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人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

始祖鳥についての改訂増補版(9)

2024年05月25日 14時12分07秒 | 絶滅と進化
                  
          始祖鳥は「鳥類」なのか、それとも「恐竜」なのか(9)
          

          第2章 生物の『収斂進化』について考える
             ー始祖鳥は「鳥類」なのか、それとも「恐竜」なのかー


  生物の進化について、いろいろ文献を調べていますと、なるほどと思うことが書かれていることに気づくものです。気づくと言うよりはむしろ気づかされると言った方が正しいように思います。
最近のことですが、始祖鳥のことを調べていましたら、恐竜との関係で「収斂進化」と言う概念が用いられていることに気づきました。また横道に逸れますが、チャールズ・ダーウィンに始まる進化の研究に関わるさまざまな現象や概念に対して用いられる語にダーウィニズム(Darwinism)またはダーウィン主義(ダーウィンしゅぎ)という用語があります。この用語の意味は時と共に変わり、また誰がどのような文脈で用いるかによっても変わる、と言われています。

  この用語は、1860年にトマス・ヘンリー・ハクスリーが最初に用いたとも言われています。彼は、大変有名はダーウィニストの一人ですが、彼は恐竜と鳥類の二つのグループの間の融和性に気づいたことでも知られています。両者の融和性の35の形質を説明していますが、そのうち17の形質は現在でも有効であるされています。しかしながら、20世紀の初めになりますと、トマス・ヘンリー・ハクスリーのこうした考えかたにも疑義がもたれるようになりました。その根拠が鳥類と恐竜の間で共有される多くの形質は収斂進化による元とする考え方が提起されるようになったからなのです。

  ここに言う「収斂進化」とは、形態的な特徴だけでなく、生理的な特徴や行動などにおいて、さまざまな側面で観察されることがあります。例えば、異なる種の翼を持つ鳥や昆虫は、翼の形や機能が似通っています。これは、空中での飛行に適した形態が進化の結果として収斂したためだと解釈されています。進化について調べていますと、「複数の異なるグループの生物が、同様の生態的地位についたときに、系統に拘らず類似した形質を独立に獲得する現象である」と言う定義に出遭うことがあります。類縁関係の遠い生物間でありながらも、似通った外見や器官を持つ場合が多く存在します。魚類のサメと哺乳類のイルカ、鳥類と昆虫類の「チョウチョ」のように全く系統の違う生物が、似たような体形や器官をもつようになることがあるのですが、一説には食物や環境に由来するといわれます。

  収斂進化は、全身の姿にも、個々の器官にも見られる場合があります。例えば、いまも指摘したことなのですが、鳥類(脊椎動物)の翼とチョウ(節足動物)の羽は共に飛翔に用いられる器官であり、構造と機能が類似していると考えれるからです。しかしこれらの部位は進化論的に同一起源ではないのです。このように、本来は異なった起源をもつ器官が、類似の働きと形質をもつ場合に、それらのことを相似器官と呼ばれるようです。調べてみますといろいろなことが存在していることが分かってきます。

  例えば、すでに述べましたように、翼を持つ動物の収斂は、生物進化の中でも特に注目される現象の一つと言われています。異なる種やグループの動物が、翼という共通の特徴を持つことで空中での飛行能力を獲得したと考えられるわけです。空を飛ぶという動物の事例には、「鳥とコウモリ」をとり挙げられます。「鳥とコウモリ」のケースは、独立に進化した異なるグループの動物ですが、周知のように、どちらも空中での飛行能力を持っています。これは、収斂の一例と言えます。

 「鳥とコウモリ」を例にして、京都大学名誉教授の宮田隆先生は以下のような興味ある説を話されています。「鳥の祖先は空を飛ぶという『問題』を解決するために、手近にある前肢を利用して翼を発達させたが、コウモリの祖先も同じ問題を同様の便宜主義で解決し、よく似た翼を獲得することに成功している。両者の共通の『問題』は飛ぶという点で、その解決にどちらもたまさか前肢を利用したことでよく似た形が進化したのであろう。似ているのはそこまでで、それ以外は爬虫類とほ乳類の特徴をいぜん残している」、と説いています。

  また専門家先生の説明を傾聴しますと、次のような話もされています。鳥の翼は軽くて硬く、羽毛で覆われています。一方、コウモリの翼は薄くて柔らかく、膜状の構造をしているのだそうです。確かに、形態の違いはありますが、両者は空中での飛行に適した特徴を共有していると理解できます。

  昆虫の中には、鳥の翼に似た構造を持つものも存在します。例えば、チョウやセミなどの一部の昆虫は、翅を持っており、空中を飛ぶことができます。これは、昆虫が鳥のような環境で飛行するために収斂が起こった結果と考えられています。昆虫の翅は、鳥の翼とは異なる構造を持ちますが、空中での飛行を実現するための共通の原則が存在しているとのことです。

  さて、「恐竜」と「鳥類」の収斂についてですが、専門家の先生方の説明に依りますと、鳥は、恐竜の一群である獣脚類の中から進化したと考えられており、恐竜と鳥は、骨構造や羽毛などの特徴を共有しているとのことです。特徴的な点は、「空中での飛行に関連する形態的な収斂が見られることだそうです」。恐竜の中には、鳥のような翼や羽毛を持っていたと考えられています。ということは、恐竜の中には空中を飛翔する優れた能力を有していた可能性があります。これは恐竜と鳥類の二つのグループ間における収斂進化の例と考えることが出来ます。そしてそれはまた「進化の過程」における「形態」の変化と適応の重要な証拠となっているというわけです。
 


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