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南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(18):中本博皓

2016年11月15日 11時03分03秒 | 島嶼諸国
南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(18)





4. 経済援助の問題


(1) 英国の「予算援助」解消の理由

1)独立国の立場 
トゥヴァルは、1978年の独立以後、英国女王を元首とした立憲君主国家となった。そのため英国の経済的な援助に依存してスタートした。たとえば、現在もそうであるが、歳入と歳出のバランスを計るために、英国をはじめオーストラリア等諸外国からの援助が続けられている。

 周知のように、1978年から1987年の10年間は、英国から「予算援助」が提供されていた。それが1987年で解消された要因とは何だったのか。なぜ、10年でそれ以降は継続されくなったのか。それにはいろいろ見方がある。「予算援助」には、必然的に政府機構への監視を伴うようなケースもあり得るのである。

したがってこの種の援助は、いかに人口1万人の小国であっても主権国家であり、独立国である国家が、ドナーの立場に立つ国の監視を受けるようなことは望ましいことではない。独立国同士の適切な開係を維持して行くためには、「予算援助」以外のもっと別な方法を摸索する必要があった。そのために、「予算援助」は両国の間で段階的に廃止することが合意されたのである。

2)代替案としての「トゥヴァル信託基金」
この決定により代替案の開発が急務となったのである。その結果生まれたのが、トゥヴァル信託基金であった。「トゥヴァル信託基金」は、オーストラリア、ニュージーランド、英国、日本、韓国、そしてトゥヴァル各国の協定で2,700万豪ドルの基金が拠出されることになり、1987年6月に設立されたのである1)。

この制度(「トゥヴァル信託基金」)は、長期にわたりその実施価値を維持しながら、信託基金の利子収入を、トゥヴァル政府が経常予算の不足を埋め合せるために利用することを目的としたものである。「トゥヴァル信託基金」は、トゥヴァルが独立国としてスタートして以後最も重要なプロジェクトであり、これによりわずかながら財政的独立の道を形の上では踏み出したことになったのである。ちなみに、「トゥヴァル信託基金」の運用益は、1998年度について見ても国家予算の10パーセントを超えており、トゥヴァルの重要な財源の補填機能を発揮している。

この信託基金制度の導入で、トゥヴァルの経済は英国依存からオーストラリアおよびニュージーランドに大きく依存することになった2)。オーストラリア政府は、南太平洋の地域の小島嶼が独立すると、経済的に支援する対外政策をとっている。いまでは南太平洋のどの島嶼国もオーストラリアの援助なしには独立国としての体面を保持できないのが実状である。

1998/99年度におけるオーストラリアの政府開発援助(ODA)の総額は14.8億オーストラリア・ドルで、この額は前年度(1997/98年度)に比較して5,000万オーストラリア・ドル、0.5パーセント増大した。オーストラリアODA予算は、同国のGDPの0.27パーセント、また連邦政府予算の約1パーセントである。

このODA予算は、PNG(パプア・ニューギニア)などアジア太平洋諸島(南太平洋島嶼国も含めて)をはじめ、南アジア、アフリカそして中近東の最貧地域にも援助の手を差し伸べている。PNGを含めて南太平洋島嶼国に対する援助額は、その国々の実情と要請に基いて改革プロジェクトを重点に決められる。オーストラリアは、自国の援助が、島々の人々の将来に役立つことが前提である。

 トゥヴァルもまた、他の島嶼国と同様にオーストラリアおよびニュージーランドの援助に依存することで成り立っている。「トゥヴァル信託基金」を創設するにあたってもオーストラリアの拠出金は800万豪ドルで、現在(2005年2月17日現在)の対米レートに換算すると、およそ629.6万米ドルに相当する。

 また、ニュージーランドも1,100万NZ$(1991年に行った50万NZ$の追加拠出を含む)を拠出しており、米ドル換算で約770万米ドル(2005年2月17日現在)に達していることからも、「トゥヴァル信託基金」の拠出国の中では最大拠出国であるし、ODAにしてもオーストラリアとともにトゥヴァルをはじめ南太平洋島嶼諸国に対する援助大国になっている3)。

 ODA等経済援助を通じて島嶼国等途上国の発展を手助けし、地球全体の貧困削減の問題をはじめ多くの問題解決に努めることは先進国の役割であり、島嶼各国から寄せられる期待は大きい。このような期待に積極的に応えていくことは、国際社会における先進国の信頼を培い、島嶼国の経済の発展に貢献することが強いては、地球規模での問題解決に寄与することにもなるものと考えられるのである。


(注)
 1)石川栄吉/越智道雄/小林泉/百々佑利子『オセアニアを知る事典』・平凡社・1990、173頁。
 2) 国際協力推進協会『トゥヴァル』(開発途上国国別経済協力シリーズ・大洋州編No.10)、平成7年、16-17頁。
 3)外務省経済協力局編『政府開発援助(ODA)国別データブック』・国際協力推進協会、2002、670頁。