満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『風に舞いあがるビニールシート』

2006-08-13 23:53:03 | 

本の感想です。

『風に舞いあがるビニールシート』(森絵都著、文藝春秋)

わたしが図書館で予約待ちをしている間に直木賞を受賞されましたね。森さんおめでとうございました。

YAで活躍していらした森さんですが、近年大人向けの作品を書くようになり、前作『いつかパラソルの下で』はそのまったり感がたまらなくわたしの心にフィットして、たいへん楽しく読みました。
が、今回は実に様々な切り口からいろんな状況の人々の話を集めた短編集でした。

表題作は国連難民高等弁務官事務所に勤務する一般職員、里佳と、その別れた夫エドの物語。
エドは専門職員で、東京事務所に勤務していた時に里佳と知り合い結婚するが、やがて戦地の危険なフィールドに戻っていく。夫がいつ危険な目に遭うかやきもきしながら暮らすのに耐えられなくなった里佳のほうから別れを切り出し、ふたりは離婚するが、その後、エドはアフガニスタンにて帰らぬ人となってしまう。そのショックを未だに引きずりながら生活する里佳だったが・・・?
というような話。

この他に、美人で才能はあるがどこかいい加減な天才パティシエのマネージメントを努めつつ、自分はこのままで良いのだろうかと悩む「器を探して」、捨て犬を保護し、飼い主が見つかるよう運動を行うボランティアをしている主婦を巡る話「犬の散歩」、社会人二部学生のレポートを代筆してくれるという噂の女性を探す「守護神」、仏像修復師の苦悩を描いた「鐘の音」、取引先の若手営業と客の家まで謝罪に行く羽目になった道中を描く「ジェネレーションX」の計6編を収録しています。

どれも全然味の違う話で、特に「風に・・・」と「鐘の音」は取材が大変だっただろうなあとか余計なことを考えてしまいました(笑)。
森さんといえば『DIVE!』の頃から登場人物が悩みや苦悩を持ちつつもどこか飄々としているという点が持ち味だと思っていましたが、今回はそうでもない人のほうが多く、よりリアルな感じでした。それにしてもいろんな切り口で作品を書ける人ですね。短編でキャラクターの性格をきちんを書けるというのはすごいことだと思います。

・・・でもね、でも。
すいません、わたしは今までのどこか能天気な登場人物のほうが好きです。自分が能天気な人間なもので(笑)。

この本の中では「犬の散歩」だけがややクスっと笑ってしまう感じかな?本人たちは真剣なんでしょうけど。

今までとは違う味わいで面白かったですが、これからもYAも書いて下さい。お願いします森さん。


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