちろん万巻の書は無駄ではない。
こうして、自分では言葉に表せないことを言葉に記してくれて気づかせ、考えさせてくれます。
サン・テグジュペリは飛行機の遭難事故で亡くなりました。
体験し行動するとともに、思索し言葉にすることを貫いた一生だったようです。
「人間の大地」や「星の王子さま」に込められたメッセージはこれからもずっと人の心を打ち続けるでしょう。