満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『最後の手紙』。

2005-11-25 01:37:26 | 

てなわけで、本の感想です。

『最後の手紙』(リチャード・P・エヴァンズ著、笹野洋子訳、講談社)

舞台は1930年代、不況が世の中に忍び寄ってきた時代のアメリカ・ソルトレークシティ。最愛の娘を喪って二十年。デイヴィッドとメアリーアンの夫妻は、未だに愛し合いながらも、娘の死に関する受け入れ方の違いから、お互いの心が離れてゆくのを止めることができずにいた。イギリスに住むメアリーアンの弟が結婚するので式に来て欲しいという知らせを受け、メアリーアンはこれを機会に家を出ることを決意する。メアリーアンが出発したあと残された書置きにより、彼女がもう戻らないことを知ったデイヴィッドは悲嘆に暮れるが、連れ戻そうとすることが迷惑になるのではと思い行動を起こせない。そんな折、デイヴィッドの死んだ娘アンドリアの墓に謎の手紙が置かれていた。手紙の差出人は、幼い頃自分を捨てて女優になるために出て行った母だった。
デイヴィッドは母の消息を求めてシカゴへ旅立ち、そこで魅惑的な若い女性、ディアドラと再会し、心が揺れるが・・・?

というようなお話です。
主人公デイヴィッドがひたすらいい人なので、ぐちぐち言ってないでさっさと奥さん迎えに行けよ~、と思うのですが、そこに思わぬ伏兵が現れて心惹かれたり、「何してんだ!」みたいなところも(笑)。全体的には自分の母親探しを通して、過去のことにこだわっていても前には進めない、ということを理解する、みたいな話、でしょうか。主要人物がたいていいい人なので、皆に幸せになってもらいたいのですが、大不況の時代でもあり、特に黒人は虐げられていたようです。主人公の友人で老いた盲目の黒人ローレンスを巡るサイドストーリーで泣きました。だって・・・だって・・・!泣くよアレ。

ひとに優しくするとはどういうことか、そういう気持ちに触れたいときに読むといいかもしれません。

ところでこの話、わたしはこれ一冊でも十分独立した話だと思ったのですが、『クリスマス・ボックス』と『天使がくれた時計』という作品がこの前にあり、三部作の最期のようです。アメリカでは相当有名らしいですね。変な読み方をしてしまいましたが、次はこの二作も読んでみようっと。

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