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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月5日 風鈴

2016-09-05 18:58:01 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月5日 風鈴




 小学校高学年の夏休みだった。
祖父母の元へ一週間ほど泊まりで帰省していたときの話だ。
 山奥の村落、20軒ほどが身を寄せ合うところで、村には私のような子供は一人もいなかった。
住人はほとんどが高齢者ばかりのようで、過疎という言葉が当てはまる場所だった。
 かと言って暗い雰囲気は無く、小さな訪問者に皆が親切にしてくれた。

「 ミノル(父)の倅か、ほーかほーか。」
「 テービもねぇからつまらんろ。」
「 独楽回すか、独楽。」
「 後で、釣りいくべ。」
「 虫がいねぇんだろ、あっちは。捕り方おしえんべか。」

どちらが子供か・・・。
でも、うれしい。
 二日目に祖父と釣りへ出かけた、村の爺様ほとんど連れて・・・。
山間の上流、比較的流れが緩やかな場所だった。
 気を使ってくれているのは分かった。
竿の振り方や餌のつけ方、魚の居そうな場所などを教わり、十人いると十人が微妙に違う。
 釣り始めて二時間もしないうちに、爺様たちは宴会になっていた。
一人竿を振る私のところへ代わる代わるきては、微妙に異なるコツを教えてくれた。
 そろそろ飽きかけていたところ、竿が引かれた気がした。

「 あ?かかった??」

引き上げて見ると、緑色の塊だった。
 見ていた祖父と爺様達は、遠巻きに、

「 お、ゆっくりな、ゆっくり。」
「 でぇじにあつかえ。」

等、わけがわからない。
 丁寧に外し、よく見ると緑色に錆びた風鈴のようだ。

「 爺ちゃん、これ。」

と祖父に渡そうとしても受け取らない、触ろうとしない。

「 おっ、いいからお前がもってろ。」

ちょっと待って下さい、お祖父ちゃん。
 他の爺様達も笑顔だが、誰も近づかない。
その後すぐに村へ帰ることになった。
 祖父の家へ戻ると祖母も同じ反応だった。
近づこうとしない。
 でも、泣くほど不安になったわけではなかった。
村中の人が祖父の家へ集まってきた。
 お爺ちゃんお婆ちゃんだらけの中、

「 それにはおめぇ以外触れねえんだ。」
「 良い事があるよう。」
「 わしは二度目かの。」
「 まえは誰だった?」

等、笑いながら話していた。
 祖父が、

「 それはお前のもんだ、綺麗にして大事にしなきゃな。」

と、小さな箱をくれた。
とりあえず箱へしまい、やっと重たいものから逃れられたような気がした。
 箱は仏壇へ納められ、私が帰る日までそのままだった。
帰る日まで村中の人から風鈴の経緯を聞かされていたが、よいものである以外内容がまちまちなため、結局分からず終いでいる。
 今年も風鈴をつるしてはいるが、残念ながら音が鳴らない。
ただ、あの時のお爺ちゃんお婆ちゃん達の笑顔、子供のようだった。
そのうち何かが起きるんだろうなと、とても期待している。










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