素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(2)

2020年11月07日 11時41分20秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
      絶滅した日本列島のゾウのはなし(2)
 
  

  1.最近のゾウの情報から(その2)

 最近のボツワナにおけるゾウの大量死については、前回も述べましたが、密猟と言った人の手によるものではない、とするボツワナ政府関係筋の見方が有力なのですが、356頭にも達する大量な不審死だけに、簡単に人々の疑問が払拭できたとは思えません。
 
 いろいろ情報をチェックして見ますと、不審死だけに原因論も様々です。たとえば、メリーランド大学環境科学センターのパトリシア・グリバート教授は、「条件がそろうと、ある種のシアノバクテリアは増殖する」、と話しています。
 シアノバクテリアは、自然の気候変動で増殖する条件がそろうと、世界の広い地域で、藻類ブルームの発生が見られる」ようになると語っています。つまり、気温や水温の上昇が有害なバクテリアの増殖を誘発することになる、と言うわけです。

 しかし、今回のような超大型の野生獣の場合、シアノバクテリアを大量死の原因とする説には、簡単に納得できない不明な点も多く存在するようです。
 ボツワナ野生動物・国立公園局の主任獣医師、ムマディ・ルーベンは、政府会見の場で、「なぜ象だけが影響を受けたのかは依然として不明です」と述べていることが、納得のいかない一例です。
 ゾウ研究をを専門とする保全生物学者のキース・リンゼイ氏も、アメリカのテレビCNNの取材に対し、「水辺に入っている何かが原因なら、一体なぜ象だけが被害を受けたのでしょうか?」、とも疑問を呈しています。

 こうしたリンゼイ氏の疑問に答える一つの見方を占めしているのが、南アフリカのプレトリア大学のロイ・ベンギス氏です。ベンギス氏は、今回のボツワナのゾウの大量死は、ゾウだけが死んだことに関心を寄せ、その理由について、大変示唆に富む見方を次のように述べています。
 すなわち、「毒素に対する耐性は、動物の種ごとに異なるので、象が特定の神経毒にとりわけ敏感だった可能性があります。また、象は1日に40ガロン(約150リットル)もの水を飲むので、小型の動物より大量に毒素を摂取することになるほか、象には泥の中を転げ回ったり泥を体に塗ったりする習性もあるので、皮膚から神経毒が吸収されたおそれもあります」と、語っています。

 しかし、前述のキース・リンゼイ氏は「象にあって他の動物にはない習性として、農地に作物を探しに行くという行動」を指摘し、その行動が農業者の怒りを買い、毒薬を撒かれたのではないか、と人為的な死因、殺害説の可能性を捨てきれないようです。

 獣医師や野生動物専門家らの見解を総合的に考察しますと、今回のボツワナのゾウの大量死の原因として考えられるのは、「水に含まれる有毒な細菌の摂取、炭疽(たんそ)菌、人による毒殺、げっ歯類からのウイルス感染、未知の病原体」、と言うことになりそうです。もちろん複数の原因が作用している可能性も指摘されています。
 とくに今年(2020)は、「何年も干ばつが続いた後、通常より遅い時期に大雨に見舞われた。もしもこうした環境的な要因が関係している」のではないか、そうした見方もあるようです。確たる証拠が出るまでには長い時間が必要だと考えられますが、野生ゾウを守るのも人間の役割ですから、彼らの生息地の環境保全に世界の一人一人が目を向けることが大切であると言えるでしょう。