素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

素人の考古学:抄録・人の移動、その先史を考える(その1):中本博皓

2015年04月16日 10時50分41秒 | 人類の移動と移住

 抄録・人の移動、その先史を考える(1)
 


  〔以下の記事は、小生がこれまで扱ってきた「人の移動史」(日本人の出移民小史)から、ふとしたことで、人の移動、その先史を専門家の孫引き・後追いで考えるようになり、ノートを作成する気になったもので、老化予防のために「80過ぎての手習い」といったものです。〕
 

 (1)人は移動する生き物

 1)人の移動の始まり-アフリカを出た現生人の祖先(新人)たち-① 
   人類が人として生き進化して来たのは、移動や移住による新しい環境への適応行動を繰り返して来たことによるものと考えられる。「人類が地表に広がるには、人類の歴史の実に99パーセント以上の時間が必要とされた。歩行による移動と定住を繰り返しながら、人類は気が遠くなるような時間を費やして多様な自然環境に適応する生活の場を作りだした」1)、と言われている。そのため人は定住できる空間を求め移動を続けて来たのだ。それゆえ「人類は移動する生き物である」2)、とさえ言われているのだ。

 ところで、最初の人類は一体何処で誕生したのだろうか。そんな疑問は何ら珍しいことではない。現生人類、すなわちわれわれの人間の祖先が、類人猿と袂を分かってからどのくらいの時間が過ぎたのだろうか。それには自然人類学や考古学の研究成果を借りなくてはならい。いや、それは数十年前までのことであって、今日では、分子人類学の発展で驚くような「人間史」を知ることが出来るようになった。

 「古代人の生きざまは、古人骨に聴け」と、『古人骨は生きている』(「角川選書」、2002(平成14)年)などの著書で知られる京都大学片山一道教授は『人間史をたどる*自然人類学入門*』(朝倉書店、1996年)においても、大型類人猿と袂を分かって、人間モドキともいえる猿人が誕生して以来、500万年にもなる。人類史の第一歩である直立二足歩行という要件が満たされてからでも気の遠くなるほどの長い時間が経つと述べている。

 さて、本稿で扱う人類とは、現生人類(modern man)少なくとも「新人」に絞って考えることにした。新人とは、人類の進化の最終段階の人類すなわち新人類(neanthropic man)の略称で、現生人類と呼んでもいい。その形態的特徴は,時代的に先行する猿人,原人,旧人段階の人類とは明らかに異なり,ホモ・サピエンスHomo sapiens sapiens(ホモは〈人〉,サピエンスは〈賢明な〉の意)という学名が与えられていることから、人類を本稿では「人」と漢字書きで表記することにした。

 サッセクス大学の地理学教授で『ヨーロッパ移民の新しい地理学』の著者でもあり、また『図説・人類の起源と移住の歴史:旧石器時代から現代まで』の編者としても知られるラッセル・キング氏も言うように人類の移動・移住の歴史を知るには、途轍もなく遠く、長い歴史を遡らなくてはならない。すなわち人類は、東アフリカの南北に縦断している大地溝帯(Great Rift Valley)において、気が遠くなるような昔、700万年~500万年前に人類の祖先(猿人)は誕生し、直立二足歩行を覚え、森を出ることに成功し草原の生活を経験するようになった。彼らは知能も優れていたため道具を開発し、外敵との戦いを続けながらも生き残って進化を遂げた。それが原人だったと言われている。(つづく)