小説の感想です。
『夜市』(恒川光太郎著、角川書店)
表題作で日本ホラー大賞受賞だそうです。
大学2年のいずみは、高校時代の同級生で、去年偶然再会してから友達づきあいをはじめた裕司に「夜市にいってみないか」と誘われる。所持金も少なく、あまり乗り気はしなかったが、軽い気持ちで同意する。
その夜市は、ありふれたものを扱った店はなにひとつなく、店を出している者もどこか風変わりで少々気味悪かった。帰りたくなったいずみは、途中の店で「英雄の剣」をひやかしていて知り合った老紳士に頼んで連れ帰ってもらおうと頼むが、夜市で何か買い物をしない限り帰ることはできないと言われる。そんなことを言われても欲しいものもなく所持金もほとんどないいずみとは対象的に、裕司には捜しているものがある様子で・・・?
というようなお話。
短編なのでサクっと読めます。
ホラー大賞受賞ということで、もっと描写や展開がグロテスクになるのかと思いましたが、どこまでもさらりとしていて、どちらかというと怖いというよりも物悲しい話でした。どこかなつかしいような悲しいようなこういう雰囲気、わたしは好きです。
もう一編、『風の古道』という作品が収録されていますが、こちらのほうが長めです。これも雰囲気的には共通している感じ。読後、なんとも言えない寂寥感を感じます。
面白かったですが、ただ、これは別に「ホラー」ではないよなと思ったり。怖いの苦手、という人も全然平気だと思います。こういう作品を受け入れる文学賞がないのかな?
「夜市」は、市の独自のルールがあって、それを利用して脱出する…という展開が、ゲーム的な感覚で面白かったです。
コメントありがとうございました!