「ナショナル」が謎メーカー呼ばわりされている昨今ですが、1975年に購入したAMポケッタブルラジオの話。
(参考記事)
この製品は国内仕様と国外仕様を兼ねていたものなのか、2つのブランド"National"と"Panasonic"が併記されています。
おかげで今の若者にも出自が分かってもらえますね。
今でも現役で、朝の出勤準備中にNHK第1を流すのに使っています。
先日、ちょっと音が出たり出なくなったりするようになりまして。
もういい加減成仏させてもいいかとも思いましたが、2028年まであと6年足らずだし、できれば日本のAM放送の終幕に立ち会ってもらえると嬉しいなと。
今は亡きダイシン百貨店で買ったのですよ。
当時は購入日証明のためにわざわざシールを貼ってくれてたんですね。
(破れてるのは、子供の頃邪魔に思えて一度剥がしかけたものの、キレイに剥がれそうになかったので諦めて元に戻したもの。我ながら賢明な判断でした笑)
中を見ると電池の接触不良ではなさそう。
基板を押したら音が途切れるので、単純なハンダ割れだったらいいのだが…と、何とかの一つ覚えで部品が付いてるハンダを全部あて直してみたら、有難いことに無事復活できました。
音質そのものは1975年当時から決して褒められたものではありません。
しかし電池保ちが異常に良く(電池寿命の最後の最後ギリギリまで音を絞り出し続けてくれる感じ)災害時には強いだろうな、という絶妙な信頼感があります。
ちなみに、写真右上にある耳とスピーカーのアイコンの通り、外部スピーカーを直接ドライブすることもできます。
中学生の頃に実際につないでみたことがあって、口径が大きくなればレンジ感はその分良くなるものの絶対的な歪み感が変わらないので、屋外での共聴用には多少聞こえやすくなって便利かもな?という印象でした。
急に思い出しましたが、70年代に暮しの手帖でポケッタブルラジオのテスト回があったんですね。
その中で、各社製品が操作系を英語で表記していることに「日本向けの製品なのに何故日本語で書かないのか」とか、表示が小さな刻印で見づらいとか批判されていたことがありました。
そうした批判が反映されたのか、80年代に入ってからはだんだん日本語表記が増えていきましたが、当時の自分は「英語表記の方がカッコいいじゃん」と単純に思ってましたな。
それはさておき。
で、今回写真を撮りながら思ったのは、電源兼ボリュームダイヤルをひと回しするだけのお手軽さ、タイムラグがほぼゼロで音が出てくる敏速さって、今の時代意外と軽視されているんじゃないか、と。
スマホの操作性があまりにも日常に溶け込んで、事あるごとに数タップ分の手間を費やす感覚が当たり前になったし、カーオーディオなんかでもパワーオンですぐ音が出ずに、一旦ディスプレイに何やらメッセージを流すお作法が普及して久しいですが、現代の「欲しい情報を得ようとするたびに常に待ち時間を必要とする操作性」にふと意識が向くと、昭和のラジオのダイレクトさが実に小気味よく感じられてきたりして。
もっとも他方で、それは単なるノスタルジー目線に過ぎないよな、という覚めた感覚もあるんですが…
当時はテレビ、ラジオ、電話に始まり商店、企業やその他の仕組みに至るまで、個々の機器のダイレクトな操作感如きでは社会全体の非効率さを到底カバーできていなかったでしょう。
翻って現代では、たとえラジオの操作ひとつが昔に比べて数秒余計にかかったとしても、それ以外の面での効率性が圧倒的に改善されているわけで。
今回のように古いラジオをつい直してしまい、滲み出てくる懐かしさに身を委ねながらも、「昔はよかった」と言い切る危険性には自覚的でないといかんよな、と時々思い直す次第です。