電影宣伝自由人

香港映画を中心にしたアジア映画のよもやま話などを紹介

なぜ日本公開版が存在するのか?その1

2012-08-15 19:53:40 | Weblog
『ミスターブー』の日本版に関してですが、ネットで検索していたら、以前検証されていた方のページが見つかりました。ファンの方でこうゆう検証をされているものがあるとうれしい限りです。検証しているページ

しかしながら今の時代、権利を持っている会社にこうゆう話をしたとしても、彼らからの返事は???が出るのもまた事実です。なぜならば香港映画がそんなことをしていたなんて知らない、帰国子女の多い若い世代が現場の窓口だからです。

香港映画の場合の公開マーケットは、「広東語」での香港、マレーシアやシンガポールなどの東南アジア、「普通語」の台湾、欧米、そして日本と1990年代までのマーケットはこれらで構成され、香港返還後は中国本土も入ったわけですが、香港映画でいちばん困ってしまうのは、文化や社会的通念を加味したいろんなバージョンが存在していることです。
これを説明するのは後にして、まずはDVD時代となって日本公開版の存在がわかってしまった件です。
DVDが発売されるようになり、オリジナル版と違う日本公開版の存在に、ファンはいろんな意見を出しています。もちろん、自分たちが子供時代に観た作品のイメージが強いために、それを望むことは当たり前なのですが、1980年代までの日本のインディペンデントの洋画はある意味、興行というビジネスや宣伝のために作品を改ざんしたことが事実としてあります。これは私も配給会社にいて自ら体験しているから言えるわけです。

このブログでも書いた『ファースト・ミッション』に関しても、音楽を総とっかえしているのは、当時、ジャッキーが日本でレコードを出していたワーナーパイオニアとの宣伝タイアップの絡みがあったために、新曲の「TOKYO サタデーナイト」「チャイナブルー」をぶっこんだ経緯がありました。
また香港映画だけでありません。9月にDVDが発売になるソフィー・マルソー、ジェラール・ドパルデューの『フォート・サガン』はオリジナルは180分だったのを、興行で回すには長すぎるということで1984年の公開当時は150分にカットして公開しましたし、『デルタフォース』や『ゴッドギャンブラー』も興行回数を増やすために10分あまりカットしています。また『DCキャブ』は、削除されたシーンで主題歌を歌うアイリーン・キャラがホワイトハウスの中で歌うというシーンがあり、日本ではそこの部分の権利も追加で買って、日本で本編内に勝手に付け足してロードショー公開しました。
また私が宣伝部にいたときに大きな問題になったのが『ラストエンペラー』の南京大虐殺のカット問題。これも配給側でこっそり手を加えたことがばれて、ベルトリッチ監督をも巻き込んだ問題となったこともありました。
今は権利元と交渉しないと勝手な改ざんはできなくなりましたが、過去にこんなことを日本の配給会社はしていたわけです。


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ミスターブー(その2)

2012-08-14 07:32:01 | Weblog
話はフイルムセンターで観た『ミスターブー』東宝東和版の話に戻ります。
映画が始まって驚いたことは、まずGHマークが出てこないことと、オープニングクレジットが英語、それもタイトルも英語でMrBOOの表記になっています。もともとMrBOOの英語表記は日本でつけたものなので、香港からクレジットのないネガを取り寄せて日本で入れていることがわかります。ここからすでに香港ではなく日本オリジナル版として成立しているわけです。そして翻訳に関してもオリジナルの意味を無視した、完璧に作られた字幕がところどころで炸裂しています。冒頭のサム・ホイ扮するミスターブーがコーラの工場で、空のコーラ瓶にささっているストローを反対側にいる可愛い女の子にかっこよく取るところをカンフーで見せつけるシーンで、工場の責任者にそれがばれてクビになる台詞で「君は奇人変人にでたら」という字幕のくだりがあるのですが、おれはNTV「スーパージョッキー」(日曜に放送されていました)の1コーナーの「奇人変人」をひっかけているわけです。この台詞には見ていた世代にとっては感慨深いというか、個人的にはウケた台詞字幕でした。
そして最大の驚きは、映画の中盤で突然、北京語になるくだり。ここはリッキーがサムに「どうしてクンフーを覚えたんだい」という台詞のあとに登場する回想シーンが突然北京語になるわけですが、実はこのシーンは香港オリジナル版にはまったく関係ない、『ミスターブー ギャンブル大将』で削除されているシーンであることが、DVDで確認できました。ここはサモ・ハンに絡まれたサム・ホイがクンフーや武侠でサモと戦うシーンなんですが、なぜ関係ないものが『ミスターブー』東宝東和版に組み込まれたのかを考えると、想像するに、ゴールデンハーベストから来ていた素材にこれがあることを知って、ここの中にもブルース・リーのものまねが入っているので、いれちゃえってことになったのではないかと思います。また当時は北京語も広東語もわからないような時代だったことと、『ミスターブ―』は広東語映画復権のきっかけとなった映画であり、その前に作られている『ギャンブル大将』の音素材も北京語しかなかったのではないかと思われます。
こうして東宝東和版となった『ミスターブー』ですが、ジャッキー・チェンの映画も含め、日本公開版がオリジナルと違うというのは、当時のインディペンデントの会社は日本の興行のことを考えて、手を加えることが多かった時代でもありました。今では著作権だとか、いろいろな権利の問題があるので本編を勝手にいじることはできなくなりましたが、ある意味、いいかげんな時代だったからこそできたことで、今のDVD時代になって、日本公開版の存在がクローズアップされることになったと言えるでしょう。

さて、東和の宣伝に関しての話に戻りますが、香港映画のダサさを出したくないというところは、あの有名なイラストのポスターに現れています。映画の宣伝素材でメインのポスターを作る際、原則は写真を組み合わせていくのが通例ですが、宣伝コンセプトやイメージにあわない、また使える素材のない場合の最終的なものとしてイラストにすることがあります。そこから考えると『ミスターブー』は戦略として映画のもつバタ臭さな喜劇ではなく、アメリカン・コメディーのようなセンスをポスターに表したのではないかと思います。その成功がその後の『ミスターブー』シリーズにも引き継がれ、また英語題名がMrBOOになったということでしょう。
『ランボー』も英語題名がその後日本がつけた題名にならったように、80年代までの東宝東和の宣伝力の凄さを感じる次第です。


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ブルース・リー作品ブルーレイの特典

2012-08-13 02:00:00 | Weblog
ツィッターで映画評論家の江戸木純さんがつぶやいていたのですが、11月9日に発売される『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』『死亡遊戯』のブルーレイの特典がやっとファンが満足できそうな特典などついているとの情報がありました。
まず、前作初公開時の英語音声とTV吹替え版収録(ということはあの主題歌も)に、『ドラゴン怒りの鉄拳』と『死亡遊戯』は東宝東和公開版プリントをHDテレシネした奇跡の特典映像だとのことで、特に『怒りの鉄拳』は日本で存在しているプリントが赤く変色していたのをデジタル修復したそうです。2年前の東京国際映画祭で上映が検討されていたのですが、見るに耐えられないということで上映できなかった経緯があります。
業界にいる私から見ると、権利交渉を権利元としなければいけない大変さがあるがゆえに、今回のことは本当にすばらしいことです。あとは日本公開当時の予告とかも入っているといいのだが、ないないづくしを言ってもしょうがないかあ。
これまで発売される度に買うか買わないか迷うほど発売されているブルース・リーもの。今度は買いかなあ。

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ミスター・ブー(その1)

2012-08-12 16:30:49 | Weblog
8月も中盤になりましたが、今週はお盆休みの方も多いかと思います。熱中症にならないようにお気をつけください。 さて、先月の話になりますが、東京・京橋のフィルムセンターで行われていた「外国映画ブームの時代」で上映された『ミスター・ブー』の最終上映に行ってきました。会社からフィルムセンターは歩いて10分あまりの距離で、ちょっと仕事を抜けて観てきました。(その日の仕事は徹夜で片付けちゃいましたが)これを見ておきたかったのは、やはり東宝東和の公開版ということで、いろいろと検証したいこともあったからです。 今回、この上映版でご覧になられた方がつぶやいてましたが、この「ミスター・ブー」に関してはマイケル・ホイの探偵のことを指していなくて、サム・ホイのことをミスター・ブーと言っていることや、オープニングクレジットが英語表記になっている、そして途中、あるシーンが北京語になっているなど、いくつかの点の発見があったことです。そうゆう部分を含めて、東宝東和版の検証をしたかったわけです。 私はこの作品、ロードショー公開当時、ちょうど東京へ大学受験に来ていて、帰る日に丸の内東宝で観てから羽田に向かった記憶があります。その時は『ブルース・リー電光石火』との2本立てで、東京では1本立てでロードショーなのにこれは2本立てなんだと驚いたのでした。 香港映画のブームは、1973年の『燃えよドラゴン』の大ヒットで、突如として“空手ブーム”となって1974年~75年の間に約30本あまりの作品が公開されましたが、ブルース・リーの作品以外は数本を除いてほとんどが失敗に終わり、ブームは終焉をむかえました。そんな時に、東宝東和が仕掛けた宣伝によって登場したのがこの『ミスター・ブ―』です。 新しい香港のコメディー映画ということで、NTVの「スーパージョッキー」の映画コーナーで紹介されていましたが、この作品の宣伝でかならず流れる映像が、調理場の対決シーンでした。ブルース・リーやジョーズのパロディがある、という笑いの部分を強調した宣伝展開にインパクトがあり、それだけでも見てみたいと思ったものでした。 さて、今、映画宣伝に携わっている私にとって、この『ミスター・ブ―』の宣伝展開は、当時の東宝東和宣伝の力を見せつけられていると思うのです。それはやはり、香港映画はダサいと思われていた時代、それをうまくコーディネートして世の中に知らしめている点です。 もともとこの作品は東宝東和にとっては、一連のブルース・リー作品の購入における副産物のひとつでしかなく、東映ともめた『猛龍過江』事件をきっかけに、東和とゴールデンハーベストは共同の会社を設立していました。海外マーケットを見越しての映画製作を始めたゴールデンハーベストの海外作品の日本公開を東和が手掛けることになったのです。(オリビア・ハッセー主演の『スクランブル』など)そういった背景の中で、当時は東宝洋画チェーンの中でいちばん下の位置にある丸ノ内東宝で公開、それも「グリーン・ホーネット」の編集版である『ドラゴン電光石火』との2本立てというところに、この作品の力の入れ具合がわかるというものです。 しかしながら、当時の東宝東和は宣伝力のあるインディペンデントの配給会社として、アメリカメジャーに負けない力を発揮していました。『キングコング』や『サスペリア』といった作品はまさに当時の東宝東和の宣伝力によって大ヒットした作品です。 そんな東宝東和が『ミスター・ブー』をどのように調理したのか。
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『瘟泉』

2012-08-11 07:36:00 | Weblog
私の知人である中田圭監督から、山形の山奥でサム・レオン監督の作品に出演します、と聞いていた作品の予告です。
『瘟泉』ティーザー予告
内容はホラーですが、香港側はクリスティー・チョン、サム・リー、トニー・ホー、日本側はでんでん、神楽坂恵、舩木壱輝、そして予告の中のサム・リーのところにちらっと中田監督も映ってます(笑)

ビースト・ストーカー/証人(Blu-ray Disc)
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ビースト・ストーカー/証人 [DVD]
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ニュー香港ノワール・フェスいよいよ開催

2012-08-10 19:24:50 | Weblog
皆さん、残暑お見舞い申し上げます。
時間が経つのは早いもので、あっという間に8月もお盆の季節。
夏休み映画もそろそろ佳境となってきておりますが、明日は「ニュー香港ノワール・フェス」が新宿武蔵野館で開催されます。
昨年、『アクシデント』や『密告・者』の宣伝手伝いをやっていたときに、他のノワールものないですか?と提供元の担当から聞かれていて、『コンシェンス/裏切りの炎』『やがて哀しき復讐者』などの情報流したものが今回この3本同時公開という風になったわけです。
特に『強奪のトライアングル』に関しては2007年の香港映画祭を手伝っていたこともあって、お勧めしたら公開の運びとなったわけで、個人的には「ラッキー」といったところでした。2007年10月のブログ
3作品とも非常に個性的なノワール映画ですが、どれも香港映画ファンにとっは突っ込みどころ満載の作品なので、関東エリアの方はぜひお盆の間、お休みがあればスクリーンで見てください。ニュー香港ノワール・フェスHP
某作品ではないですが、パンフレットも単体で3作品とも今回作ってます(1部500円)

ところで、今回はフイルムでの上映ですが、映画業界はデジタル化の波でほとんどのシネコンは映写機をはずしてしまい、フイルムでの上映ができなくなってます。今回の3作品も地方上映もフイルムで順次公開となっているのですが、できないところはブルーレイの対応になりそうです。

『画皮』公開中ですが、『画壁』が日本でもDVD化ですね。
チャイニーズ・フェアリー・ストーリー [DVD]
ゴードン・チャン監督
アメイジングD.C.


現在上映中のこちらもDVD発売決定。
盗聴犯 狙われたブローカー スペシャル・エディション [DVD]
ルイス・クー、ダニエル・ウー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン