満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『残穢』

2013-01-08 03:45:07 | 

皆様ごきげんよう。寒さを打ち払うのは、結局飲酒が最強なんじゃないかという結論に達しつつある黒猫でございますよ。ウォッカ最強すぎるだろ・・・ぽっかぽかやでぇ。でも日常的に氷点下になるような土地で、これしか頼る手段がないというのは怖いです。酔って外で寝てそのまま昇天、あり得るよコレ。


さて。今日は久々に本の感想。当然ながら今年初レビューです。昨年は色々と滞り、本などのレビューもあまりせずじまいだったので、今年はもっと頻繁にしたいです。
※ホラーなので苦手な人は注意。

『残穢』(小野不由美著、新潮社)

物書きの「私」(=小野不由美さんご本人)は、かつて少女向けレーベルでホラー小説を書いていた。その当時、あとがきで「あなたの恐怖体験談があれば送って下さい」と書いていたため、今に至るまで読者から怪談話が届く。
募集していたのはそのシリーズを持っていた頃のことではあるが、未だに稀に体験談を送ってきてくれる人がいる。そうした中、久保さん(仮名)という編集者の女性が「入居したマンションの部屋で、自分以外誰もいないのに時折床を掃くような音がする」という体験談を送ってきてくれ、その手紙が縁でやり取りを続けていたが、何度か続報が送られてくるうちに、「私」は似たような体験談を送ってきた人がいたことを思い出す。差出人の住所を確認するに、どうやら久保さんはこの体験談を送ってきてくれた人と同じマンションに住んでいるようだった。(※部屋は違う)

マンションに何やらいわくがあるのかと、久保さんと「私」がそれぞれ調べると、そのマンションどころか、近隣の一戸建てでも怪異を感じて転居する人が多いことが判明する。
かつて自殺や人死にがあり、そうしたものの霊が出るのでは、という前提で調べ始めたものの、マンションでは建築以来自殺等含め不審死は出ていないという。
久保さんと「私」は、それぞれ伝手をつたって、マンション付近一帯にかつてどんな人々が住み、どうして去って行ったのかを調査するが・・・?

というような話。


小野不由美の新刊フゥ~!ヒャッハァー!というテンションで読み始めましたが、いやあ、怖かった!やっぱり実話系って怖いですね。
実話系ではなく純粋な創作の新刊だと思っていたのですが、読み始めたらこれはこれで面白かったです。

実話系の怪談話では、「恨めしげな女の霊に追いかけられた(けど心当たり一切なし、結局どういう因縁があったのか全く不明)」というような、怖いけど腑に落ちない感じで終わるものが結構あります。今回のも端緒からしてそういう感じなんですが、たまたまその怪異に遭ったのが調査や聞き取りが得意な編集の仕事に就く人で、更に調べものをしやすい環境にある小野さんが関わったものだから、普通だったら「何なのかわからないけど怖かった」で終わるはずのところを、これでもかというくらい調べていきます。
そしてどんどんその土地で過去にあったことが明らかになっていきます。正直本編の四分の三くらいまでは、まああってもおかしくない感じの事実の解明なんですが、ラスト四分の一くらいは完全に予想外でした。斜め上というか、そんなとこから!?みたいな。

そもそも幽霊的なものが「出る」条件として、

・(目撃者)本人に恨み
・その場所で無念の死
・訴えたいことがある

くらいまでは理解しやすいですが、小野さんはこれらではなく斬新な角度から心霊現象の条件を類推していきます。それがまさにタイトルとなっていますが、これがあり得るとしたら、心霊現象って交通事故のような、どうあがいても避けがたく、遭う時は遭ってしまうものなんじゃないかと思いました。
でも読んでいると結構納得できてしまうので怖い。
これから引っ越しを予定している方は読まないほうが・・・いや、敢えて読んでおいたほうがいいのかなあ。登場人物はすべて仮名ですが、調べようと思ったらこれ色々調べがつくんじゃないかなと思います。調べたくないけど。

わたしは『十二国記』シリーズからの小野さんのファンなので、以降の本はほぼ読んでいると思いますが、近年の寡作ぶりを憂いてもいました。もともと遅筆な方ではあるようですが、この本を読む限り、体調も思わしくなかったのですね。しかしどうやらかなり復調されたようなので、今後の十二国記の続刊に期待したいです。楽俊大好き!
もともとホラー小説の書き手としても優れた方だと思っていましたが、この作品は相当うわあと思いました。ホラーが苦手な方は避けるのが賢明かと思います。でも好きな方にはおすすめ。


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