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日々の恐怖 3月24日 コンテナ

2013-03-24 19:04:33 | B,日々の恐怖








     日々の恐怖 3月24日 コンテナ







 今から13、4年も前、関西にいた頃、港湾のコンテナ荷降ろしのバイトに行っていた時期がある。
荷降ろしは文字通り、コンテナに収められた荷を降ろすことで、コンテナ自体の積み下ろしや、降ろされた荷を倉庫に収める過程はクレーンや、フォークリフトなど機械で行われるものの、この荷降ろしだけはどうしても人の手で行われなければならないという、ずいぶんなアナログな仕事である。
 扉口までパンパンに詰まった2トン、4トンのコンテナから荷を降ろしていくわけだが、荷は軽いものなら綿のようなものたまにあるくらいで、大体が飲料物、家畜の餌など重いものが多い。
1日に降ろすコンテナ2本、3本とあり、洗剤の箱などに当たった真夏の炎天下は洗剤粉にまみれて、もう地獄である。
 仕事が過酷だからというだけではなく、そのバイト先はあまり居心地もよくなかった。
港湾の荷降ろしはもともと山口組が人足を派遣していた歴史もあって、そこで働く人たちも気が荒い人が多く、実際その当時も元極道だったという人が働いていた。


 ある日、休憩のあと午後から降ろすコンテナのところにいくと、その奥を覗いていた倉庫の主任が降りてきて、フォーク運転手Nさんとなにやら相談している。

「 ・・どないですか?」
「 うん、おるな・・・。
あかんわ、コレ。」

午後から降ろす荷である。
 そのコンテナは手付かずでほぼ天井すれすれ、扉口までパンパンに荷が詰まっていた。
そんな中に一体、何がいたのだろうか。
倉庫でも強面の二人が黙り込んだままだったので、私も何も聞かずにいた。
結局、何の説明もないまま、そのコンテナは扉を閉められ午後の荷降ろしは中止になった。


 後日、別の倉庫の社員Tさんにこの件を聞いてみる機会があった。
彼によるとNさんが扉を開けたところ、何かが動いたのでわずかに開いた天井の隙間から奥を覗くと、コンテナの奥の方で天井と荷物に挟まれるように横になった顔らしきものがみえたのだという。
荷物に押しつぶされたのか歪んでいたが、人の顔のようにも見えたそうだ。
「 動物とか乗ってたんですか?」と聞くと、「 いや、そうやないんや。」という。

「 ほんま時々やけど、こういうの前からちょくちょくあったんや。
俺も飯食ってたら、降ろし終った空のコンテナから片足しかないサラリーマンがピョンピョン飛び跳ねて出て行きよったの見たことあるし・・・。」

Nさんはこれで二回目やと言い、Tさんは苦笑いした。
 そういう場合、コンテナを空けてもやはり中には何もいないのだ。
コンテナの扉は通常、リベットのようなシーリングで封印されており開ける前はそれを大きなニッパーのような器具でねじり切らなくてはならない。
コンテナはいずれも海外からやってくるもので、それらのシーリングは当然向こうを出るときにつけられたものである。
 荷降ろしが済んだあと、必ずコンテナ内を掃き掃除をするものなのだが、時おり見たこともない花や虫をみたことはあった。
これらが何にせよ、きっとどこか遠い海の向こうでまぎれた何かなのだろう。


 ある日の帰り際、隅っこに置かれたままのコンテナが中から物凄い勢いでガン!ガン!と2回叩かれるのを聞いたこともあった。
その瞬間、居合わせた社員全員が固まったまま、コンテナを見て立ち尽くしていたのを今でも思い出すことがある。
それからその件を誰にも聞かず私はそこを辞めたのだが、恐らくあのコンテナにはシーリングが付けっぱなしになっていたに違いない。
















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