満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『夢違』

2012-02-28 05:33:46 | 

皆様ごきげんよう。風邪はほぼ抜けた黒猫でございます。次の冬までもう風邪ひかない!そして試験に被せない!とつよくつよく心に誓った、そんな冬の日でした。

そんで今日ちょっと用足しに外出したら、よく晴れてるのに鬼のように寒かったです。晴れててこれじゃあ、陽が落ちたらどうなることやら、と思いながら早々に帰宅しました。もうすぐ3月なんだよ。冬将軍いい加減空気読むべきマジで。


それはさておきまして。


今日は久しぶりに本の感想。

『夢違』(恩田陸著、角川書店)

人の見る夢を映像として記録することができるようになった近未来。日本においては夢札を引く(=夢を記録する)ことは専ら精神医療の一環として行われていた。

人の夢札を分析する夢判断を生業としている浩章は、ある日、図書館で知人を見かける。目撃した時には特におかしいとは思わなかったが、考えてみるとその人物は既にこの世にいないはずだった。古藤結衣子。浩章が夢判断という仕事に就くきっかけとなったその人物は、かつて兄の婚約者であり、日本で最も知られた予知夢を見る能力者だった。

図書館での出来事の少し後、浩章は地方の小学校の一クラスで起きた集団パニック事件の詳細解明のため、先輩の鎌田とともに一クラス分の夢札を見てほしいと依頼される。ある小学校の一クラスで、子供たちが何かに怯えて教室を飛び出して泣きわめくという事件があったのだ。
しかし子供たちに訊いても覚えていない子も多く、何を見たのかが判然としない。
同様の事件は、報道はされていないが、実は複数起きているというのだ。

たいていの子供の夢札は曖昧だったが、その中で際立って明瞭な夢を見ていた女児・山科早夜香の夢札に浩章たちは興味を持ち、直接会って話を聞くことになる。
夢札の解析と本人を催眠にかけて行った聞き取りから「なにか怖いものが教室に入ってきた」らしいことが判明するが、催眠状態の中、早夜香は「おねえちゃんに会った」と告白する。早夜香の言う「おねえちゃん」の特徴は、紛れもなく古藤結衣子のもの。早夜香と古藤結衣子に面識はない。それ以前に、古藤結衣子は既に死んでいるはずなのだ。
古藤結衣子はどこかで生きているのか?もしそうなら、何を伝えようとしているのか?

というような話。


相変わらず話の盛り上げ方は非常に上手い。わたしの知る作家さんの中で一番上手いかも。どうなるの、続きはどうなるの、という気持ちでグイグイ引っ張られる、素晴らしい引力です。
扱う主題がオカルト寄りなものが多く、すごくわたし好みだというのもありますが、なんというか、とにかく読みたいと思わせる力をお持ちの作家さんだと思います。この点は素晴らしいとしか言いようがない。

だがしかし。

近年の恩田さんの作品の大きな特徴として、「はっきりとは終わらない」というものがあり、この作品もやはりそうでした。そうなるかもと思いながら読んだので、ああやっぱり、という思いと、やっぱこうかよ!という思いとが半々です。ぐぬぬ・・・。

夢という曖昧ではっきりしないものが主題とはいえ、もう少し白黒はっきり、というか、これでもかというほど本編中にちりばめられた謎を解明してくれてもよかったと思います。

子供たちが集団で同じものを見たらしいこと、見た夢で同じものを示していること、そしてそれが結局は何だったのか、というのがわからないままだし、古藤結衣子の奇妙な夢札の解釈もないままだし、「え、あれは結局何だったの」というのがたくさん残ったまま終わってしまいます。
特にラスト。アレはアレでいいの?主人公たち以外の人のことを思うと、えええ~、と思わずにはいられません。


面白かったとは思いますが、推理小説などを読みなれていて、謎は解明されてしかるべきもの、と思っているような方は読んだら欲求不満になるかも。

でもやっぱり好きです恩田陸さん。

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