周知のように、ワンフェスやホビーショー等で、上図のような「ガールズ&パンツァー 登場全戦車キット化プロジェクト」なるものが発表されています。テレビシリーズから劇場版までの各編に登場する戦車の全てを公式キット化するということです。内容的には、従来の公式キットのリニューアルに加え、公式キットが出ていなかったキットをタミヤなどからの製品供給によって公式キット化する、という流れです。軍艦キットで言うと、ウォーターラインシリーズを艦隊これくしょん仕様にして販売しているのと同じような形ですね。
私自身は、既に相当数のガルパン戦車キットを組み、未制作分もキットは確保していますので、今回のプロジェクトによる新たな公式キット群を買うという予定はいまのところ全くありません。正直なところ、このプロジェクトはタイミング的には遅きに失したんじゃないか、どうせなら一昨年ぐらいに実現してほしかった、と感じています。
ガルパンの戦車キットに関しては、作る人はもう既に色々と作っているでしょうし、大洗の各店舗に寄贈されている戦車キットも初期のものがほとんどで、後から新たに追加されているものは少ないです。モデラーさんの大半は、一度作ったキットは、余程の契機が無ければ再び作らないそうですし、それよりは新規開発のキットの方に関心を向けてゆくことでしょう。
だから、今回のプロジェクトでリリースされる公式キット群は、最近にガルパンを知ってファンになった層をメインターゲットにしているのではないだろうか、とさえ思います。
私の場合、大洗女子学園と黒森峰女学園の全部の戦車キットを作る計画でこれまでやってきていますが、公式キットは大体入手し、公式キットの出来が劇中車と大きく異なるものについては、タミヤなどの他メーカーの製品を買って作る、というパターンです。
デカールはモデルカステンのガルパンデカールセットを三種類とも入手しましたので、公式キットを買わなくても、全ての戦車をガルパンスタイルで再現することが出来ます。
なので、今回のプロジェクトで公式キットが出揃ったとしても、魅力的な商品群になるかは疑問です。中身のキットが新規開発ではなく、元のメーカーの製品のままである以上、制作自体の中身はこれまでと変わらないからです。
むしろ、モデルカステンのガルパンデカールセットが入手困難になったため、これからの新規モデラーに対して公式キット化によるデカールの供給を行う、ということに尽きるのではないかと思います。
上図では、この夏にウサギさんチームのM3中戦車リーなどが発売されるとありますが、これはタミヤの元キットをそのまま箱替えしてプラッツが公式キットとして出す、という形です。長らく出ていなかったウサギさんチームのデカールがようやく実現するという点が歓迎されるでしょうが、キットそのものはタミヤのままなので、劇中車への再現にあたって幾多の改造が必要となるのは同じです。
私自身は、M3中戦車リーに関しては、タミヤのキットでは劇中車を再現出来ないと判断してアカデミーのキットを選択した経緯があるため、今回のプロジェクトにおいてタミヤのキットで間に合わせている点には、ちょっと落胆せざるを得ません。
現時点でアナウンスされた戦車キットは、他にKV-2、M4シャーマン、チャーチルMkⅢなどがありますが、いずれもタミヤなどの既存キットの箱替え公式化ですので、目新しさというものがあんまり無い気がします。何かもう少し付加価値が欲しい、と感じてしまいます。
少なくとも、既に作っているモデラーさんが再び買って作るかどうかは、微妙なところです。作りやすくなっていれば良いのですが、制作そのものの手間は従来と変わりませんので、新規ファンや新規モデラーがチャレンジするには、ちょっとハードルが高いかもしれません。
私のように、初心者レベルでテクニックも未熟なくせに、劇中車に出来る限り近づけようとして膨大な量の改造や変更の作業を抱え、作業量の多さに悪戦苦闘している、というような奇特な奴はそうそう居ないと思います。
大半のモデラーさんは、素組みのままで楽しんでいらっしゃる筈です。でも、素組みで取り組んでも難しいキットが少なくなかったのが、ガルパン戦車の世界です。そういう点をもう少し何とかしてほしい、プロジェクトを立ち上げるのであれば、そこまで踏み込んで欲しかった、と思うのです。
だから、仮に今回のプロジェクトを歓迎するかと聞かれたら、私自身は間違いなく首を傾げます。むしろこれは、キットを何も考えずにガイド通りにホイホイ作ってしまう人向きだなあ、と思います。
それよりも、タミヤが早い段階でガルパン企画に参入して自社製品を公式キット化する、という流れが実現していれば、今回のプロジェクトよりももっと内容的には充実した流れがあっただろうなあ、と今だに残念に感じています。タミヤならば、劇中車に合わせて追加パーツを新規に入れて公式キットのグレードアップを図る、ぐらいのことは積極的にやってくれたんじゃないかな、と思うからです。
だから、今回のプロジェクト自体が、私の参加している模型サークルにおいても、戦車キットのモデラー達の中であんまり注目もされず話題にものぼらないというのは、よく分かる気がいたします。