福田ちえのときどき日記

日々の活動や雑感を掲載いたします。

「高校必修逃れ」発覚 「ゆとり教育」の今後は?

2006年10月27日 | オピニオン


全国の高校(41都道府県399校(うち私立120校))で、必修科目の未履修が発覚し、卒業までの短期間で補修が必要な生徒数は8万5千人を越えるといった非常事態が明らかになりました。

今月24日、富山県立高岡南高校に端を発した未履修問題が、やはり大きな問題と発展し、実態が浮き彫りになってきています。内申書の改ざんといった不正の上塗りも発覚しています。

栃木県内でも13校、2千2百人あまりが対象となるようで、今後さらなる増加が懸念されています。最も未履修が多い氏家高校では、5単位175時間の補習授業を受験が迫った3月までにこなす必要があるとかで、耳を疑いたくなります。

*今回のニュースではじめて知ったのですが、今の高校の学習指導要領では世界史のみが必須で、もう一科目日本史と地理のどちらかを選択することになっているんですね。


必修逃れが行なわれ始めたのは、大半の高校が2002年の「学校週5日制」の開始以降だそうです。これはもう制度上の問題です。

受験に必要な科目に絞って勉強したいとの生徒の要望を受け入れたということですが、全く逆の結果を生んだことになります。
「教師の熱意が勇み足につながった」と学校側をかばう教育委員会の見解も釈然としないものがあります。管理者である校長・教頭らの責任は重いと思います。

追加授業を行なうとして、社会科担当教諭だけで足りるかという問題もあるし、教師は急な事態を受けてまともな授業が出来るでしょうか。生徒もきちっと出席し、真面目に授業を受けるでしょうか。どうみても、形だけの履修になってしまいそうですね。

「受験偏重」や「教育の場に企業経営の理念(成果主義)を持ち込む」
原因はそれだけではないでしょう。
受験熱はかなり昔から過熱していたはず…。
となれば、この問題は「ゆとり教育」の弊害といえるのではないでしょうか。

ゆとり教育の強行で、週の授業時間が減ってしまった。その分、教える内容も減らせばいい。そう簡単にはいきません。進学校ならなおさらのことです。
私立進学校では、「ゆとり教育」導入後も土曜日を休校にしなかった例が多いと聞きます。

ところが、公立校ではそうはいかず、月から金曜で時間割を工夫し、授業の内容をふるいにかけるしかない。
当然、受験科目でない教科よ、さようなら。ということになります。

今の大学受験は科目が減少し、「地理・歴史科目」では、世界史1科目(必須)と日本史か地理のうちの1科目の必修に対して、本番受験は東大以外は1科目の試験のみ、ということだそうです。東大を受けない限り、地理歴史科目は1科目だけ勉強すればいいということです。
地理・歴史科目にふるい落としが集中したわけです。

昔とずいぶん様変わりしました。私達の頃は、受験科目が多かったので、複数大学受験のためには、多くの科目を履修しておかなければならない時代でした。


今後この問題(制度のゆがみ)をどう解決したらいいでしょう。

いま厳然と存在する、私立進学校と公立高校の授業時間の差。

私立の生徒が大学進学が容易になる状況。裕福な家の子が良い大学に合格しやすいといった、「格差社会の拡大要因」がここにも存在しています。

制度のゆがみを是正するなら、

・土曜日を昔のように授業日に戻す(「週6日制」の復活)。
・土曜日を統一的に補修や自習にあてる。
・土曜日を公立、私立とも統一的に休校とする。

など、「週5日制」の見直しが図られるべきであると思います。
もともと「週5日制」は、生徒のためというよりも、教職員が休むために導入された制度であるとも聞きます。

制度の欠陥を今こそ補正し、不正や不公平が生まれない仕組みに変えるべきだと思います。


次の国会で4ヶ月ぶりに「教育基本法改正」議論が再開されます。

・いじめ自殺問題
・公立校の差別化(エリートと落ちこぼれのえり分け)を推し進める学校選択制
・実績をひたすら重視する小中一貫教育の導入
・「愛国心」など徳目の強制をはかり、内心の自由を奪いかねない。あるいは、政府に従順な国民づくりが目的である。と、一部で揶揄される改正案の中身


教育の現場の問題点が次々と噴き出してきています。
将来に禍根を残さない慎重な議論を重ねてほしいものです。

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