素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島の古代ゾウの仲間たち(その5)

2023年02月22日 16時18分56秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち

 

                 絶滅した日本列島の古代ゾウの

             仲間たち(その5)

 

1.日本には凡そ2000万年前にもゾウの仲間がいた

(1)日本列島はどのように生まれたのか

(2)日本のいろんなところにステゴロフォドンゾウがいた

(3)とにかく大昔のはなしです―ステゴロフォドンゾウ

(4)常陸大宮市産のステゴロフォドンゾウ―標本「記載」事項を見る―

2.ステゴロフォドンとステゴドンの違い

(1)両者の違いについて

(2)エオステゴドン・シュードラチデンスゾウとは

(3)ステゴドン(ステゴドンゾウ)について

 以上は前回までの掲載分

 

2.ステゴロフォドンとステゴドンの違い

 

(4)各地のステゴロフォドンについて

 ところで、各地で見つかっているステゴロフォドンにもいろいろな事例があります。富山県産の例を見ますと「足跡化石」が見つかっているんです。この足跡化石を調べた結果、ステゴロフォドンの仲間ということが分かったと言うのです。

 山形県(鶴岡市)では、1995年に田麦川でゾウの臼歯が見つかりました。当時の荘内日報によりますと、大網小学校の教頭高橋修一さんが理科の野外授業で訪れた際、偶然にも臼歯が付いたゾウの頭部の化石を発見したそうです。高橋さんは、その後、(当時)群馬県立自然史博物館長(現在名誉館長)だった長谷川善和氏と(当時)茨城県立自然博物館学芸員だった國府田良樹氏の2人に調査してもらった結果、2004年に1600万年前に生息していたと思われるステゴロフォドンの上顎の化石骨であることが分かったのです。

 その後も専門家の先生方による田麦川左岸の地層露頭で本格的な発掘調査が行われ、2009年8月にはステゴロフォドンの乳歯のほか、肋骨、脊椎骨の化石が発掘されています。

 福島県(いわき市)では、いわき市石炭・化石館「ほるる」に、1700万年前に生息していたと考えられるゾウの祖先、ステゴロフォドンの臼歯化石が展示されています。ステゴロフォドンの歯の化石は、いわきの第三紀中新世の地層から産出したと言われています。

 また、ステゴロフォンドンの化石とともに、同じ新生代第三紀に繁栄したとされる熱帯地域や亜熱帯地域に生息していた巻貝の一種ピカリアの化石が出土したこともあって、いまの日本列島が形成される前、この地域が相当暑かったことも推測されますし、ステゴロフォドンが暑い地域を好むゾウの仲間であったこともわかるのです。

 長野県では1970年、県北の長野市西13㎞離れた上水内郡中条村角倉、土尻川との合流地点の上流の裏沢河床でミエゾウの頭蓋骨の化石が発見されました。その後、「化石象調査団」の研究によって、ステゴロフォドンの新種であることが分かりました。

 この化石は、1979年新種名をStegolophodon shinshuensis として記載されました。しかし現在は、国際動物命名規約の先取権の原理、分り易く言いますと「早い者勝ち」のルールでミエゾウ(Stegodon miensis)と呼ばれています。ミエゾウの生息年代は約300~500万年前と言われています。

 この化石の発見は、大島浩・高橋啓一両氏の論文「長野県上水内郡中条村から発見されたミエゾウStegodon miensis 頭蓋の形態学的研究」(『化石研究会誌』、2005)を読んでいて、大変重要な発見であるかことが分かりました。

 その理由について、大島・高橋両氏の論文(2005)によれば、この新種の研究は、「今後長鼻類全体の分類の中でステゴドン類を考察する上でも重要な資料となると考えられる」、と言うことが分かったからです。

 茨城産のステゴロフォドンゾウの化石については、すでに前々回紹介しましたが、現在ミュージアムパーク茨城県自然博物館に所蔵されています。この博物館は、茨城県坂東市に広大な敷地と立派な施設の中にあります。

 博物館1階の「ディスカバリー7」というセクションで「茨城の自然」として、茨城県で見つかった「古生代から新生代に至るまでのさまざまな化石」が展示してありますが、2011年に常陸大宮市で当時県内の水戸葵陵高校2年生の星加夢輝さん(常陸大宮市)が発見したステゴロフォドン(ゾウ類)の化石」も、現時点では「レプリカ」(現物は研究中のため)ですが、常設展示されています。

 ステゴロフォドンについて、古生物学者である国立科学博物館名誉研究員の冨田幸光(1950-)博士は、「ステゴロフォドンと言うゾウの仲間は、宮城県船岡町で発見されたのが最初で、その後、1800万年前から1600万年前までの新生代中新世~鮮新世に南アジアから日本にかけて生息していた。切歯(牙)を4本もつ古いゾウ類で、日本でも中新世の地層から見つかっている」と述べています。

 宮城県で発見されたそのゾウの化石がミヨコゾウと呼ばれているのです。ミヨコゾウについては、以前にも取り上げたことがありますが、見落としていた資料、また最近読み直した三枝春生氏の論文、学会講演の資料(予稿集)などを取り入れて、次回は《3.ミヨコゾウについて考える》と題して整理してみることにします。