とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

バーン・アフター・リーディング

2009年05月28日 01時10分22秒 | 世界的笑世界
『バーン・アフター・リーディング』
(Burn After Reading ジョエル&イーサン・コーエン監督 米=英=独 2008)


ブラッド・ピット。実に作品えらびのうまい俳優です。
『バーン・アフター・リ-ディング』では、とうとうあのコーエン兄弟の映画に出ちゃった。

予告を見てたかぎりではブラピ主演か!?と思ってましたが、そうじゃありませんでした。

主演不在の群像劇。
ズドーンと重苦しい乾いた悲喜劇だった『ノーカントリー』のあと、監督も出演者もただただ楽しく撮りたい!という気持ちでつくられたのであろう、軽いファース。

コーエン兄弟としてはひさしぶりのオリジナルストーリーです。

CIAをクビになったアル中の情報分析官と医師の妻。
彼らの友人で財務省所属の保安官と絵本作家の妻。
それぞれに問題を抱える彼らの家から、ふとしたことで機密情報の入ったディスクが流出してしまう。
それをうっかり拾ったスポーツジムの中年女性トレーナーが、美容整形の費用を手に入れるため、同僚の筋肉バカ青年と共謀して分析官をゆすりはじめる。

過去に『ディボース・ショウ』を撮って、結婚喜劇には失敗したコーエンBro.ですが、今作はかなりうまくいってます。

でもあれこれ説明するとたぶんおもしろくなくなっちゃうし、それにややこしすぎて説明もできない。
登場人物自身が劇中で「ややこしい話だなあ~」って言ってるくらいだもの(笑)

CIAのトップシークレットをロシア大使館に持っていってけげんな顔をされるバカ二人組の、時代錯誤ぶりがおかしい。
すべてに対してマニュアル通りの対応しかできないCIAのお役所体質と、不条理な事のなりゆきが微妙にからみあって、バカバカしくもブラックな展開になっていきます。


この映画、かなり前から楽しみにしてました。
理由のひとつはデビッド・ラッシュが出演してること。

そう、アラフォー世代にはなつかしのカルトTVコメディ「俺はハマーだ!」のデビッド・ラッシュ!


出演シーンはすくないものの、彼の元気なお姿(しかもあんまり変わってない)をコーエン作品で見られるなんて、涙ちょちょぎれものです。
役柄はCIAの中間管理職なんですが、いつ拳銃ふりまわして暴れ出すかともう気が気じゃ(笑)


主演の役者たちも、ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマンドと芸達者な面子がそろってる(ジョージ・クルーニーはいまいち)。

もうそれだけで安心して観られるわけですが、なかでもブラッド・ピットは、本人のコメディ演技の突きぬけっぷりもスゴイし、作り手側のブラピの使い方もスバラシイ。



スーパースターであり、そろそろ飽きられてきてもよさそうなものなのに、観客にまだこれほど強烈で鮮烈な印象をあたえることができるとは!

『バベル』は観ていないのですが、『ジェシー・ジェームズの暗殺』ではすばらしい演技を見せていました。
そのあたりから、ひと皮むけた感じがします。

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で、ひさしぶりに見せてくれたその美貌。
ジェームス・ディ-ンのような、若き日のレッドフォードのようなあのまばゆいばかりの若さ、美しさを、ブラピはためらわず披露してくれた。
演技者としての自信がそうさせたのでしょうか。

『バーン・アフター・リ-ディング』での彼を見ると、バカキャラを自信をもって演じているのがわかります。
それが非常にチャーミングだし笑える。

コーエン兄弟はもうジョージ・クルーニーを出すのをやめにして、ブラピでガチに一本撮ってみてはどうかしら?


コーエン兄弟作品ファンとして気になることとしては、撮影監督がロジャー・ディーキンスからエマニュエル・ルベツキー(『スリーピーホロウ』『トゥモロー・ワールド』など)に変わりました。
本作のみの交代なのか、ディーキンスとは決別したのか。今後が気になります。




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