電影宣伝自由人

香港映画を中心にしたアジア映画のよもやま話などを紹介

初日の熱

2013-01-06 21:45:01 | Weblog
昨日5日は『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』の初日で、私は朝からシネマート六本木へ立会に行ってきました。到着したのが開映25分前だったのですが、シネマートの入り口が見えたところで、「あれ、人が並んでる」と驚きながら劇場に近づくと、長い列ができているではないですか。11時までの開映までなかなか列が途切れずで、劇場のほうもあせっていて、なんと全部のお客さんを入れるまで、15分ほど押しての上映になりました。聞いたところ、お客さんの半分ちかくがその次の回で上映する『大魔術師X』のチケットも買っていて、それでけっこう時間がかかったとのこと。私の知り合いの某社のビデオ担当も見に来ていたりと、あそこの劇場が人でわさわさしてるのを初めて見た感じ(失礼!)でした。六本木、心斎橋と香港映画祭りになっているので、映画好きな人たちには映画祭気分になったりと、この感じがなんだか昔の映画館を久々に見た気がしました。
今回に関しては、マスコミのほうから取り上げたいという連絡がかなりあって、それが新聞とテレビ(普段、大作ではないかぎりがんばってもこれだけの露出をとるのはむずかしい)の大きいところで紹介されているのですが、ラッキーだったことに、1月4日が金曜日で5日公開の作品が少ないこと、そして香港映画ファンの方がたには散々怒られましたが、この題名に興味を持ってマスコミのほうが面白がってくれたというのが大きかったと思っています。

実は今回この作品は、シネマート六本木に行ったことがある方ならご存知だと思いますが、未公開ビデオ発売するのだったら、その前にイベント上映しましょうといった形の公開だったので、最初から劇場公開を意識した形ではありませんでした。私に縁があったのかはわかりませんが、予算がない中で少しお手伝いできませんかと権利を買った会社からのお話もあり、どちらかというと私の趣味的ノリで宣伝に携わることになりました。
この映画が好きなので、なんとかしたいという気持ちがあったわけですが、まずこの映画をどうビジネス的に結び付けていくかという部分で、東京国際映画祭でつけていた題名はまずない、というのが私の考えでした。ファンの人たちは映画祭で観てこの作品の良さはわかっていると思いますが、しかし現実的に2年間もこの作品を買おうとする会社がなかったのは、やはりバイヤーの立場からいくと、香港映画で監督の知名度もなく、なおかつ一般的なキャストの知名度がないことが大きかったことで、これらのことが難しいという判断をされていたわけです。実は何社かの人から聞いたのですが、興味があってもビデオメーカーが興味を持ってくれなかった、値段が合わなかったという話を聞きました。
今はビデオメーカーが買うと言わない限り、配給会社だって買わない状況があります。そういった中で、今回どう作り上げていくかを私が考えたことは、作品のノリが70年代であるならば、日本の売りもそこをベースにしたほうがいいということ。そして若い人が映画を見に来ない今、香港映画ファン以外でインパクトを与えるには、私が入社したころの80年代の宣伝的な考え方をするしかないという判断でした。

ということで、70年代の空手映画といえばやはり『燃えよドラゴン』ということと、映画の冒頭でロー・ウィンチョン演じる男が「じじい」と言ったセリフでピーンときて、今回の題名につながっていきました。でもじじいではなくじじぃにしたのは、彼ら老クンフースターたちに対する愛すべき言い方にしたかったから。といったことからあっという間にコンセプトと題名とポスターイメージができたのでした。ポスターに関しても、今回配給とビデオを出す会社が映画をあまりやったことがなかったので、ポスターはこんな感じでと、『燃えよドラゴン』の画像を見せたことから出てきたのでした。初めてラフ見たときは笑ってしまいましたが、でもこのノリが絶対必要だということでそのまま作ってもらいました。こうしてあれよあれよという間に初日を迎えたわけですが、いつも苦労しながらマスコミに宣伝していくのに、今回、攻略がなかなか難しい新聞とTVに大きく出たことは予想外の出来事でした。宣伝的なものがハマるというのはこうゆうことで、昔だったらよくあったのですが、今はTVは大作か自社作品の宣伝が中心なので、異例中の異例と言っていいかもしれません。

題名に関してはいまだに賛否を巻き起こしてますが、ここまで大きな媒体で紹介されると、香港映画ファンだけではなく、普通の人がこの映画はなんだろう?と思ってくれていることが大きく広がっていけば、最初はイベント上映的な形が、劇場公開の形として大きくなっていってくれるのではないかと思ってます。この作品が若者たちの青春映画であっても、それでは残念ながらマスコミも普通の人は興味を持ってくれない。観てみて実は青春映画としての話なんだと、映画を見てもらえて初めていろんな意見が出て、ツイッター上でもいっぱいツイートしてくれれば、この映画はなんだろう?と思ってくれる人ももっと出てくるはずです。でも、そうなるためには作品が見てよかったと思えるものでないといけません。
そして皆さんも大いに騒いでいただけると、この映画に興味を持ってくれる人が増え、そして近所の単館劇場に「この映画公開しないのですか?」とつっこんでいただけると、劇場も興味をもってくれるかもしれませんね。