大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月16日 ホーム

2013-03-16 19:04:56 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 3月16日 ホーム



 この話を聞いたとき、真っ先に思い出したのは小さい頃読んだ“世界の謎と不思議”なるものを集めた本である。
その中の一つにこんな話があった。
 あるサラリーマンがタクシーに乗っていたところ、前方を走る車が見る見るうちに白い煙に包まれ、忽然と姿を消したというものである。
彼はその車の後部座席に座って新聞を読んでいる重役らしき初老の男性の後姿を見ており、タクシーの運転手と共に車が消えるのを確認したという。
車は黒のクラウンかセドリックと書いてあったと記憶している。
 その本では「あ!車が消える!」という見出しとともに、やたらシリアスな劇画調の挿絵と、事件を報じる新聞記事の切り抜きも掲載されていたので、見間違い、陰謀、いかなる理由があったにせよ、当時は世間の耳目を集めた事件だったのだろう。


 お酒の好きなUさんは酔った帰りに足元がおぼつかないまま帰宅途中、何度か階段やホームから転げ落ち随分と痛い目にあってきた。
うっかり寝込んで財布をスラれたこともあって、さすがに懲りたのか酔った日は出来るだけ慎重に、用心深く帰るようにしていたという。
 ある日、いつものようにたらふく飲んだ帰りの終電間近で地元駅までたどり着いたUさんは最後の最後まで用心を重ね、ふらつきながらも戸口の手すりを握り、電車のドアが開くのを待っていた。
 Uさんの目の前、ちょうどドア前にもう一人、同じく背広姿の男性がいた。
彼は彼のうなじ辺りを眠たい目でみていたのだが、やがて電車は駅に着いてドアが開いた。
Uさんが手すりから離れホームへと一歩足を踏み出そうとした瞬間、目の前にいたその男性がまるで崖から身投げするかのように、すぅ~、とUさんの視界から消えた。

「 あっ!」

と、酔いが吹き飛んだUさんは手すりを掴みなおそうとしたが、そのままホームへと倒れこんでしまった。

“ 男性がホームの下に落ちた!”

何かのはずみで電車とホームの間にそれほどの隙間が出来ていて、とっさに自分も落ちると思ったのだ。
 だが、Uさんはみっともない状態で電車からホームに転げ出ただけだった。
ただの酔客が足をもつれさせ、転倒したように見えただけだったのだろう。
入れ違いに乗り込む数人の客が手を貸して助け起こしてくれた。
 Uさんは慌てて、いま目の前から落ちるように消えた男性の姿を探したが、そこには誰もいなかった。
自分の前に誰か倒れなかったか、さっき助けてくれた客に聞こうとしたときには何事もなくドアは閉まり、Uさんを残して電車は駅を離れていった。
 ゆっくり出て行く車内から真っ青な顔でUさんの足元を凝視していたOLと一瞬目が合ったのだが彼女が何を見ていたのか、もちろん確かめようがなかったという。

















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