2023.03.28撮影(若い繁殖していないカラスと思われる)
書き出してから1周年、ということで、わたしの最初のブログ記事「モミジバフウでいい感じの、カラスのご夫婦」(2022.08.02)にちなみ、今日から数日間、カラスさんについて書きます。でも、今回は、ご夫婦のことではなく、子ガラスについてです。
画像の2番目、3番目、4番目が、子ガラスさんです。冒頭の画像は、時期的なものと1羽でいるところから見て、繁殖していない若いカラスだと思います。この時期は、つがいは巣作りに励んでいます。
日本のカラスと言えば、
・ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos「大きいくちばしのカラス」)
・ハシボソガラス(Corvus corone:種小名の意味不祥)
北米には、何種類かカラス属の鳥がいますが、そのうち広範囲に分布するのが、
・アメリカガラス(Corvus brachyrhynchos「短いくちばしのカラス」)
です。
このカラスは、日本のカラスでは、どちらかと言えば、ハシボソガラスに似ています。
学名 Corvus brachyrhynchos「短いくちばしのカラス」
英名 American crow「アメリカガラス」
和名 アメリカガラス
カラス科(Corvidae)カラス属(Corvus)
原産 北アメリカ
このアメリカガラスには、現在、4亜種が認められていて、うちのあたりに住んでいるカラスさんたちは、「西アメリカガラス」です。
学名 Corvus brachyrhynchos hesperis
英名 Western American crow
和名 西アメリカガラス
原産 北アメリカ西部
2021.05.26撮影(巣立ち直後の子ガラス)
早いつがいは4月初めころに抱卵を始め、孵化期間は18日間、巣立ちは孵化後36日くらいだそうです。
ということは、抱卵が始まってから54日くらい(約8週間)で巣立ちする、ということで、抱卵が4月初めに始まったのなら、巣立ちは5月の終わりの週であることになります。バンクーバーは暖かいので、抱卵が始まるのは3月末かもしれません。
直前の画像と、ここから先2枚の画像は、そんな巣立ちすぐの子ガラス(同一個体)です。うちの2階のベランダの手すりにとまっています。撮影は、二重ガラス(+網戸)越しにしました。
子ガラスだなんて、なぜ、わかる、って? 子ガラスの特徴は以下以外にもあるのですが、画像から読み取れるのだけにすると、
状況
・羽を膨らませて、疲れたとばかり、休んでいる
・無防備な(=逃げるのに難しい)位置(後ろは家屋のガラス戸)にとまっている
・ガラス越しとは言え、50cmに人間が近づいても逃げないほど無頓着
体
・小柄
・羽の色の黒さが薄い
決定的特徴
・クチバシの脇が赤い
2021.05.26撮影(巣立ち直後の子ガラス)
この家に引っ越してきたとき、周りにカラスが多いのにびっくりしました。巣作りに最適な木が街路樹として並んでいるからだろう、と思います。そして、立地的に、エサを求めやすい地域なんだと思います。
この子ガラスさんは、飛行練習中の休憩をしているところだと思われます。
飛行練習すると、疲れるんですよね。この子ガラスさんは手すりに足でちゃんととまって立っていますが、地上に「落ちて」いる子ガラスさんもいますよ。もう飛べなくなって、体ごと「へたり込んで」いるんです。中には、横向きに「転がって」いる子もいます。
でも、大丈夫、親や年上の兄弟が、どこにいると人間の目にははっきり見えなくても、必ず近くで見守っていますから。
中には、親の見守りや激励があっても動けない子もいます。もう日が暮れたのに草陰にうずくまり、親が長い時間促してもどうにもならず、危険な地上で一夜を過ごすことになる子もいます。巣立ちした子どもは、本来は、1羽ずつ離れて、樹上で身を隠して寝ます。
子ガラスが、人家の庭でではなく、道の近くの地上か樹上でへたっているところに、怪しい人間が近づいてくると、親ガラスは、ガーガーワーワー大変な騒ぎですよ。かすめるように飛んでこられて、それは怖いです。
でも、親ガラスは、危険な人間ではないと認識している人には、こういう威嚇行動はしません。カラスには、人間の識別能力があります。わたしのつれあいは、車のナンバープレートまで見分ける、と言いますが、それはいくらなんでも・・・
2021.05.26撮影(巣立ち直後の子ガラス)
この家に住み出して初めての、子ガラスの時期、隣の雨樋(あまどい)の曲がったところに巣をかけたカラスがいたんです。なんでそんな丸見えのところに? 新米夫婦で、巣の場所の獲得戦に負けたのか?
その巣が、うちの2階のベランダからちょうど目の前に見える位置だったんです。上の画像では、ずっと右の方です。それで、わたしは、大喜びでベランダに出て、手すりから身を乗り出して、つらつらと巣の中のだいぶん成長した子ガラスたちを眺めていました。もっと早く気づけば良かったなあ、成長日記をビデオに撮れたのになあ、なんて思いながら。
すると、巣に帰ってきた親ガラスに、突如、突進してこられた。羽ばたきの空気圧まで感じられたわ。親ガラスは手すりに着地したが、その前に、わたしは手すりを押して、それをバネにして体をよけたので、大事に至りませんでした。大急ぎで屋内に避難。逃げていなければ、やられるところだった。
それから何週間も、庭や道に出るたびに、親ガラスに耳元をかすめるように威嚇飛行をされました。帽子や着るものを変えたりしても、姿勢や歩き方を変えても、認識されちゃうんです。玄関から出てみたり裏口から出てみたり、また、普段と反対方向に歩いたり、しても、それでも、分かられてしまう。
防御方法はわからなかったんですが、とにかくつば広の帽子をかぶって、うつむいて、決して相手を見ない、耳元を飛びすぎても反応しない、走らない、ひたすら同じペースで歩く、で何とかやり過ごしました。
それにしても、ヤツらは、耳元をかすめるのが効果的だと知っているんですよね。頭への攻撃と同じですからね。ヒザあたりとか、コシあたりとか、とは、怖さがまったく違う。それも、相手にやり返される可能性のある前からではなく、後ろから襲ってくる。あ〜〜、こわ。
もうひとつ分かったことがあります。傘を持っていると、もっと警戒される。うかつに傘を持って外へ出た時には、えらい目にあいました。バットでもゴルフクラブでも同じことだと思います。道具の長さを認識するんですね。
でも、あっちだって、別に人間を襲いたくないんだと思います。なんと言っても人間の方が体が大きいですからね。ですから、警告行為には出るけれども、実際に襲ってくることは滅多にない。そう思うと、わたしがあのベランダで子ガラスたちを見ていた行為は、親鳥には挑発でしかなかったんだろうな、ごめんね。
2019.07.12撮影(大人のカラス:見張り中?)
ところで、アメリカガラスの人間を認識する力については、研究がたくさんあり、また書籍もたくさん出ています。わたしのように巣の中にいる子ガラスたちを眺めていただけでなく、カラスに直接的な害を与えたと見なされる(例えば、実験として、死んだカラスの模型を持っている)人は、カラスさんたちには、何年も、世代を超えて忘れてもらえないそうです。
つづく